エンタメ小説としては割と面白かったです。
取材をしっかりしていることもよく伝わり、アニメの現場を描いた
フィクション作品としてはかなり完成度が高いと思いました。
少なくとも"現在まで"を描いた部分では、現実との大きな齟齬は見当たらなか
...続きを読むったと思います。
ただし、コロナ後の未来を描いた後半については色々と気になるところもありました。
たとえば、デジタル作画は作品のクオリティそのものには寄与する部分が少なく、少なくとも現場の制作側にとっては導入のための課題の方が多すぎる点が無視されています。
それでもいずれは置き換わるでしょうが、諸手を挙げて歓迎している人は少ないでしょう。
また、セルルックCGについてはより大きな(そして誰もが通る一般的な)誤解があります。
3DCGのキャラクターを使用した表現の限界はここ10年ではっきりしてしまいました。
サンジゲンが判子顔のアイドルアニメに傾倒していること、東映の正解するカドのクオリティがアレだったことを思い出せば分かります。
オレンジのビースターズは稀に見るほどの高クオリティでしたが、あの表情作りは国産アニメよりはピクサーに近い。
もっと言えば、昨今のサンジゲンの表情作りも、微妙なニュアンスは排除してカートゥーン的な大げさな物ばかりになっています。
3Dでは微細な表情を作りにくい。それこそ聖ラインなど絶対に引けないわけです。
また、服装・髪型を新しく作るのはもとより、ダメージの合わせすら非常に高コストがかかります。
作中のアルカディアの翼をアニメ化するとき、3DCGでキャラクターを描く選択は絶対にやってはいけないことの一つです。
空中のアクションは3Dで、キャラ芝居は作画で、というのが本来の落とし所でしょう。
聖さんが3Dやりたがっても全力で止めるべきでした。
ここらへんの感覚というのは、かなり先進的なプロデューサーでも中々実感できていませんが、制作現場ではいい加減かなり浸透してきている現実です。
Pたちが3Dを売りに金を集められる間はセルルックCGはなくならないと思いますが、それをメイン表現にした作品は早晩淘汰されるものでしょう。