塩田武士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
サイン本に釣られて購入しただけなのに。ツボでした。
芸人の話もボクシングの話も今やあちこちに転がっていて、ちっとも珍しくはありません。冒頭では『火花』や『笑う招き猫』を思い出し、二人組の便利屋が登場すると『まほろ駅前多田便利軒』、そしてその後は当然『ボックス!』を思い出す。下町の雰囲気に『泣いたらアカンで通天閣』が頭をよぎり、ところどころ『戸村飯店 青春100連発』まで連想する。それなのに、寄せ集め感はゼロ。ちょっとそこいらにはおらんぐらい素直な少年の夢に大人が乗っかりまくって、みんなが再び夢を追いかける。読み終えたときには彼らと一緒に3年間を過ごした気持ちに。
読み手を置いてけぼりにしな -
Posted by ブクログ
ネタバレ奏と天童の関係がよかった。
お互いの存在を支えとして、思い合っている感じは理想やなあと思った。
奏が自分のことが書かれた天童のライブのパンフレットを読んで、
過去のことを思い出し、思考し、「天童君に出会えてよかった」と思うに
至るところがよかった。
だから、そのあとの「独白」の中の「ほんでパンフも読んでほしかった」が
辛かった。
SNSの誹謗中傷については、佐伯デンタルオフィスの佐伯の
「何で知らない人のことをここまで悪しざまに言ったの?」が、ほんとそれと思った。
赤の他人に面と向かっては言えないことを匿名かつ遠くからなら言えてしまう。怖い。
ただ佐伯は最低中の最低男だったのだけれど。この世界 -
Posted by ブクログ
久しぶりの塩田武士さん!
まぁ、単行本以外は、読んでるけど〜
二児同時誘拐!
結構、身代金渡すまでのシーンは、ワクワク!ドキドキ!
これは、この珍しい事件を追っていくのかと思えばさにあらず!
未解決になったこと事件を時効が過ぎて、30年という月日を超えて、動き出す。
幸運にも、この事件は、誘拐された子供たちは、帰って来てる(^_^)v
でも、一人は、3年後に帰って来る。
元新聞記者さんやから、真実を追うシーンには、現実感がある。
コツコツ、コツコツとジグソーパズルのように取材でえた事実を埋めていく…
途方もない時間をかけながら…
事件自体は、時効になってるけど、当時に関わった刑事、記者に -
Posted by ブクログ
罵詈雑言やデマが蔓延しているネットの醜悪さを描き、そしてその言葉の矛先に生身の人間がいるのだということを作品を通して読者に突きつけるような話でした。
個人がネットであらゆる情報を受け取り、自らも発信することが当たり前になっている社会に向けて、人間の理性や倫理観を今一度問い直したい。一石を投じたいという、そういう真っ当なメッセージをびしばし感じます。誹謗中傷やデマが絶えず流れてそれに絡め取られる人が多い今の世の中だからこそ、幅広く読まれてほしい作品。
また、自分も情報をただぼんやりと受け取っていることがかなり多いので、そういう時に意識的にブレーキを踏めるようになっていきたいと、この本を読みながら -
Posted by ブクログ
京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった―。1984〜85年に起こった昭和史に残る、グリコ森永事件を題材にした作品。 舞台は関西を中心に展開される。 新聞記者がグリコ森永事件を取材する話と、自身が加害者の息子である人物の視点から話が進んでいく。もともと身代金より株で儲けるつもりだったという話は、なかなかおもしろか
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Posted by ブクログ
誹謗中傷を浴びせるネット民たち83名から、その匿名をはぎ取り実名を公表し公開処刑に処す。冒頭のこのスリリング展開のまま「ネットの匿名性」「人を裁く権利」「正義という暴力」などのテーマを掘り下げていって欲しかったのが正直なところ。話は公開処刑を行った人物と、彼の担当弁護士、彼が犯行に至った直接の引き金となったネット暴力の犠牲者であるお笑い芸人、アーティストを軸に彼ら彼女らの物語へシフトしていってしまう。それはそれで面白かったのだが、なにせ冒頭が魅力的過ぎた。この匿名性をいいことに安全地帯から石を投げつけ、きわめて自己満足的な正義の行使、あるいは自分の惨めな境遇を慰めるための虐め、というのは「汝ら
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Posted by ブクログ
「踊りつかれて」(塩田武士)を読んだ。
これはね、SNSというツールの恐ろしさとヒトの弱さ醜さを描き切った、今のこの世界に警鐘を鳴らす作品だね。
ではあるけれど、ヒトの強さと優しさも描き切った作品として、とても美しいラストシーンとともに私の記憶に残るだろうな。
少しあざとさというか計算高さというか、おもねるところが見え隠れする気もするけれど、とにかく惹き込まれてしまうのは確かである。
あー面白かった。
ちょっと長いけど印象的な文章を抜粋。
『世の中には、頭で理解できることは数多くある。しかし、理解は角を落として丸くしない限り、心へは転がっていかない。その心に行き着いた考えや感情の向こ