塩田武士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
父の遺品から見つけたカセットテープ。 そこに入っていたのは、31年前の未解決事件で脅迫に使われた自分の声だった。
導入はめちゃくちゃ良かった。 ただ、そこからが長かった。
元になったグリコ・森永事件についてほとんど知識がなかったことも大きいと思う。 俊也と阿久津がそれぞれ事件を追っていく中で、次々と人名や過去の出来事が出てくるものの、「この人誰だっけ」「どこと繋がってたっけ」となることもしばしば。 調べれば調べるほど整理されるというより、しばらくは文字を追っているだけの読書になってしまった。
やがて犯人グループや事件の全体像が見えてきて、「やっとここまで来たか」と思う一方、「そんな理由でそこまで大規模な事件を?」という思いも。
それでもラスト、生島聡一郎が語る事件後の壮絶な人生には考えるものがあった。
犯罪は解決しようが時効になろうが、それで終わりではない。 犯人にも家族がいて、何も知らずに利用された子供にも、その後何十年と続く人生がある。 俊也、望、聡一郎。同じように犯罪に「声」を使われた子供でも、その後の人生はあまりにも違った。
たぶんそこがこの作品で一番残したかったものなんだろうと思う。
ただ、いかんせん長い。 「次はどうなる?」とページをめくりたくなるより、情報を処理する疲れのほうが勝ってしまった。
自分が生まれる前に実際にあった、グリコ・森永事件。 この本を読まなければ詳しく知ろうとも思わなかっただろうし、そういう意味では読んで良かった。
まぁでも史実としてはね、残しとかなね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ別作品の『存在のすべてを』があまりに感動してしまったので、新作は読まねば!と思っており、やっと読むことができた作品。
インターネットに溢れる匿名の誹謗中傷や、承認欲求から他者を貶める行為など、現代の問題を題材にした群像劇。主人公の弁護士が、何も語らない被告人・瀬尾の思いを理解するために関係者たちから話を聞き、事件の真相を追いかけていく物語だ。
あまりにもリアルで、実際に起きた事件をモチーフにしているのかと思うほど現実味があった。事件のきっかけとなった二人の芸能人の背景もかなり事細かに描かれていて、作り込みが素晴らしい。
ただ、説明が少し長すぎるように感じた。判決後のエピローグで瀬尾が自身の思いをかなり長尺で語ってしまうところは、ずっと語らずに読み手に主人公を通して考えさせていたのに、そこで余白が埋まってしまったのが勿体なかった。もっと余韻を残したまま終わって、浸らせてほしかった。 -
Posted by ブクログ
面白かったです。元々映画を見たことがあって、面白かったので原作も読もうと思って買いました。読むまでに随分時間がかかってしまったのですが、そのおかげでうろ覚えの部分が多くて逆に先入観なしで読むことができました!笑
内容も文体も割と硬めな印象でしたが、意外にもするする読めてしまいました。当時を生きていない私でも知ってる事件が元になっているからでしょうか、緊迫感や興奮が直に伝わってくる感覚が面白かったです。私はあまり元の事件の概要を知らなかったのですが、「キツネ目の男」の似顔絵くらいは見たことがあります。彼の存在が都市伝説のようなものではなく生身の人間だということを実感できる描写に、少し恐くもなりました。
被害者でもあり、加害者の親族でもあるという立場。複雑な心境がとても細かく描かれていて、とても感情移入しやすかったです。
また塩田さんの作品読もうと思います。 -
Posted by ブクログ
塩田武士さんの短編集は珍しい!と思って手にとった一冊。以下、収録4作品と簡単なレビュー
「小さい上司」
社会に出ればこんな人おるよなぁ。
けど誰しも会社での姿が、プライベートと一致するとは限らない。知らない一面にも配慮するのが、大人のたしなみなのかもしれない。
「鈍い火」
4つの中でミステリー色が高めの作品。
拗らせた男の執念というのか、事件の真相にゾクリとさせられた。
「仮縫い」
文句なしに面白くてラストは心温まる。高一男子の頭の中を覗いているようで初々しくて可愛らしい。
そしてタイトルセンスが抜群!
「起点」
斬新な視点にビックリ!こんな時代がくるのか?
内容よりも塩田さんの未来予測?が気になってしまった。
どの作品も、独立した作品でテイストが全く異なり、飽きずに楽しめる作品。
私は特に「仮縫い」が好みだった。
ただ、展開は面白かったが、長編でじっくり読ませる塩田さんの割に、構成が少しもたついてる印象を受けた。
塩田武士さん初読みには、出来れば長編からオススメしたい。