塩田武士のレビュー一覧

  • 存在のすべてを

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    なかなかの長編だったが飽きることなくスルスル読めた。かりそめの親子の絆が切なく、映画『八日目の蝉』のシーンを思い出す事多々。想像をかき立てられる写実画の表現が多く、こちらの映画化も必然と思われ、楽しみ。
    しかし、中盤までの警察や報道側の視点が丁寧に描かれているわりに、終盤が物足りなく思えたのは残念。大事な核心部分、3人の親子に思い入れが強まったところで、最後この3人は救われたのか、どうなのか?あえて読者の想像に任せたのかもしれないが、もう少し書いてほしかった。

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    2026年10月06日
  • 踊りつかれて

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    SNSで誹謗中傷されたお笑い芸人が自殺をした。
    ある日、誹謗中傷した八十三人の個人情報がネットに公開された。
    その中には三十年以上前に人気女性アイドルの不倫の捏造記事を書いた者も含まれている。

    現代の行き過ぎたネット状況についての警鐘を訴えた作品と思ったがそれについては正直、突っ込みが甘く物足りない感じがした。

    それ以上に強烈なのは人気女性アイドル奥田美月の生涯。あまりにも内容が酷すぎて、読むのを止めてしまう。また、瀬尾が個人を特定していくやり方には執念を感じ、恐ろしくなる。

    塩田さんは人の優しさ、怖さの表現がとても上手でそれが今回も丁寧に描かれていてとても嬉しい。



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    2026年10月06日
  • 罪の声

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    昭和最大の未解決事件『グリコ森永事件』をモデルにした小説

    事件ミステリーとしても面白いが、動機に重点を置いていないところも良かった
    ことの大きさと動機は必ずしも比例しないが、ことの大きさで揺れ動く人間の感情は比例する

    大人のエゴに子供は抵抗できない
    罪の声は空虚でしかない

    この作品ほど暗い影を持った人はそうそういないにせよ、レッテルを抜きにして人を評価するためには腹割って対話するしかないのかもしれない

    だからこそ染みる受け止める優しさ

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    2026年10月02日
  • 踊りつかれて

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    攻撃的な冒頭から想像されたより、読み進めるにつれ、切ない想いが溢れて、最後は愛の物語になっていました。
    それにしても、昭和から令和のメディア考としてもとても面白く、また、音楽的な面でもありありと情景が浮かび、とても密度の濃いお話だったと思います。

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    2026年09月28日
  • 罪の声

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    登場人物が多く、集中して読まなければならなかった。
    しかし結末や伏線回収 人物別の視点など非常に面白く読み切った時は充実感があった。

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    2026年09月26日
  • 存在のすべてを

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    出会いがあれば別れもあるというが、今作の別れほど切ない話は無いと思う。自分が貴彦と優美なら、どのような選択をしただろうか?と考えてしまう。客観的に見れば、違う選択をした方が良かったのではないか?と思う。しかし、子供には不思議な力があり大人の心と身体を動かすのだと思う。子供はとても尊い存在だ。

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    2026年09月26日
  • 罪の声

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    かつて日本中を震撼させた未解決事件にまつわる男と事件の真相を追う新聞記者
    二つの視点から埋もれた罪を掘り起こしていくお話

    被害者でありながら、加害者家族
    当時まだ子どもだったとして家族の罪をどこまで背負わなければならないのだろう
    親族の不始末の責任を負う感覚を私は待ち合わせてないのでやや置いてきぼり

    両端から手繰り寄せた糸がぴんと張られる時
    問われるのは一個人が社会に対してどのような正義を成し得るのかということ

    たとえ冤罪でも
    事実無根でも
    後から真実が明らかになったとしても
    一度刻まれた傷や失われた時間は消えない
    それはこの作品の時代だけの話じゃなくて
    現代のインターネットユーザーが今いちど立ち止まって考えなきゃいけないんじゃないかな

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    2026年09月24日
  • 歪んだ波紋

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    報道の闇、フェイクニュースとオールドメディアに対するネットニュースの存在が描かれる。筆者が新聞記者出身だからだろう。現場の空気が感じられる。
    新聞報道について大きな問題提起をしてはいるが、本作の中では解決には至らない。
    一見つながりのなさそうな各話が散りばめられた伏線の回収により繋がっていく連作集。

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    2026年09月23日
  • 存在のすべてを

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    2026.09.22〜10.05

    人が生きる理由、生かされる理由。
    考えたら、キリがない。今は、深く考えずに、いよう。
    そして、しばらくしたら、再読して、考えてみる。
    そのくらい、私には重く、深く刺さってしまった。

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    2026年10月06日
  • 踊りつかれて

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    ネタバレ

    数年前、コロナ禍で自粛が呼び掛けられてる中、著名人が飲み会に参加したとして炎上してるSNSをみて、「なぜ、メディアに露出しているというだけで、自分の周りに飲み会参加している人たちはこんなにも沢山いるのに、人でなしのように罵られ、芸能界を干されなくてはならないのだろう」と、家族に愚痴を溢した事を思い出した。

    本作は、宣戦布告というタイトルでアップされたひとつの記事から始まる。「私が愛してやまない天童ショージ(芸能人)と奥田美月(歌手)を陥れた83人に、天罰を」という趣旨のもと放たれた爆弾は、83人の日常生活を悉く瓦解させる。「本性」を晒された83人のうちの1人から名誉毀損として訴えられた瀬尾と、その弁護人として選ばれた久代奏を中心に物語は進む。久代奏は天童ショージと古くからの知り合い(同じ学校)であるものの、瀬尾から指名された理由が分からなかった。久代は、瀬尾が拘り続ける天童ショージと奥田美月の繋がりを見つけるため、多くの人に取材を行っていくが、そこで形成される瀬尾、天童、奥田の人物像が、リアルで、彼らの繋がりがとても尊く温かいものであったかを知る。

    ラストはハッピーエンド?で、瀬尾は罰金程度で済んだものの、ラストの天童の遺書が、とにかく心に刺さりすぎた。以下は、ほんの一部。
    「SNSの最大の罪は、バラバラにあった多様性の象徴みたいな種々の物差しを、銀行の合併みたいに画一的にしてったことや。広まったように見えて狭まったんや。名もなき奴らが粗く編んだ「正しさ」の網に、首を傾けながら絡まってるんが現代人とちゃうんか。」
    匿名性という防護服を纏って、安全圏から刃を投げ続ける現代人。SNSが復旧した現代において、自分の意見に正当性を持たせ、日頃の鬱憤をネットにあげ、サンドバッグを血眼になって探しているハイエナたち(ハイエナに失礼)、評価を得るため、または、くだらない承認欲求に囚われ嘘八百ばかりの現代人。本当に自分の行いを見直した方がいい。私はSNSを一つもやらないので、SNSの闇がどこまで深いのかは分からないが、あらゆる人間からゴミのような扱いをされ、死ねと言われ続ける天童の立場にたったときに、あ、これは折れるかも、と感じた。勝手に苦しくなった。
    精神的なの暴力は、時として物理的な暴力を上回ると思う。読まなければいいと、理解はしてても、心が納得できない。表現の自由は分かるが、それは自分の発言に責任を持たなくていいという訳ではない。情報に溺れ、自分達の勝手な正義を振りかざす人間が減ればいい。

    本当に1人でも天童、奥田のような人が減ることを祈ってます。
    「踊りつかれて」というタイトルの伏線回収も好きでした。

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    2026年09月22日
  • 存在のすべてを

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     塩田武士さんの作品は「罪の声」以来です。ひょんなことから重要な根拠を手にしてしまったが故に着々と真実に迫る緊張感は読み手にもダイレクトに伝わってくる。
     今回の舞台は神奈川県。観光名所も登場するので親近感があり風景が鮮明に想定できた。2つの事件が名所の横浜とB級グルメで名が知れた厚木。位置関係も主要な都市と郊外の拠点となる場所、事件の重さもそれに比例する形で進んでいく。
     身代金を渡せなかった人質が戻ってくるまでの空白の数年にあった事は苦渋の切なさが伴う。その記録は事細かに描写される作品が物語り、時を経て見る人が解き明かす。この過程も多角的に進められてニアミスがありながら再会の時をもたらす。幾重にも重なる想いが幾つもの感情を表していて読後も暫く回想と共に楽しませていただきました。

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    2026年09月21日
  • 踊りつかれて

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    ネタバレ

    著者の作品はいつも、扱うテーマの選び方が絶妙だと感じています。本作で取り上げられているのは、私自身ずっと気になっていた「SNS上の匿名による行き過ぎた集団糾弾」。
    ああいう光景を目にするだけで胸がざわつくし、ニュースになるような事件に発展すると、怒りを通り越して脱力してしまう。だからこそ、こうして警鐘を鳴らす作品が存在することに大きな意味があると思いました。

    ただ本書は、SNSの誹謗中傷を批判するだけの内容ではありません。
    その先にある“個々の心の動き”を丁寧に掘り下げていく点こそ、むしろ本書の核だと感じました。
    短絡的に他者を傷つけてしまう人、想像力が働かないまま加害側に回ってしまう人には、ぜひこの本を読んで自分の内側を見つめ直してほしいです。

    他の方のレビューでは「冗長」「テーマがぶれている」といった意見も見かけましたが、私はむしろこの構成だからこそ伝わるものがあったと思います。
    読後に静かな余韻が残る一冊でした。

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    2026年09月21日
  • 存在のすべてを

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    映画化のニュースを見て文庫を手に取った。以前読んだ、罪の声、は本も映画もどちらも良かった。本作も、罪の声と同じく、未解決事件と巻き込まれた子どものその後の人生がテーマになっている。

    平成中期、2件の子どもの誘拐事件が同時に起こる。身代金の受け渡しに緊迫する警察。一方は子供が戻るが、もう一方は身代金の受け渡しに失敗し、子供が戻ってこない。それから3年。ある日、祖父母の家のチャイムが鳴る。そこには、攫われた男児が7歳になって戻ってきていた。

    戻ってきた子どもは、とても良く躾けられ、きちんとしたものを身に着けていた。抜けた乳歯は、どこの歯が抜けたのかわかるような手作りのケースに収められていた。生みの親より育ての親…。祖父母はつぶやく。攫われる前、子どもの母親は片親で、家を勘当されており、子どもはネグレクトされていたのだ。

    そこから更に月日は経ち、物語は群像劇になってゆく。SNSで話題の謎の写実画家と、行方知れずの20年前の孤高の天才写実画家が物語の鍵になる。このふたりの画家の謎を追いつつ、過去の2児同時誘拐の事件の真相を、新聞記者が日本全国を周りながら追う、という複雑なミステリー紀行。

    読み応えばっちり。秋の夜長にぴったり。ラストは涙なくして読めない。誘拐犯との逃避行を経たこの子どもにさちあれ。愛情たっぷりの人生が待っていますように。

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    2026年09月21日
  • 存在のすべてを

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    泣いてしまった。「存在」という言葉の意味。。この本は人にもお勧めすると思うし、私もまた読み返すと思う。

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    2026年09月17日
  • 存在のすべてを

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    ネタバレ

    1991年の不思議な誘拐事件、真相が分からないまま30年が経つが、諦めてなかった元刑事たちからの情報を元に記者が真相を突き止めていく。そこには、嘘だけど強く結びついた家族の絆が隠されていた。その複雑な糸を解きほぐす側、秘密を支える側、成長したその子と高校生時代に触れあって想い続けていた側が重なり合う時、真相が明らかになり、かつ再会していたことが描かれて、ラストになる。
    読んでいる途中で観た「時には懺悔を」の映画でも、誘拐した子(こちらは重度障害児だけど)を育てて疑似家族になっていたのを暴いていくストーリーなのとシンクロした。

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    2026年09月15日
  • 踊りつかれて

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    ネタバレ

    一般人の仮面を被った人々に大切な人がすり潰されていく様子が丹念に描かれている。瀬尾が二人に向ける長年の想いを時を超えてたっぷり描く一方、犯行声明からの加害者・被害者たちの行うはずだった償いなどはとてもあっさりとしている。女性が自殺したかも?や、奏を襲った犯人、一幸など、今までの人生が終わったことへの後悔はあれど、自分が傷つけた相手への罪の意識や反省が見られなかったことが残念。

    ストーリーはどんどん美月と瀬尾を取り巻く過去へフォーカスされていき、現在のSNSの持つ生々しさからは乖離していき、前半と後半で全く別の読み口の作品になっていた。最初のギラギラした瀬尾の序文と本人の性格がかけ離れていることも、ネットでは別人感を出しているのかも。

    個人的にBUTTERや羊たちの沈黙など、犯人とそれに向き合う主人公が、事件を介して互いをどこまで信じられるか?という探り合い歩み寄るストーリーが好きなので、瀬尾の献身も何か裏があるのでは?と疑ってしまった。

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    2026年09月14日
  • 起点

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    短編だが、どれも丁寧に磨かれている質の高さを感じる。登場人物もキャラクターが魅力的。
    シジミ汁を食べたくなった。しみじみと。笑

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    2026年09月14日
  • 踊りつかれて

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    SNSの誹謗中傷や週刊誌報道がテーマだが、単純に「悪いのは誹謗中傷する人」と片付けられないところが怖い。
    発信する側、見る側、拡散する側。 自分もその一人になり得ると思うと、他人事ではいられなかった。
    SNSとの向き合い方を改めて考えさせられる作品だった。

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    2026年09月13日
  • 存在のすべてを

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    場所や事件の詳細などが鮮明でホントにあった事件かと錯覚しそうになった。
    親子の別れのシーンは泣かずにはいられなかった。
    終盤にわかるタイトルの回収もよかったです。

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    2026年09月12日
  • 踊りつかれて

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    塩田武士さんの作品は3作目

    これまでの2作は俯瞰で読んでしまうところがありましたが、今作はいきなり没入型でした。
    軸となるのは今までの作風と同じ、ゆっくり丁寧に描写される人物像や社会性。
    それでも今作に関しては
    みんなにも読んでほしい!そしてみんなの意見も聞きたい!と思わせるもなのでした。

    書店員でもないけれど本屋大賞にします

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    2026年09月11日