塩田武士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ結構長いのに面白すぎて一晩で読みきった。
その面白さの大きな要因は、大泉洋をあてがきして作られた「速水」というキャラ。どんな困難な状況も機転を利かして解決していく姿は、感心するだけでなく勉強になった。
ちなみに、私はこの本がきっかけで“あてがき”を知った。登場人物がイメージしやすく楽しいのでこういう小説がもっとあるといいのに。
出版業界の話も新鮮で楽しかった。私は電子より完全に書籍派なので、将来紙に生き残って貰うため、売り上げに貢献しようと決心した。
ただ、最後のオチの部分のタイトル回収は、あまり響かなかった。速水はただ会社に裏切られ、行動を変えただけなので裏切りと呼べるほどには感じない。ただ、速水はあんなに書籍にこだわっていたのに、電子書籍を生業にしていたことは複雑な気持ちになった。
〈映画をみて〉
大泉洋が演じるかっこいい速水が見たくて、映画を観たら、小説と全く違う内容だったので途中でやめてしまった。出版業界と数人の登場人物の名前以外何もかもが違う・・・映画自体は口コミサイトなどでなかなか評価が高い。だからといって、あてがきした小説の内容をここまで変えて作者は怒らなかったのだろうか?出版業界について書いた本作に対して皮肉が効きすぎていると思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
好きな作家の塩田さんの作品。
なんで、関西弁のボケ&ツッコミは健在!
今回のテーマは、
性同一性障害
めっちゃ重そう…
今でこそ、市民権を得て来ている感じはするけど、やはり肩身の狭い思いで生きんとあかんねんな。
確かに、カラダとココロが反対なんやからしんどいんやろうな…
主人公は、カラダは、男性で、ココロは、女性。小さい頃から、気付いてるけど隠して生きる。
そのうち隠しきれなくなるにしても…
でも、周りが良い人多くて良かった〜
肉親にしても
幼馴染にしても
好きだった彼にしても
想いは遂げれなかったかもしれんけど、分かってはくれてるし。
最後に、分かった真実に…涙(T . T)
ずっと守られていたんやな…
辛さが分かってただけに、直接には違う態度にはなってだけど…
一度は、そういうショー(ドラッグクイーンというんかな?)に行ってみたいな!
トークも面白いみたいやし。ナジャさんを連想。 -
Posted by ブクログ
塩田武士さんの作品は今回が初読み。
医学用語でいうところの性同一性障害を扱っており「体は男性だけれど心が女性」の翔太郎の成長する過程を描いた物語。
小学校4年生で自分の性に対する違和感をはっきりと認識し始めてからの日々の苦悩や葛藤を、決して誰にも相談出来ず、悩み苦しむ様子が切なくて胸に迫って来た。
同級生の真壁くんに対する恋心、男友達と自分とのギャップや、中性的な外見からクラスで揶揄われいじめの対象にされる辛さが、自分の経験と照らし合わせても、翔太郎が性に対して抱えている悩みの分だけ、何倍にも繊細で脆く感じた。
家出して蘭子として生きていく過程で、様々な出会いを通じて成長していくのだが、この成長過程が悲しい程に痛々しい。世間の非難の目や、スタートラインにすら立てない恋愛、性を隠して社会で生きていく厳しさがひしひしと伝わってきて苦しくて泣けてしまった。
そんな中でも救いはあるー
翔太郎の悩みに気付き理解してくれた姉の恵。
翔太郎の悩みを初めて受け入れてくれたヘルス嬢の茜。
蘭子に生きる道標を教えてくれたチーコママこと千里子。
辛い時いつもその存在に励まされた真壁くん。
地元の幼馴染である祥三に健二。
家出した後も決して我が子を見捨てなかった両親。
ー蘭子は決して独りぼっちではなかったのだと気づく。
そして24年後の春に明かされる優しくて甘美な秘密が、たまらなく愛おしい。鳥肌が立ち涙が溢れた。
いつも氷の仮面をして本心を隠し、ただずっと女の子になりたかった蘭子こと翔太郎。
24年後に明かされた秘密を足しても全然満たされない位、蘭子の人生は波乱に満ちているし、今後もそれは変わらないのだろうけど、それでも氷の仮面は人の温かさに触れて、溶けることは出来るのだと思う。
欲を言えば、もう少し家族…とくに父親と蘭子の親子関係や父親にとっての蘭子の存在を深掘りして描いて欲しかった。そこだけ消化不良だが、希望の光が見えるラストであったことが何よりの救いだった。
本作は、性の多様性に当事者目線で触れることが出来て、とても新鮮な作品だった。現実の世界にも、同じ様に悩んで生きている人はたくさんいるし、悩み苦しんで本当の姿をひた隠しにしている人も大勢いるだろう。法律が新設されたり、社会の仕組みが少し変わっても、人の考えが直ぐに変わる訳ではないのだから。
戸籍上の性は染色体による性の分化で決まる。
でも成長の過程で起こるホルモンの分泌によって、更にその性差割合が変化するのだから、性の多様性があって当然だろう。
完全な男性、完全な女性など存在しないのかもしれないと私は思っている。
本作を通じて、人との違いを受け入れて人を思いやることが出来る人間でありたいと改めて思った。
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Posted by ブクログ
ネタバレすごくすごく良かった!!!
いくつか塩田作品を読んできたけど最初なかなか入り込めなくて中盤過ぎからやっと面白くなるってパターンが多かったからあまり期待してなかったんだけど本作は最初からぐいぐい惹き込まれた。
女の心を持つ翔太郎の苦しみや葛藤、真壁くんへの恋心、家を出てセカンド・サイトで働き、いろいろな出来事を経て蘭になるまでの壮絶な人生に何度も胸が苦しくなった。
茜やチーコママ、セカンド・サイトの仲間たち、小中時代の友達…辛く悲しい恋愛や孤独もあったけど、周りの人に恵まれていたことだけは救いだったと思う。
ラスト手前でチーコママとお父さんの真実に驚愕してたらラストでもっともっとビックリして大号泣…!
プロローグの写真店に来た男性、ホワイトデーの日に物陰から見ていた人物がずーっと引っかかってはいたけどまさかまさかでした!!!
しかも二人とも初恋とファーストキスだよ!エモすぎだよ!
蘭ちゃんが報われるラストで本当に良かった。
塩田作品、今後も追って行きたいと思います。 -
Posted by ブクログ
お仕事小説、こちらは大阪の新聞社が舞台。
若き記者武井の目線で労働組合と経営側とのにらみあいが語られる。
「がんばります」では少し独りよがりで「がんばってください」だとやや無責任、ちょうどいい塩梅なのがこの「ともにがんばりましょう」であるそう。
労使協議会は労協、労使の意見交換の場で、複雑な課題は専門委員会で解決。半沢直樹ばりの会議室での関西弁が飛び交う攻防、阪神甲子園球場のライトスタンドの様相というたとえ、交渉時はエレベーターを使わない、支部長が交渉本部発着時に拍手をして送り迎えする慣例、ビラを経営側に渡すときの様子を記念撮影するなど、泥臭い交渉場面が目白押し。
若き七人の侍、要求決定、交渉本部設置、闘争本部設置、祭りのあと、という各章のネーミングもドラマになりそうな熱気が帯びる。
最後のハッピーエンドは猫のニャー吾郎の写真が花を添える。 -
Posted by ブクログ
小学校4年生の翔太郎は、心が女であることを自覚していた。スカートを履きたいと思ったり、同じクラスの男の子.真壁くんに一目惚れをしたり。
白水翔太郎から白水蘭として生きようとする中で、自分自身との葛藤や、人との繋がりによって、逞しく成長していく姿は見ていてとてもかっこよかった。
翔太郎の姉.恵が、翔太郎の性について1番最初に気づいて、すんなりと受け入れ、寄り添うことがなければ、翔太郎はここまで変われることはなかったと思う。
身近な人に、自分自身を丸ごと受け入れてもらえることは何にも変え難い勇気や自信に繋がっていくと思う。
もし、これから自分の周りで、性に関すること以外でも生きづらさを抱えている人と出会った時、丸ごと受け入れられるような恵のような広い心を持っていたいと思った。 -
Posted by ブクログ
非常に耳が痛い。でも思っていることを代弁してくれたような清々しさもある。
「いや、小説内の出来事で、ヴァーチャル・エステイトなどという団体は現実には起こり得ないよ」などと言いそうな人たちに、言いたい。起こり得なくとも、実際に自分たちが立っている場所は、小説の中の種々の会社と同じだぞ、と。
「自由と無料をベースにした難敵を相手にしているという自覚がない」。まさにその通りで、刺さった。
「記者は現場やで」という言葉はまさにその通りで、でもだからこそ、ホンモノの記者がちゃんと存在意義を果たして活躍できる場が必要。誰もが発信できる玉石混交の情報時代だからこそ、過去の栄光に縋らず、おごらず、変わっていかないといけない。
とても胸に刺さりましたーーー。
風刺的でありながら、レガシーメディアのケツを叩くような気概も感じました。 -
Posted by ブクログ
久しぶりの塩田作品。
新聞記者("元"を含む)を主人公にした短編集ですが、それぞれの登場人物が巧みにリンクしています。
誤報、黙殺、虚報-。
正確さの求められる新聞記事による誤りによって人生が変わっていく人達。
自らが発信した情報の重さに気付く記者達。
彼らが複雑に絡まりあった後に見えてくる恐ろしい存在とは。
世に溢れる様々な情報をどう受け止め、どう考えるべきかというテーマに大変興味があるので、この作品もとても面白かったです。
マスメディアの在りかた、私たちがニュースに求めるもの、発信された情報の扱い方。
現代社会の課題の1つをテーマに、レベルの高い短編集に仕上げていると思います。
レビューを書くのがとても難しいのは私なりの誉め言葉。
とにかく一読の価値あり。
目にした情報を真に受けることなかれ。
今一度、調べて考えなくてはいけないのだと痛感します。
2020年25冊目。