鶴見俊輔のレビュー一覧

  • ドグラ・マグラの世界/夢野久作 迷宮の住人
    「ドグラ・マグラ」、今まで確か三回読んでいて、最初は茫然、二回目は面白く読んで、三回目は鼻白んだ記憶がある。その三回目が最後の読後感なわけで、あまり読み返そうとは思っていなかったのだが、あの鶴見俊輔がこれだけの興味を示すのであれば、とまた読んでみようという気になった。本文だけを読むのも面白いが、背景...続きを読む
  • 戦艦大和ノ最期
    戦記物して書かれた体験文学の傑作。全部が文語体で書かれているのがかえって迫力になっています。悲壮感、戦場の不合理がビンビン伝わる。古文勉強の導入として音読してもいいんじゃないかなと思います。
  • 戦艦大和ノ最期
    筆者の吉田満は、学徒動員の一環として応召され、副電測士(電測士というのは、レーダー要員と理解した)として、沖縄特攻作戦に参加する戦艦大和に乗り込む。1945年春、終戦まであと4ヶ月の時である。
    既に米軍は、沖縄を勢力圏に置いており、そこを本拠地とした本土攻撃を遅らせるために、日本軍は本土防衛作戦の一...続きを読む
  • ぼくはこう生きている君はどうか
    私にドンピシャな一冊。
    1行ごとにふむふむふむふむふむ、首が折れるくらい納得の話ばかり。

    鶴見 哲学の問題というのは、自分で自分に問題を与えて、自分で答えを見つ けなければいけないんです。

    すばらしい言葉の数々、胸に刻みます。
  • 思い出袋
    鶴見さんの作品を読むのは初めて。いろいろすごい思想と文章を積み重ねて、80代のときにたどり着いた表現という印象を受ける。平易な言葉でくり返し同じエピソードがつむがれる中に、ドキッとするような一文がまぎれこんでいる。

    中でも大江健三郎のことを描いた「内面の小劇場」は圧巻。内面のせめぎ合いなしに、何か...続きを読む
  • 現代日本の思想 その五つの渦
    久野収・鶴見俊輔の両氏による1956年に共著。白樺派、日本共産党、生活綴り方運動、超国家主義(北一輝とか)、戦後の世相の5つに対して、鋭い分析が加えられる。本書刊行時、久野さんは46歳、鶴見さんに至っては34歳ということにまず驚く。

    超国家主義は久野、それ以外は執筆が執筆している。あとがきによると...続きを読む
  • フランクリン自伝
    読む前まで、フランクリンについては避雷針発明に寄与した人くらいの知識しかなかったが、この本を通じて、彼は有能な社会起業家だと感じた。
    それを特徴付けるのは、彼の優れた調整力と構想力だと思う。

    まず調整力について、彼は自らが立案したことであっても敢えてその起案者をかくしたり、あるいは他人を立案者に仕...続きを読む
  • フランクリン自伝
    訳者(鶴見俊輔)のあとがきの通り、近所のおじさんおばさんが語ってくれるような親近感を、私は受けた。「読みやすい」という評判は訳者のおかげもあるのかもしれないが、フランクリン自身の語り口も謙虚で率直であって、その意味でも読みやすい本だった。ベンジャミンフランクリンという18世紀の「アメリカ合衆国建国の...続きを読む
  • 思い出袋
    重いキーノートをバックに美しく複雑な音楽を聴いたような読後感。凄まじい知性と感受性。受けとる側(私)が未熟なため受け止めきれていない感があるが。
  • 歴史の話 日本史を問いなおす
    知の巨人が対談というと大袈裟かもしれない。
    対談なだけに話が飛ぶ飛ぶ。同じ時代を語っても
    様々な思想家、歴史家の観点が織り交ぜられて
    万華鏡のようにコロコロと色彩が変わっていく。
    だが、それがこの対談の最も大きなテーマだろう。
    冒頭で鶴見氏は「ものは自分の視点でみるしかない。
    だが別の何かを気配で感...続きを読む
  • 思い出袋
    80歳を超えた思想家が、自らの人生を振り返るエッセイといっていいのだろうか。雑誌の短い連載をまとめたものということもあってか、少し断片的な感じがあり、同じ話が何度か出てくるものだから、思想家の人生を問わず語りに聞かされているような、恍惚の人、夢うつつな感覚もなくはない。それでもしっかりと芯を感じさせ...続きを読む
  • 現代日本の思想 その五つの渦
    現代というのは本書が書かれた1956年のことである。戦後派の思想として、最後に実存主義でしめるが、それに至る過程として、白樺派に始まる日本の観念論、日本共産党に始まる日本の唯物論、生活綴り方運動に始まる日本のプラグマティズム、戦争に向かっていく日本の超国家主義、について、公平な立場で論考。古い本では...続きを読む
  • 戦艦大和ノ最期
    著者のご遺族に知り合ったこともあり、大学生の頃読んで感動した、戦後文学の名著。
    戦争中、出征していった若者がなにを考え、なんで戦い死んでいったのか。
    最近多い単なるナショナリズムとその反発のような軽薄な議論するの暇があれば、一読することをお勧めする。
    自分たちは、彼らが犠牲を払って託したものを本当に...続きを読む
  • 思い出袋
    吉本隆明「追悼私記」
    「中井英夫戦中日記」
    「おだんごぱん」
    「いっしょうけんめい生きましょう」
    内山節
  • 戦艦大和ノ最期
    呉の大和ミュージアムにて購入。
    こういうのは最高評価以外につけようがない。

    確か再読だったなぁ。子供の頃読んだ時はこういうのの捉え方がわからなかったしカタカナ読みづらいしで困ったけど、今はすんなり読めるね。ミュージアムで駆逐艦等の知識得てからだから余計面白い。
    臼淵少佐の言葉は至言。国や時代が違っ...続きを読む
  • 戦艦大和ノ最期
    凄かった。泣いた。「永遠のゼロ」で感動しているヒマがあったら是非この名著を。一読して(他の批判を待つまでもなく)これは「小説」であり「記録」ではない。余計な修飾や後付け、伝聞は目立つ。しかしそれを差し引いても圧倒的。僅か二時間の戦闘の如何に凄惨なことか。その後の脱出行の如何に無常なことか。僕はこの小...続きを読む
  • 身ぶりとしての抵抗 鶴見俊輔コレクション2
    鶴見俊輔氏のような行動する知識人は日本ではほとんど稀有な存在ではないだろうか。本書では戦時下の抵抗、ハンセン病の人びととの交流、べ兵連、朝鮮人・韓国人との共生と、ほとんどの人が避けてとおりたい、見て見ぬふりを決め込みたい問題にごく自然体にコミットしていく姿が印象的で、ほんとうに志の大きな素晴らしい人...続きを読む
  • 戦艦大和ノ最期
    「大和轟沈 一四二三」

    昭和20年4月7日12:20
    「目標捕捉 イズレモ大編隊 接近シテクル」
    戦闘開始から2時間後のことである。

    カタカナの文語調の文体には緊張感が漂う。
    時系列、日記的な記載により臨場感が増す。
    基点(大和)から、話題がぶれないために、時局の把握は容易にできる。(時代背景や...続きを読む
  • 思い出袋
    不良少年として生きる……国家と個人との関係を思考し続けてきた鶴見俊輔氏の力強い回想録。

     「くに」にしても「かぞく」にしても、それは現象として仮象的に存在するものにすぎず、モノとしての実体として存在するわけではない。しかし、誰もが一度は「くに」や「かぞく」を巡って「引き裂かれてしまう」のが世の常だ...続きを読む
  • 思い出袋
    言葉が、心にしみいる感覚がたまらない
    一気に読んでしまいました。あふれでる言葉が少しの抵抗もなく、心にしみいる感覚が好きです。ほんとうに文章を読むことの心地よさを充分に味わいました。この一年間に何度も読み返しています。たしかになによりも名文ですね。知人、友人に幾度となく一読することを進めています。ひ...続きを読む