塩田武士のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大泉洋を主人公に当てがき。舞台は2016年前後の出版業界。
こんなん面白いに決まってる!
思えば10年程前から名だたる雑誌の廃刊のニュースが絶えず、私が学生時代に読んでいた雑誌も随分と数を減らしてしまった。
廃刊した雑誌が今もWEBで存続していると聞くと嬉しくなるが、規模大幅縮小で人員も削減しての運営と聞くと手放しには喜べない。
そして雑誌が消えると小説も発表の場を失う。
数少ない掲載枠を奪い合う形で、日の目を見なかった小説がどれほどあったのだろう……。
雑誌を存続させるためにあらゆる策を講じて東奔西走しても、それが報われるとは限らない。
出版不況は2026年現在も続いている。
しかし毎月どれを買おうか迷うほどの小説が書店に並んでいるのは、きっと速水のような人物の機知と奮闘のおかげだろう。 -
Posted by ブクログ
結構な長編ですが、かなり面白かったです。
終わってほしくない。
でも続きが気になるし面白いから読みたい!ジレンマでした。結局は読み終わりましたが。
作中に登場する写実画というのを鑑賞したことがないので一度みてみたくなりました。そういうのも小説のいい所ですね。自分の知らない世界を知れるという。
作者が登場人物に語らせていた内容で心に残ったところをメモしていたのが出てきたので追記。
SNSが発達した昨今では、報道される、社会で共有すべき事柄(成功、失敗、偉業また失敗)に対して関心が薄い。若者に限らず現在の風潮として、事件の被害者=人権保護の名の下に詳細を知る事さえ憚られそのうちに関心が失せ、すぐに事件自体も忘れられる。報道によって本来人々にもたらされるはずの、ある種の社会的共有財産が定着せずただ失われている。そのくせ愚にもつかない個人情報をあけすけに晒して悦に入っている。
結構辛辣だよなと思うが、確かにと頷くのも事実。 -
Posted by ブクログ
PP(パーフェクトポエマー)YASUSHIの新作「ゲット さてぃすふぁくしょん」は秀逸
笑いを堪えるために、俺は剣山で皮膚を痛め付けたっ!
以下、本文を抜粋
予はマンゾクじゃ
見つめられたらゾクゾクじゃ
はしゃいだおいらはテイゾクじゃ
予はボウソウゾクじゃ
仲間の絆をセツゾクじゃ
カゾクが連なりミンゾクじゃ
予はカイゾクじゃ
平日はキゾクじゃ
どちらもキキンゾクが好きじゃ
世の中みんな
ゲット さてぃすふぁくしょん
中山明正財政部長は執行委員の中で一番真面目に考えている
発言を求められただけで固まる武井とは次元が異なるっ!
ニャー吾郎だょ
武井の心中を察する気がないのか、遥は邪気なく繰り返す
彼女がちょっと○ホに見えたっ!
君たちは金をくれと言い、増収策はダメだと言い一体どういうつもりなんだっ! 文句ばかりだなっ!
朝比奈労担はキレかかったヨ
奥さん、イッちゃうの?
イクぅ~
スーパー迫田の店長は川島冴子の父という衝撃っ! -
Posted by ブクログ
女の子になりたい男の子の話
片思いの男の子に想いを寄せる小学生から性転換手術を経て三十代までの話
前半、大好きな男の子への想いはもう女のコ。
マンガを見ているような胸キュンだけど、自身の性に悩み、そしその後はいじめにあったりする。辛い。
成長するにつれ自分を誤魔化すこともできず、父親にも理解されず、家を出る⋯。
前半は心と身体の成長期と、
後半は「女になりたい」為に懸命に足掻く様子が中心となる。
昔はホモとかオカマとかオネェとかニューハーフとか呼ばれて、偏見が付きまとい理解されなかったり、家族から受け入れられなかったり、想像以上に辛いんだと思う。
テレビの中の人くらいしか知らないので、こういう本を読んで、どういう風に手術したのかまで知れて、よかったと思う。
そして⋯最後の明かされる真実。
ずっと見守られていた。
男という仮面を無理に引きはがそうとして、心に血を流して生きてきた。でも優しい人たちによって支えられていた。
凍てついて、唯一、温もりによってのみ溶ける氷の仮面。
その仮面がはずれる時に初恋の真壁くんがそばにいてよかった。
-
Posted by ブクログ
講談社文庫創刊55周年!の企画
550円「STORY IN POCKET」
5月の刊行本。
550円というお値段と
初読み作家さん
“入門、作家さんとの出会いに”
という 書店のポップを見て手に取る。
いつか読んでみたいと思っていた作家さん
4篇の短編集
『小さい上司』 『仮縫い』
ライトで少しニヤニヤしながら
だけど、最後はほんわか、じんわり
自分はまだまだなんだと思い
成長する主人公たちに共感
『鈍い火』
50ページちょっとの短編だけど
読みごたえあり、
終始不穏で少しの恐怖を感じつつ没入できた
最後の表題作の 『起点』
わずか8ページの短編
著者の 塩田武士さんご自身の50年後の未来。
孫が訪ねてきて、おじいちゃんである作家塩田さんを取材するという構成。
AIの進化ですごい事になってる50年後
「とにかく現場に行け、人に会いまくれ 会って話を聞け」と孫に言う塩田おじいちゃん。
すでにAIがあふれていている今
人に会わなくてもなんとかなっていて
便利でもあるんだけど
今にも通じる苦言にも聴こえた。
塩田さんの長編
『罪の声』『踊りつかれて』読んでみようと思う。
-
Posted by ブクログ
実在の「グリコ森永事件」をモチーフにした社会派サスペンス小説。
「実際も本当にこうだったんじゃないの…?」と思わせてくる文章の説得力に脱帽。これが途方もない資料やリサーチの賜物だと思うと、作者の執念のようなものを感じる。
おもしろいと一言で表現するのが憚られるような作品。
もちろん小説として楽しんだんだけど、ひとつの事件にあまりにもたくさんの人生が狂わされていて呆然としてしまう。被害者・加害者だけにとどまらず、その家族や友人、関わったすべての人たちまで否応なしに巻き込まれ、人生に影が落ちる。
世の中にとっては「一未解決事件」だけど、関わった人はそれを一生背負っていく。誰にも吐き出すことができず、重荷を降ろすことができない。
なんとなく過ぎていく日々のニュースにも、「この事件のせいで」と悲しんでいる人がいるんだと気づかされた。
惜しむらくは映画を先に見てしまったこと。
経済分野に特別苦手意識があって株価操作の話がいまいち入ってこず、「映画なら簡潔にまとめられてるだろうから、さわりだけ見よう」と見始めた。そしたらあれよあれよという間に夜更かしして最後まで見てしまった。それだけ映画がすばらしかったということなんだけど、小説を読んでいても小栗旬と星野源で再生されてしまったのが少し残念。
でも、映画には映画のよさ。小説には小説のよさがある。そんな作品でした。
信頼の野木亜紀子脚本なのでおすすめ。