鶴見俊輔のレビュー一覧
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本著は世界を旅した体験と経験と知見と思索の過程を伝える良書である。
私たちは狭い視野の世界で生きている。文化や価値観というのは場所に根ざしており、それは風土による影響だったりもする。世界を見ても寒い国と暑い国とでは思想も宗教も価値観も異なることは歴史が証明している。
さて、本著は旅に出て、その先で出会った名も無き人々や文化、価値観に触れ視点が広くなった体験を述べる。国外へ旅をするのもいいだろう。国内を旅をするのもいいだろう。大切なことは多くの人たちと出会い、価値観を知り、深め、自分の中で思索し、落とし込むことで視野が広くなることだろう。これは、お金では買えない。体験するだけでは足りない。目的を -
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難しい。最近読んだ本が殆ど実学系のものばかりだったからか、この本は本当の評論という感じがしてとても難しい。学者、しかも哲学者の著作という感じ。自分の問題を作る、という一節があった。その方が学校の成績は良くなるとも書いてあった。著者もそこには反対の考えを述べている。これも今から20年以上前の本であることを考慮すると、この国では教育も殆ど変化ないんだな、と思う。
自分で問題を発見し、仮説・検証を試み、解決の方向へ進めていく力、これは自分で切り拓き、身につけていくしかないのだろう。教育という言葉はどうも上からの施しのように聞こえて気持ち悪いが、自己教育とか訓練という言葉に置き換えて試行錯誤の中から自 -
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ネタバレ著者の本はお初。哲学者、思想家とのこと。
御齢80を超え、自身の戦中戦後の過去を通じて、知り得た知識や思索を重ねてきた思いなどを、自由闊達に語り尽くす。「一月一話」という連載ということは、月に1話、年間12話。それを7年間にわたり綴った、ある意味「知」の結晶だ。
2015年に亡くなられているので、最晩年の著者の、遺志に近いものだろう。
「少しずつもとの軍国に近づいている今、時代にあらがって、ゆっくり歩くこと、ゆっくり食べることが、現代批判を確実に準備する。」
「ところが歴史のない国、正確には先住民の歴史の抹殺の上につくられた開拓民の国アメリカでは、「金儲けの楽しさ」は妨げるものをもた -
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戦後民主主義を領導した思想家として知られる鶴見俊輔と久野収が、現実と密接にかかわる日本の思想史の五つの潮流について論じている本です。
本書でとりあげられている思想は、白樺派の観念論、日本共産党の唯物論、「生活綴り方運動」にみられるプラグマティズム、北一輝らの超国家主義の思想、「戦後派」の意識に根づいている実存主義の五つです。とくに鶴見は、アメリカのプラグマティズムの洗礼を受けた思想家として知られていますが、生活綴り方運動に日本の現実に根差したプラグマティズムの具体的なかたちを認めることができると論じています。また、共産主義についての考察は、鶴見の主要な仕事のひとつとみなすことのできる「転向」 -
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-国史なんていっていると、いかに精密にやったって、国家と国旗が日常生活と連動しちゃうんです。そこが困るんですね。日常生活には国家の支配しきれない領域がある(鶴見)。
国家の支配しきれない領域の存在を、海民や職能民の歴史を通じて解き明かそうとした網野善彦。本書は、哲学者・鶴見俊輔との対談。
網野史学(と呼ばれるのを本書では拒否しているが)の仕事を、思想家の立場から解析すると何が見えてくるのか、というところが読みどころ。
少々、年寄りの繰り言のようなページも目立つのだが、現代は「戦前、戦中にはなかった特別の鎖国状態にある」という指摘は頷ける。 -
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有名な本だけど,初めて読んだ。
吉田氏は大和の最後の天一号作戦に副電測士の少尉として乗り組んだ方。大和の生き残りだ。
文語体で漢字カナ交じり文だけど,改版で新仮名づかいになっているのはいまいち違和感。旧仮名でいいのにね…。
引用のとこは旧仮名。p.15のこれは手紙の引用
“便箋ニ優シキ女文字ニテ誌ス 「お元気ですか 私たちも元気で過してゐます ただ職務にベストを尽して下さい そして、一しよに、平和の日を祈りませう」”
かなが旧仮名でカナが新仮名というのはどうも違和感。でも改版当時(1981)はもうこの方が売れる,という判断だったのだよねぇ…。
GHQの検閲がなくなってようやく世に出た初版 -
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戦艦大和の最後の出撃に参加した吉田満が、戦艦大和の出撃から沈没までを綴った作品である。(一部に創作が加えられており、ノンフィクションではない)
吉田満は、東京帝国大学(当時)在学中に学徒出陣により召集され、1944年12月に戦艦大和に乗艦。翌1945年4月、最後の出撃(天一号作戦)に参加したが生還し、終戦直後の同年9月に、ほぼ一日で本書を書き上げたという。
執筆の動機について、著者は、「敗戦という空白によって社会生活の出発点を奪われた私自身の、反省と潜心のために、戦争のもたらしたもっとも生ま生ましい体験を、ありのままに刻みつけてみることにあった。・・・今私は立ち直らなければならない。新しく生き -
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昭和史の対論という表題に惹かれて読んでみたが、鶴見俊輔という巨大な知性が光った本であると感じた。
鶴見俊輔は、ベ平連で有名なリベラリストであるとは知っていたが、本書でその生まれや過去、考え方がよくわかった。鶴見俊輔は、後藤新平の孫にあたり、戦争前の1938年(昭和18年)16歳時にアメリカに単身留学し、1942年(昭和22年)日米開戦後に交換船で帰国するなど、いいとこのぼっちゃんである一方で冒険的な人生を謳歌した過去を持つ。リベラルといっても、様々な過程があることを伺えさせ、多種多様の多くの知人を持ち、幅の広い人間であることが対談の内容からもよくわかる。それにしても、この知識の広さ・深さは