塩田武士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレグリコ・森永事件を題材に、事実とフィクションを交えて物語が展開されていく。
京都でテーラーを営む曽根は、父の遺品整理の最中に古いカセットテープを発見する。そこには幼い頃の自分の声が録音されており、その音声がかつて世間を騒がせた企業脅迫事件で使われた脅迫テープと同じだと気付く。
曽根は、自分が知らないうちに事件に関わっていた可能性に衝撃を受け、真相を探り始める。
一方、新聞記者の阿久津は、事件発生から長い年月が経ったこの事件を、新聞の特集として真相を追うことに。
取材を進める中で、事件の背後には複数の人物の思惑や社会的な不満、そして警察の捜査を巧みにかわした犯人グループの存在があったことが見えてくる。
やがて曽根と阿久津の調査は交差し、事件に利用された子どもたちや家族の苦悩、そして犯人たちが抱えていた事情が明らかになる。
物語は単なる犯人探しではなく、犯罪によって人生を翻弄された人々に焦点があたっている。特に、何も知らないまま犯罪に利用された子どもたちが、大人になってからも消えない不安や葛藤を抱え続ける姿が丁寧に描かれている。
最終的に事件の全貌が浮かび上がるものの、失われた時間や傷ついた人生は元には戻らなかった。曽根は、被害者でありながら加害者の親族という複雑な立場のなか、事件を風化させないため、そして「未来につなげる」ために、調べてきたことを公表することに。
作品は未解決事件の謎を追う緊張感があって、罪の重さや責任の所在、人間の弱さと再生を深く問いかける物語だった。 -
Posted by ブクログ
ある女性の姿を第三者に語らせ、取材という手法で浮き彫りにしていく意欲的な作品。「悪女について」を思い出した。そこに主人公の家族も絡んできて、少しずつ解き明かされていくその女性の人生には魅了されるし、深まっていくドラマに引き込まれて、香港に出張してる間に一気に読んだ。
って書くと面白そうだし、確かに面白かったんだけど、なんかこれはテーマを詰め込みすぎじゃないか?作者頑張りすぎじゃないか?知ってること全部詰めたのか?という気もした。簡単に取り上げられているテーマだけでも、女性が差別された時代、男に縋らないと生きていけない女性達、ゲーム業界、ゲームやアルコール依存、不倫、芦原大火などなどあり過ぎで、収拾がついていない印象を持った。それに、開幕がいきなり昭和30年代の火事のシーンで、ここがとっつきにくい。どんな話になるのかさっぱりわからないし、ラストまで読むと意味は通るんだけど、これは導入としては筋が悪いんじゃないかなあ。
それと最も無理があると思うのは、生きてる人間に対してそこそこ近い関係の人たちが軽々しく個人的なことまで喋り過ぎでしょ、という点。報じないからいいってもんじゃないだろ。ここが不自然を通り越して無理だろ、と思いながら読んでた。あとさ、途中で出てくる教師は女性で女子生徒に強制わいせつしたって事だよね?そんな事もあるのはわかるけど、ちゃんと書き分けてないからえ、って思って無駄に戻ってしまってわかりにくかったよ。
しかし塩田武士はすごく力のある作家なのは確かだよ。途中のゲーム依存の若者の「ゴミクズがあ!」とか「謝るまで止めんぞ」の描写がリアル過ぎて涙が出たよ。
少しずつ話がつながって広がっていくミステリとしてはとても面白かったし、サウンドノベルのファンとしてはそれが登場してて嬉しい限り。しかし全体的に風呂敷を広げ過ぎてちゃんと畳めてないなと思うし、ラストもあっさりしすぎという印象。それと、俳句の「朱の化身」とタイトルの「朱色の化身」について解釈を残してきちんと語られていないのも物足りなかった。 -
Posted by ブクログ
塩田武士『起点』講談社文庫。
講談社文庫55周年を機に、550円で読める文庫本の企画の1作。既に東野圭吾、赤川次郎の作品が刊行されているようだ。昔は普通にこの程度の金額で文庫本を手にすることが出来た。自分が知る限り、160円や180円で芥川龍之介や太宰治、夏目漱石など名だたる作家の小説が購入出来たと思う。小松左京や筒井康隆の短編集も180円、260円という安価な値段だった。
単行本未収録の4編収録の短編集である。4編とも風合いが全く異なり、読んでいて結末が楽しみになる。
『小さい上司』。
こういうドケチなヤツはたまに居る。自分の会社でも入社してから結婚するまで会社の付き合いは一切断り、600万円を貯めたヤツが居る。コヤツは結婚に際して、結婚相手に貯金は幾らありますかと尋ねたらしい。
人は様々な事情を抱えて生きているが、多くの人はそれを自分の胸の中に留め、前を向いて生きている。
田舎の市役所に就職した吉村啓太は上司で41歳の小山田のドケチぶりと虚言癖に辟易としていた。ある日、小山田に振り回される啓太は小山田のドケチの理由を知る。
『鈍い火』。
ミステリー色のある短編。今の時代、ニュースなどを見ていると些細な理由で人を傷付けたり、殺害したりという悲しい事件が相次いでいる。また、大切な人を殺害された被害者遺族には復讐の機会も無く、裁判の判決も納得のいかない場合の方が多いように思う。
巨漢の新聞記者の調査により、事件の深層に潜む事実が次第に明らかになるプロセスが面白い。
新聞記者の瀬戸山育郎は、34歳の室戸健二が小学1年の男児を飲酒運転の車ではねた事件の裁判で、かつて仕事で関係のあったテレビ局でディレクターを務める岡崎亮の姿を目にする。裁判の後、岡崎に話を聞くと、岡崎の息子の優弥が被害者で意識不明の重体であると言う。
『仮縫い』。
35年もの間、叶わぬ恋を願い続けた実直な男が手にした宝。なかなか出来ることではない。結婚式での父親のスピーチが素晴らしい。
48歳になった中学校以来の仲間5人は、仲間の1人であるリンネンと呼ばれる林稔の結婚を知り、驚愕する。何しろ相手の女性は5人が憧れていたテーラー青木の娘の青木由美子だったのだ。
『起点』。
4編の中では一番短い掌編レベルの1作。舞台は近未来で、ネットには情報があふれ、人工知能が活躍し、普通の取材や物書きが通用しない時代のようだ。著者の傑作『罪の声』を登場させ、主人公に面白さが解らないと言わせる辺りはなかなか。
本体価格500円
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Posted by ブクログ
アニメの制作現場とプロデューサー、制作委員会にまつわるあれこれのストーリー。
これまで現場スタッフの好きなアニメの仕事ができるという《やりがい搾取》の中でそれでも成長し続けてきたジャパニーズアニメ。
忙しさを誇る幼さをなんとかしなくてはならん、とあれこれプロデューサーは奮闘する。
〜いつまで昭和を引きずるんだ。阪神のクリーンナップは、バース、掛布、岡田じゃないんだぜ。
には笑ってしまったが大きく頷いた。
新しい技術を取り入れ、現場スタッフの地位を向上させ新たなる作品を生み出す。
50代の自分は子どもの頃から大量のテレビアニメ、アメリカのハンナバーベラを楽しんだ。
《さらば宇宙戦艦ヤマト》を映画館で観た時の絵の緻密さは子ども心に衝撃だった。
そういった過程を経て日本のアニメは素晴らしい進化をした。
しっかりした原作、しなやかな動き、美しい絵、個性的な声、感情を揺さぶる音楽、どれをとっても超一流だ。
もはやピクサーと同等以上だろう。
自分はこの作品で初めて《文字でアニメを堪能する経験》をした。
ワクワクドキドキして、作中のアニメを見終わった(読み終わった)時は感動以外の言葉が見つからなかった。
日本のこのコンテンツは歌舞伎同様、国宝だ。