鶴見俊輔のレビュー一覧
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「大和轟沈 一四二三」
昭和20年4月7日12:20
「目標捕捉 イズレモ大編隊 接近シテクル」
戦闘開始から2時間後のことである。
カタカナの文語調の文体には緊張感が漂う。
時系列、日記的な記載により臨場感が増す。
基点(大和)から、話題がぶれないために、時局の把握は容易にできる。(時代背景や軍備)説明はは少ない。
天号作戦は、死出の作戦。出航後の帰還はしない。
緊&緩の繰り返す波、艦上と下船の会話。これは軍隊と家族、戦争(死)と生活(生きる)との対峙なのだろう。会話中に登場する、許婚、父母や、妹があり。
戦闘(攻撃)の描写は息を飲む、目前での死別あり。無言の最期があり。死に直面しての -
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ネタバレ不良少年として生きる……国家と個人との関係を思考し続けてきた鶴見俊輔氏の力強い回想録。
「くに」にしても「かぞく」にしても、それは現象として仮象的に存在するものにすぎず、モノとしての実体として存在するわけではない。しかし、誰もが一度は「くに」や「かぞく」を巡って「引き裂かれてしまう」のが世の常だろう。戦後思想史に独自の軌跡をしるす哲学者・鶴見俊輔さんは「不良少年」としてその歩みを始めた。名家・後藤新平の孫として生まれるが「不良少年」は日本を追われるように15歳で単身渡米、ハーバード大学へ進学して哲学を学ぶ。日米開戦とFBIによる逮捕、そして交換船での帰国と軍属の日々……。
本書を著した時 -
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言葉が、心にしみいる感覚がたまらない
一気に読んでしまいました。あふれでる言葉が少しの抵抗もなく、心にしみいる感覚が好きです。ほんとうに文章を読むことの心地よさを充分に味わいました。この一年間に何度も読み返しています。たしかになによりも名文ですね。知人、友人に幾度となく一読することを進めています。ひとつのエッセイに千文字ほどの文字からあふれる言葉から、文章に含まれた普通の人生哲学が、ふっと湧き上がるのを感じます。疲れた気持ちを解きほぐすエネルギーが、かすかに力強く満ちてくる息遣いを感じ取るのです。戦前戦後の日本と世界について、良きも悪いもすべてをはっきりと見据えた個人としての思考が著者の八十年 -
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著者、鶴見俊輔が80代で連載していたエッセイを纏めた本。著者は、ハーバード大の哲学科卒の哲学者であるが、文章は平易で読みやすい。
青年の頃にアメリカに留学(放逐された?)した経験もあり、日本への視点も鋭い。その主義・主張・軸は加藤周一に通じるものがある。
この主義・主張・軸は明治を知り、戦前、戦中、戦後を知る者の感性から生まれてくるものであり、現代社会の我々も心に留めておきたい。
(引用)
・ベネディクトが日本文化を「恥の文化」としておおざっぱに規定したのに対して、作田啓一は、日本文化の流れに恥とは別に「はじらい」の感覚があることを、太宰治の作品の分析をとおしてくり広げた。
・「〇〇は古い -
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ちょうど出たばかりのこの本を、さていつ読もうかな、などと思っている時に、残念なことに、上坂冬子の訃報が入りました。
思えば彼女は、筋金入りの保守派でした。どちらかというと、まぎれもなく、真剣に対峙するとしたら、とんでもない許し難い保守反動でした。
悪しき改憲論者で、韓国従軍慰安婦への無理解や、夫婦別姓反対で、戦中派に相応しく皇国史観を残存した前世紀の遺物=シーラーカンスに似た化石に近い存在でした。(けなしているように見えますが、私流にちょっとお茶目に、面白可笑しく装って、誉めそやそうとしているのですが、あまり成功していません・・・)
そういう、どちらかというと敵なのに、でも何故か、彼女の -
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「過渡期掲示板」という掲示板で管理者の「高望み」さんにより紹介されていました。「僕個人が、1980年代前半から思想的に彷徨いながら、ようやく去年辺りからつかめてきた近現代の日本の思想構造について、すでにこの本はあますところなく定式化していたこと自体は、たんに個人的な回り道の問題にすぎません。しかし、この本の出版年次はなんと1956年なのです。日本の「新左翼」はともかくとしても、吉本隆明氏の1960年代前半の試みすらが、ある面ではまったく、すでに1956年にだされている水準の釈迦の掌の上で踊ったものにすぎなかったのかと思うと、なかなか夏風邪が抜けない状態です。」とのこと。この本を読んで、今「綴方
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戦艦大和の最期
全編、漢字とカタカナの文章をこんなに読むのは初めてかも知れない。最初読み難いかも知れん…と思ったが、読み出したら特に問題ないのは不思議な気がした。流石にカタカナも日本語だと言うこと笑笑。でも何故戦中は平仮名ではなく片仮名表記だったのかな?平仮名よりも文字の見間違いとかが起こらない…とかそんな理由が有るのかな?なぞと考えてしまうw。主人公が活字ジャンキーなのは好感が持てる笑。出航後、遠い岸の桜のエピソードは微笑ましく。やはり桜は日本人の心に深く染みる花なんだなぁ〜と感心した。
戦闘が始まった後の激しい攻撃と戦艦内部の苛烈な状況描写が生々しくて「連合艦隊」「男たちの大和」とかいろ -
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戦中からの戦後へと。著者の経験が語られ、出会い、影響を受けた本、体験。著者の記憶を追体験しながら、読み手も過去に出会い、鶴見俊介に影響を与えた構成要素に触れていく。
登場する本の一部を書き出してみる。
『余白の春』『何が私をこうさせたか』『詩人の愛』
『ゲド戦記』『釈迦』『反動の概念』
『おだんごぱん』『星の牧場』
『思い出の作家たち』、漫画の寄生獣なんかの話も出てきて、大正生まれの著者の読み物として、その柔軟さと共になんだか嬉しくなる。
言葉は読み、なぞり、発し、いつの間にか自分のものになる。染みつき、思考化し身体化される。そんな要素が伝わってくる。
例えば、金子ふみ子。
ー 今この時