下村敦史のレビュー一覧
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ネタバレ怒りと憎しみ、恨み、復讐、負の感情で支配されていく幸子。
ずっと暗闇の中。
読んでいて苦しかった。
元々、何か言われれば、否定的なことを思うし、恋愛に発展しても相手の言動一つ一つに緊張。
幸せになりたいのに、できない、いいのかと遠ざける。
自分の思いをぶつけることができる相手を見つけては、復讐心が加速する。
手紙にしても矛盾が、違和感があるのに、点と点を無理やり繋げて、自分の考えだけの物語の完成。
彼女が作った物語が崩れたときの葛藤。
幸子が見ていた景色が変わる。
雪絵、美香、郷田の告白。事実。
加害者、被害者、怒り、復讐、赦しとは。
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下村敦史『法の雨』徳間文庫。
ひと筋縄ではいかないリーガルミステリーである。二転三転の展開と驚愕の結末。嘉瀬裁判官は認知症を患ったまま判決を下していたのかと腑に落ちない点もあるが、まあまあ面白かった。
それにしても成年後見人制度というというのは何とも酷い制度だ。家族が自由に預金を引き出せないなど有り得ない。もっとも近年は特殊詐欺が横行したお陰で自分の預金でさえもATMで自由に引き出せない。高齢者ともなるとさらに引き出せる金額も制限されるのだ。
有罪率99.7%を誇る日本に於いて逆転無罪判決は、検察官にとって死を意味する。
看護師が病院内でヤクザの組長の財布を狙った窃盗を働き、組長に見 -
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内部で疎まれ、厄介者扱いされる新宿署のダメ刑事・田丸。
彼がいるとお宮入りになるとの噂から、ついたあだ名が『オミヤ』。
しかし、本当の彼はとても優秀で熱い刑事であった。
別作品で、すでに『オミヤ』となっていた田丸が、『オミヤ』と呼ばれるまでになった過去の話。
管内でOLの刺殺体が発見される。更に、歌舞伎町の人気ホストの遺体が発見される。
当初、別の事件と見ていた本部に対し、田丸は、驚くべき共通点を見出した。
それは、裁判員制度に絡む謎であった。
本部の誰にも信じてもらえない状況のなか、唯一の相棒・神無木との信頼関係は、どうなるのか。
最後に、ウルウルします。
『もう俺を守ろうとするな。相 -
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未完の建造物であるサグラダ・ファミリアで起こった殺人事件。
1991年、バルセロナで暮らす佐々木志穂は殺人事件があった日に父が行方不明になっていることから事件に関わっていると考え、手がかりを求めて奔走する。
恋人を巻き込んで、危機迫る中ひたすら真相を突き止める姿に逞しさを感じる。
すべてが解明されたとき、10歳で母をその地で亡くした原因まで知ることとなる。
罪からは決して逃れられないが、人間、罪を負う者を赦すことはできる。
この一言に意志の強さと重さを感じた。
この物語は壮大でありガウディについても深く知ることができ、バスクとスペイン内戦のことなど歴史的なこともわかり、より一層バルセ -
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サグラダ・ファミリアに死体が吊るされた直後に失踪した彫刻家の父。バルセロナに住む志穂は父の無実を信じながら、事件について調べ始める。やがて明らかになる、ガウディが遺したとあるものの存在とそれを巡って繰り広げられる攻防。スペインの歴史や名だたる建造物とガウディの物語、そしてサスペンス感溢れる事件を描いた重厚なミステリです。
殺人事件の謎はもちろんとして、ガウディとサグラダ・ファミリアを巡る謎が実に壮大です。そしていまだにスペインに根付いている過去の遺恨の物語も読みごたえがありました。このようなことはほぼ何も知らなかったけれど、ぐいぐい引き込まれます。ガウディの遺したものがいったいどちらの手に渡る