塩田武士のレビュー一覧
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まったくの個人的事情から書かせて頂くと、もう10年近く前、労働組合のない会社から組合活動が真っ赤に燃え上がる会社に転職しました。身の回りの単語すべてが不可解で、オルグなんてきっと怪しげな集まりなんだろうと新人ほぼ全員でサボって怒られた、なんて事もありました。
あの頃この本に接していたら、もうちょっと上手く立ち回れたかなあ、と(笑)。労使交渉という取っつきにくい分野に果敢に手を出したエンターテイメント小説です。政治的に何か訴えるわけではなく、一方で活動の時代錯誤感を嗤うわけでもなく、ただひたすら読み物に徹する姿勢はこのジャンルではむしろ稀有と言ってよく、純粋に面白く、ためになりました。
ただ -
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盤上のアルファ / 塩田武士
「秋葉、人事っちゅうのは何で決まるか知ってるか?」
「好き嫌いや。おまえは嫌われてる。」
「この寒い中、裸1つで追い出そうっていうんですか?
僕の格好見てください。タンクトップですよ。
死んだらどうするんですか?」
「灰になるだけや。」
「しびれるわぁ」
かくして、嫌われ者の記者とタンクトップは出会うこととなった。
将棋に命を懸けた男が巻き起こす、男臭く熱い真剣勝負の物語。
「キリストとおまえの共通点ゆうたら、髭ぐらいのもんやろ」
「あと、薄着やな」
「どうでもええわ」
ゆかりある神戸の風景に
関西弁のツッコミが効いていて
どんどん物語に引き込まれました -
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ネタバレ筆者の作品は初めてであったが、人物描写が的確で、関西弁もナチュラル、文章全体のテンポもよく、他の作品も読みたいと思った。株式会社における労働組合と経営側の交渉模様を描いた作品で、実際に労使交渉に関わる仕事をしていた私にとっては、緊張感やスピード感などが非常にリアルでとてもおもしろかった。ただ、労働組合の動きの中で比較的ポピュラーな春闘やストライキではなく、その前段にあたる「交渉」というコアな部分に焦点をあてているので、なじみのない人からすると「???」という部分もあると思う。おそらくそういう人のことを思って描かれたのであろう若干の恋愛模様が、私には余計なものに思えたので★-1とした。
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『盤上のアルファ』に続き、塩田作品二作目。割りと早い段階から引き込まれたから良かった!退屈な時間は短ければ短いほどいい。主人公・矢吹明菜のキャラがとても良い。すぐ手を出し、足を出す暴力女w と、内股の世界的マエストロ・一宮拓斗、ブロッコリー別府、ニュージーランド人キオラなど個性豊かな楽団の職員、演奏者たち。特に主人公と別府の掛け合いは爆笑必須!笑いあり、涙ありで楽しかったなぁ^^ 解説者も書いておりますが、自分が知らない世界を知れるというのはホント楽しいですね。今回は楽団運営のイロハ?を知れたのは良かった。一度クラシックコンサートに行きたい!そう思えた作品でした♪
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会社員だった頃は組合のある企業に勤めたことがなく縁がなかったが、派遣社員として働き始めた会社は組合活動がそこそこ活発で、ある日ストが行われた。
朝から会議室に閉じこもる社員を尻目に、残った部長と派遣社員2人で一日中電話対応の嵐。電話の向こうの取引先に怒鳴られながら、部外者の私はどんどん心が冷え切っていった。新聞社ではないが同業界の会社だったのだが、あの裏側にはこんなにドラマチックでないにせよそれぞれの人間ドラマがあったのかな、と読み終えて少しだけ共感できる自分がいた。
関西人ノリのちょこちょこ差し込まれるツッコミが小気味よくニヤリとさせられ、最後は組合活動という未知の世界ながら登場人物の”志し -
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・厚木、横浜山手で同時に起こった児童誘拐事件。厚木を囮にし(被害者児童は保護)、山手で身代金要求を目論んだ事件は、3年後に児童が祖父母の元に帰還するという意外な結末で幕を閉じ、時効を迎える
・管理職として何となくの毎日を送っていた元記者の門田は、懇意の刑事がこの事件に掛けていた思いを知り、事件を追うことを決意。記者としての魂を取り戻していく
・取材を続ける中で、ある写実画家の名前が浮上し、そこから、少年(亮)が失踪した3年間に何があったのか、驚くべき真実が明らかになる
以下感想&メモ------
・この物語の舞台の一つとして出てくる「ホキ美術館」(写実絵画専門の世界唯一の美術館)にずっと行っ -
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『子どもを犯罪に巻き込めば、その分、社会から希望が奪われる。「ギン萬事件」の罪とは、ある一家の子どもの人生を粉々にしたことだ。』
テープに使われた3人の子供
被害者である彼らの歩んできたその後の悲しい人生
俊也と阿久津が、同時期に別々の局面から「真実」へと辿りついていく
『金がほしいわけでもなく、権力や資本主義に一矢報いるためでもなく、ただ砂上の楼閣を建てるためだけに青酸菓子をばら撒いたとでも言うのか』
記者としての阿久津の苛立ち
「事件を起こして、あなたの言う“社会”を見せて、世の中は変わったんですか?」
「あなたには正義がない」
被害者であり、巻き込まれた子ども
特に、翻訳家にな -
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ネタバレ物語としての価値というよりも、
「今のSNS社会の風潮って、どうなんですか」
「匿名性に隠れた、責任を持たない加害者/殺害者になっていませんか」
という、過渡期ならではの空気感を痛烈に批判する強いメッセージを感じた。
冒頭に提示される「宣戦布告」。
これは作中の犯人・瀬尾によるブログの文章だが、
著者、あるいは登場人物が現実社会に対して投げ込んだ、“意見の火炎瓶”のようにも見えた。
芸能人への誹謗中傷、匿名性の陰に隠れた暴言、
承認欲求や優越感を満たすために人を叩く愚かさ。
さらに、過激な意見や陰謀論的見解を、
単純な真実として盲目的に信じてしまう構造。
そうしたSNSにおける現代人の傾向