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歴史家・網野善彦と哲学者・鶴見俊輔が、それぞれの半生を重ねながら日本の歴史を問い直す。われわれはいつから「日本人」なのか。教科書と違う視点に立ったとき、新たな「日本」の姿が見えてくる。異端な2人の、たった一度の対談を文庫化。
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Posted by ブクログ
知の巨人が対談というと大袈裟かもしれない。 対談なだけに話が飛ぶ飛ぶ。同じ時代を語っても 様々な思想家、歴史家の観点が織り交ぜられて 万華鏡のようにコロコロと色彩が変わっていく。 だが、それがこの対談の最も大きなテーマだろう。 冒頭で鶴見氏は「ものは自分の視点でみるしかない。 だが別の何かを気配で感...続きを読むじれる。それが感じれるか どうか」という投げかけが、まさにそれだ 基本的に内容は現在を形作った近代史が軸である。 明治、戦争、高度成長。さらに視野を広げて江戸時代、 また庶民の生活などスコープが様々に変わる だが、この二人が軸にしているのは間違いなく 現代で、そこからの未来を見つめている。 明治に様々な単語が作られたことは知っていたが それらの言葉に重層がない、意味が薄いという点で 文化性が欠けているということまで思いつかなかった。 シンプルであることは、当然覚えやすいが、物事は 単純ではなく、定義できない何か(気配)がある。 それを読み解くことが日本人はできなくなって しまっている。それは明治が作られたシステムに 現在も乗ったままだから・・・等、興味深いテーマ が点在している。
面白かった。「日本」という国号ができたのは七世紀末だから、その前には「日本」も「日本人」も日本列島には存在していない。しかも、当初の「日本国」は日本列島の一部しか支配していない。日本国は明らかに東北と南九州とを侵略・征服して、百年をかけてようやく本州・四国・九州をほぼ支配下に入れたことを始めて知った...続きを読む。そうすると聖徳太子は日本人じゃなくなるのが論理的に必然なのだが、なかなかそうは思えない。ナショナリズムについて考えさせられる。対談相手の鶴見俊輔もめちゃくちゃいい。「真理とは方向である」という名言。真理はここに真理がある、という形ではなくて、ここじゃなかったの連続から見える真理がありそうな方向を探すことであるという。真理の方角だけは人間には分かるんじゃないか、と。民俗学の成立の仕方だったり、柳田國男や宮本常一といったレジェンド達も容赦なく批判していくスタイルがとてもいい。文脈で話してくれるのが全体を見渡しやすくさせてる。参考文献を読むだけで勉強になる。
網野善彦さん、 その歴史観に圧倒的な刺激をもらいました。 鶴見俊輔さん、 その思想に大いに触発されました。 そのお二人の対談集 面白くないわけがない この本が世に出るまでのお世話をされた 中川六平氏に力いっぱいの拍手と感謝を贈ります
網野と鶴見という今は亡き二人の1993年の対談である。鶴見に引き出されて、網野の天皇制への主張の核がはっきりと示されている。内なる天皇制などとは言わず、生活の各層に潜む天皇制の在りようをつかまねばならないとする意志が明確である。平成が終わる今、以下の発言を記しておきたい。 「王は自分に独自の力がある...続きを読むから王なのではなくて、まわりが王と思うから王になれるのだ、といわれますけど、全くそうだと思うんです」「権力は社会の合意があって初めて維持し得るので、その合意が崩れるような事態が起こり、それを多数の人民が意志として表現したらあっという間に消し飛ぶと思うんです。人間は断じて力だけで押さえつけられているものではないという見方を、もっと徹底してわれわれ自身のものにしていかないと、古代から近代に至る日本史のとらえ方は、ホンモノにならないのではないかと私は考えています」
-国史なんていっていると、いかに精密にやったって、国家と国旗が日常生活と連動しちゃうんです。そこが困るんですね。日常生活には国家の支配しきれない領域がある(鶴見)。 国家の支配しきれない領域の存在を、海民や職能民の歴史を通じて解き明かそうとした網野善彦。本書は、哲学者・鶴見俊輔との対談。 網野史...続きを読む学(と呼ばれるのを本書では拒否しているが)の仕事を、思想家の立場から解析すると何が見えてくるのか、というところが読みどころ。 少々、年寄りの繰り言のようなページも目立つのだが、現代は「戦前、戦中にはなかった特別の鎖国状態にある」という指摘は頷ける。
軍国主義の日本が太平洋戦争へ突き進む時代に生まれ育った2人の対談。網野氏は『日本の歴史をよみなおす』を読んで、その歴史観に感じ入った人。マルクスに関することや、天皇制に関する対談を読むと、左寄りの人なのかと思ったが、最後まで読めば、素直に日本の歴史、それも通史を考えている人であることが理解できる。た...続きを読むだ、自分には対談を読み理解するのが苦手なんだと痛感した。
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