塩田武士のレビュー一覧
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ネタバレ挫折した男たちの再起の物語。
人間関係が上手くなく、左遷に近い人事異動をくらった新聞記者。
生まれも育ちも不遇で、将棋だけが残された男。
そんな二人が出会ってもう一度前を向いてもがく。
新聞記者を将棋未経験者としたことで、読者が将棋を知らなくても読める様にしたのは親切。
将棋を通して描く人間模様こそが主題なので、安心して手にとって欲しい。将棋を知っていると輪をかけて面白いのはあると思いますが。
将棋にすがって生きてきた男の生き様は確かに不遇であるが、場面々々で手を差しのべる人がいたのはほんの少しの幸運だったなぁ。そのほんの少しの幸運が後に大きくなって帰ってくるとは。
秋葉にとっては大 -
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新鮮!臨場感、半端なし!
塩田武士さんによる大泉洋あてがき小説。
映画やドラマを見ているように、小説を読み進める愉しみを発見!
ダヴィンチの企画が発端で、
最初の目論見通り映画化も実現。
映画の原作ではなくて、
あくまでも、あてがき小説。
「存在のすべてを」よりも
私はこちら推し!
出版界の抱える問題を浮き彫りにしつつ、
会社という大きな組織での
裏切り、確執を描く。
主人公の速水=大泉洋が
とにかく魅力的で引き込まれる。
他の登場人物達も個性的で
どこか憎めない。
速水の行く末を
応援。ドキドキしながら読み進めていく。6章の会議のシーンの緊張感たるや!そして、最後そうきたか!と思った後 -
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ネタバレ結構長いのに面白すぎて一晩で読みきった。
その面白さの大きな要因は、大泉洋をあてがきして作られた「速水」というキャラ。どんな困難な状況も機転を利かして解決していく姿は、感心するだけでなく勉強にもなった。
ちなみに、私はこの本がきっかけで“あてがき”を知った。登場人物がイメージしやすく楽しいのでこういう小説がもっとあって欲しいと思う。
出版業界の話も新鮮で楽しかった。私は電子より完全に書籍派なので、将来紙に生き残って貰うため、売り上げに貢献しないといけないと改めて思わされた。
ただ、最後のオチの部分のタイトル回収は、あまり響かなかった。速水はただ会社に裏切られ、行動を変えただけなので裏切り -
ネタバレ 購入済み
存在とは何かを考える
「すごい…」
読み終えて出た言葉はありきたりで陳腐なものだったけれど、何かずっしりとした重量があるのに遠く上の方できらきらとした澄んだものがみえる、そんなものが腹に胸にのしかかっている感覚を覚えた。
家族愛、虐待、憎悪、淡い恋慕、執念、悔恨、そして希望、その間を湧水のような清らかで力強い写実画が繋いでいる。
作品の中で絵画の挿絵は1枚もないのに、そのほとばしる生命力と存在感溢れる彼らの作品が脳裏に焼き付いてしまう。
「彼」の存在感も実体も記憶の中のもので靄がかかった輪郭の薄い人物に感じられるが、彼の作品の描写からは生きている一人の芸術家の命の力、思いの強さを受け取るのだ。
この作品にはたくさん -
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ページをめくる手が止まらなかった。
そして、大泉洋のあてがきでなかったら、私は途中で読むのやめてたかもしれない…。
大泉さんの軽妙さ・ユーモアが程よい癒しになりつつも、いやいや全体的にかなり重い・熱い社会派小説でした。
作中、「電車の中でスマホを眺める人間に、どうやって本を手に持ってもらえるか」という主旨の投げかけがあった。
電子書籍、私も時々使っているけど、便利になった反面、何だか「味」を感じられなくなっているのは少し思うところがある。
終盤の巻き返しに口があんぐりしましたww
タイトル回収がここにあったか!と。
私は出版業界とは違う世界で生きているけど、どの業界も、その業界なりに苦しい -
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好きな作家の塩田さんの作品。
なんで、関西弁のボケ&ツッコミは健在!
今回のテーマは、
性同一性障害
めっちゃ重そう…
今でこそ、市民権を得て来ている感じはするけど、やはり肩身の狭い思いで生きんとあかんねんな。
確かに、カラダとココロが反対なんやからしんどいんやろうな…
主人公は、カラダは、男性で、ココロは、女性。小さい頃から、気付いてるけど隠して生きる。
そのうち隠しきれなくなるにしても…
でも、周りが良い人多くて良かった〜
肉親にしても
幼馴染にしても
好きだった彼にしても
想いは遂げれなかったかもしれんけど、分かってはくれてるし。
最後に、分かった真実に…涙 -
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塩田武士さんの作品は今回が初読み。
医学用語でいうところの性同一性障害を扱っており「体は男性だけれど心が女性」の翔太郎の成長する過程を描いた物語。
小学校4年生で自分の性に対する違和感をはっきりと認識し始めてからの日々の苦悩や葛藤を、決して誰にも相談出来ず、悩み苦しむ様子が切なくて胸に迫って来た。
同級生の真壁くんに対する恋心、男友達と自分とのギャップや、中性的な外見からクラスで揶揄われいじめの対象にされる辛さが、自分の経験と照らし合わせても、翔太郎が性に対して抱えている悩みの分だけ、何倍にも繊細で脆く感じた。
家出して蘭子として生きていく過程で、様々な出会いを通じて成長していくのだが、 -
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ネタバレすごくすごく良かった!!!
いくつか塩田作品を読んできたけど最初なかなか入り込めなくて中盤過ぎからやっと面白くなるってパターンが多かったからあまり期待してなかったんだけど本作は最初からぐいぐい惹き込まれた。
女の心を持つ翔太郎の苦しみや葛藤、真壁くんへの恋心、家を出てセカンド・サイトで働き、いろいろな出来事を経て蘭になるまでの壮絶な人生に何度も胸が苦しくなった。
茜やチーコママ、セカンド・サイトの仲間たち、小中時代の友達…辛く悲しい恋愛や孤独もあったけど、周りの人に恵まれていたことだけは救いだったと思う。
ラスト手前でチーコママとお父さんの真実に驚愕してたらラストでもっともっとビックリして大号 -
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お仕事小説、こちらは大阪の新聞社が舞台。
若き記者武井の目線で労働組合と経営側とのにらみあいが語られる。
「がんばります」では少し独りよがりで「がんばってください」だとやや無責任、ちょうどいい塩梅なのがこの「ともにがんばりましょう」であるそう。
労使協議会は労協、労使の意見交換の場で、複雑な課題は専門委員会で解決。半沢直樹ばりの会議室での関西弁が飛び交う攻防、阪神甲子園球場のライトスタンドの様相というたとえ、交渉時はエレベーターを使わない、支部長が交渉本部発着時に拍手をして送り迎えする慣例、ビラを経営側に渡すときの様子を記念撮影するなど、泥臭い交渉場面が目白押し。
若き七人の侍、要求決定、交渉 -
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小学校4年生の翔太郎は、心が女であることを自覚していた。スカートを履きたいと思ったり、同じクラスの男の子.真壁くんに一目惚れをしたり。
白水翔太郎から白水蘭として生きようとする中で、自分自身との葛藤や、人との繋がりによって、逞しく成長していく姿は見ていてとてもかっこよかった。
翔太郎の姉.恵が、翔太郎の性について1番最初に気づいて、すんなりと受け入れ、寄り添うことがなければ、翔太郎はここまで変われることはなかったと思う。
身近な人に、自分自身を丸ごと受け入れてもらえることは何にも変え難い勇気や自信に繋がっていくと思う。
もし、これから自分の周りで、性に関すること以外でも生きづらさを抱えて