塩田武士のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
非常に耳が痛い。でも思っていることを代弁してくれたような清々しさもある。
「いや、小説内の出来事で、ヴァーチャル・エステイトなどという団体は現実には起こり得ないよ」などと言いそうな人たちに、言いたい。起こり得なくとも、実際に自分たちが立っている場所は、小説の中の種々の会社と同じだぞ、と。
「自由と無料をベースにした難敵を相手にしているという自覚がない」。まさにその通りで、刺さった。
「記者は現場やで」という言葉はまさにその通りで、でもだからこそ、ホンモノの記者がちゃんと存在意義を果たして活躍できる場が必要。誰もが発信できる玉石混交の情報時代だからこそ、過去の栄光に縋らず、おごらず、変わっていか -
-
Posted by ブクログ
久しぶりの塩田作品。
新聞記者("元"を含む)を主人公にした短編集ですが、それぞれの登場人物が巧みにリンクしています。
誤報、黙殺、虚報-。
正確さの求められる新聞記事による誤りによって人生が変わっていく人達。
自らが発信した情報の重さに気付く記者達。
彼らが複雑に絡まりあった後に見えてくる恐ろしい存在とは。
世に溢れる様々な情報をどう受け止め、どう考えるべきかというテーマに大変興味があるので、この作品もとても面白かったです。
マスメディアの在りかた、私たちがニュースに求めるもの、発信された情報の扱い方。
現代社会の課題の1つをテーマに、レベルの高い短編集に仕上げている -
購入済み
唯一世界的競争力を持っていると
★★★★★
冒頭部分が異世界転生ラノベ風の物語だったので、びっくりしたが読み進めていったら「ああそうだったのか」と納得した。モノづくりがどんどんだめになってゆく日本で唯一世界的競争力を持っているというアニメづくりが、このような過酷な労働を主なっている人達に支えられている ということを改めて感じた。このままでは日本に残された唯一のものづくりであるアニメもそう遠くない将来だめになってしまいそうな気がする。本作はそのような問題提起をするのに、とても適した作品である。 -
-
Posted by ブクログ
アニメ製作業界の抱える問題と、製作に人生を懸ける人たちの情熱と苦悩をリアルに描くお仕事小説。
◇
アニメ製作プロデューサー・渡瀬智哉は、念願だったSF小説『アルカディアの翼』のテレビアニメ化に着手する決心をした。まず3年かけて原作小説『アルカディアの翼』の作者を説得し、テレビアニメ製作委員会を組織するところまでこぎつけた
ところが制作会社の買収問題や、原作者の希望で主演予定だった声優のスキャンダルが発覚し、計画は頓挫してしまう。
そして渡瀬の盟友の文月の方も出資者の撤退や制作スタジオの倒産で打つ手がなくなり、失意のうちに郷里に帰ってしまった。
八方塞がりに見えた渡 -
Posted by ブクログ
「氷の仮面」塩田武士 著
0.著書より
「純白のウエディングドレスのように、
人間の心が一色に染まることはほとんどない。」
「女になるのが、わたしの人生の前半なら、
後半は人として何を残すのか?考えなああかんと思って」
1.購読動機
「罪の声」で惚れてしまったため。
※映画は視聴なし。文字と行間の世界です。
2.「氷の仮面」の装丁
性同一障害で悩む1人の青年が、成人して女性として生きるまでの物語です。
読み終えて「装丁」を眺めて。
ひとりの女性が太陽を向いてたっています。
こちらには、背中が見えているだけです。
私には、
「わたしは、わたしの全てを世界に対して見せる
ことより