鶴見俊輔のレビュー一覧
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確かにカッコいい人だ。だいたいカッコいい人は物事を測る軸を持っている。しかもその軸は色々な経験に基づいて出来上がってきたもので、誰かに教えてもらったり、影響を受けただけのものではない。影響は受けても最後は自分で考えて自分なりの回答を出す。それが間違っていると判ればすぐにそれを改める。そうやって積み上げ、築き上げてきたものが滲み出てくる人、というのはカッコいいはずだ。
日露戦争の終わりとともにこの国の本当の教育は終わった、と鶴見先生は仰るがそれから100年以上経った現代もまだ落下を続けている。そう考えると自分の子供達には好きな勉強をしてもらいたいと思う。教養は身につけてもらいたいと思うが、残念な -
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鶴見俊輔の前半期、早いもので1949年発表のものから1960年代の論考が収録されていて、特にコミュニケィション論は読み応えがある。
今から見れば、コミュニケーションという言葉は当たり前に用いられているが、敗戦後間もない時期から言語とコミュニケーションについて考察を深めていったところに、鶴見の問題意識が感じられる。
特に、『二人の哲学者ーデューイの場合と菅季治の場合』。菅季治という名前は、共産党のいわゆる徳田要請問題に絡んで自殺してしまった人という程度しか知らなかったので、この論考はとても参考になった。コミュニケーションとディスコミュニケーション、両方を考えなければならないということ。
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副電測士の少尉であった著者による、戦艦大和の最後の出撃をえがいた記録文学です。
太平洋戦争の敗色が濃厚になっていくなかで、大和は片道の燃料だけを積んで、生還を期することのない「天一号作戦」の実行をおこないます。「日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャナイカ」と語る臼淵大尉と、それでもなお戦いのなかで死んでいかなければならないことの理由を求めようとする者との認識のちがいが浮き彫りになりつつも、大和は進路を進めていきます。たびかさなる集中砲火を浴び、著者も死の淵をさまようことになりますが、生きたいという「希求」ではなく、生きなければならないという「責務」によって、著者はロープをつかみ、救出さ -
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吉田満 「戦艦大和ノ最期」 戦艦大和の電測員であった著者が、天一号作戦における戦艦大和の出撃から自爆までを記録した本。
戦争の不条理、悲哀、残酷さ、昂揚感など戦争の全てを再現している感じ。カタカタ文語体の文章が 軍隊を象徴しているように感じる〜規律的というか、ガラパゴス的というか。
天一号作戦は、往路のみの燃料を搭載し、敵国の標的となれというもの。もはや作戦ではない。この時点で降伏せず、原爆投下まで国家の損失を広げた理由を知りたい
敵国の的確な攻撃力に対して「敵ながら天晴との感慨湧く。達人の稽古を受けて恍惚たる如き爽快味あり」と感じるあたり、後に日本銀行で日本経済を復興させた人物だ -
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ネタバレ●本の概要
様々な人物の思想を鶴見俊輔が語ったものを編集者が纏めている。そのため、テーマとして何かしら一貫したものはない。それぞれの枚数もバラバラである。何名かを書きだそう.
イシ(先住アメリカ人ヤヒ族最後のひとり)、ジョージ・オーウェル(英国人作家)、金子ふみ子(アナキスト)、ハヴェロック・エリス(性心理学者)、ガンジー(インドの弁護士、思想家、政治指導者)、由比忠之進(エスペランティスト、反戦運動家)、新島襄(同支社創立者) etc
●好きな場面
いくつかを抜粋、※で補足や所感を記述する
尚、長文が多いため、一部を省略し、辻褄を合わせるために、文章を一部編集している
イシは文明人を知識 -
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吉田満は1923年に生まれた。1945年に22歳。九死に一生を得て戦後を迎えるが、1979年、高度経済成長の最中、56歳という若さで亡くなっている。
20代に、初めて読んでい以来、沈没寸前の大和艦上の凄惨な描写が忘れられない。臼淵大尉はじめ、少壮の将校たちの特攻に対する議論が、戦後日本の浮かれた経済成長を批判する言説として読み継がれてきた一面が強い作品だ。しかし、ここに描かれている、艦上の凄惨にこそ、「死」と「国家」を天秤にかけた議論以上に、吉田の国家や戦争の持つ、本質的な「人間蔑視」批判のメッセージを読むべきではないのかと、最近気づいた。
先日、呉の「大和博物館」(?)の前を通った。金 -
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網野と鶴見という今は亡き二人の1993年の対談である。鶴見に引き出されて、網野の天皇制への主張の核がはっきりと示されている。内なる天皇制などとは言わず、生活の各層に潜む天皇制の在りようをつかまねばならないとする意志が明確である。平成が終わる今、以下の発言を記しておきたい。
「王は自分に独自の力があるから王なのではなくて、まわりが王と思うから王になれるのだ、といわれますけど、全くそうだと思うんです」「権力は社会の合意があって初めて維持し得るので、その合意が崩れるような事態が起こり、それを多数の人民が意志として表現したらあっという間に消し飛ぶと思うんです。人間は断じて力だけで押さえつけられているも -
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映画「男たちのYAMATO」を見て、この有名な本のことを思いだし、読んでみました。
著者は21歳の海軍少尉として戦艦大和に乗りこみ、その撃沈を生き延び、終戦直後、わずか1日でこの小説の初稿を書き上げたということです。
大和の最後を描いたこの作品、映画の幾つかの印象的なシーンは、この小説からそのままとられています。たとえば、長島一茂演じる臼淵大尉が、激しく言い争う士官の間に割って入って語るときの言葉とか、特攻作戦を伝える特使にくってかかる若手艦長のシーンとか。
映画では、戦闘シーンは15分程度だったと思いますが、実際には約2時間、壮絶な(というか制空権、制海権が失なわれた海を行く大和へのほ -
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よくもまあ,当時のことをこれだけ詳しく書けるものだ…と感心した。こういう本があることは知っていたが,「今さら読んでもなあ」と思い,敬遠してきた。が,最近,政治の動向がきな臭くなってきたので,なんとなく,こういうものにも触手が動くようになったのだ。
最後の解説は鶴見俊輔氏が書いている。
大和の特攻は,ムダなのか…オレらの死の意味はなんなのか…艦船上で悶々とする兵士たち。「負けて目ざめることが最上の道だ」とは,自分達の死を意味づける究極の言葉だ。「日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じじゃないか」
もっと前に,降伏していれば,大和の死もなかったのに…。
全編文語体で書かれている本書から伝わっ