塩田武士のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ亮と貴彦・優美の別れは、泣いてしまった。
特に優美が亮と生きる中で、血の繋がりとか関係なく、大切に愛情深く育てる姿が描かれていたからこそ、つらかった。
結局、優美と貴彦は、亮と別れたあとは辛い日々を送っていたようで。優美はまだ最後に亮といることがわかって嬉しかったけど、貴彦に関しては行方知らず。
かといって、亮を数年間育てたことが過ちだったかというときっとそんなことはない。
亮はあの二人が危険を冒してでも大切に育ててくれたことを糧に、画家としても人間としても素晴らしいひととなった。
いつかまた、貴彦も含めて3人で暮らせる日を願わずにはいられない。
いくつか疑問に思ってること。
亮の母の瞳は、実は亮を愛しているのに、うまく向き合うことができず、亮をより良い環境に送り込むために誘拐事件を企てた?
手紙を大事に持っているあたりが謎だった。
そして雅彦たちにあんな壮大な誘拐事件を考えられる力量があったのか?ここが少し腑に落ちない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ犯人が捕まらないまま時効となった、同時誘拐事件の謎を追う物語。
空白の3年の真実を知った時、切なすぎて涙が止まりませんでした。
「、、、わざわざいったり触ったりしなくても、なんでも自分の思い通りになると勘違いする人が増えると思うんだ。だからこそ『存在』が大事なんだ。世界から『存在』が失われていくとき、必ず写実の絵が求められる。それは絵の話だけじゃなくて、考え方、生き方の問題だから」
色んな情報が溢れる時代になって、自分が見た事実、肌で感じたこと、一次情報の大切さが込められた言葉に感じました。。色んな情報がある中で本質、真実を見極められる力。「存在」を見抜く力が大切なんだと、真実を突き詰めた門田の様子や新聞の情報などではなく直接生みの親を見に行って亮を育てると決心した野本からも感じました。
読んでよかったです。
-
Posted by ブクログ
最後に驚き。イバラの道を辿ってきた翔太郎の、でもその裏には親の愛が隠されていた。自分の禁断の淡い恋心が叶いはしないけれども報われた。終わり方がとても好き。
ネトフリのthis is AIを思い出させた。
自分の家族に性同一性障害に悩む兄弟や親がいたら、自分はすんなり受け入れてあげられるかな…と考たし、自分がもしそうだったらかつての友人にカミングアウトとかできる勇気があるのかな…とも考えたけど、どちらも正直躊躇が先になるなと思った。
父が恋人ならいいのに、息子を受け入れられなかった気持ちもよく分かった。
この本の登場人物はみんな温かい。その人をその人として受け入れることができる、そんな風になりたい。
今命があるのは姉のおかげ
自分らしくは千里子ママのおかげ
自分を貫けているのは周りの友人のおかげ
初恋を引きずらずに生きているのは真壁くんのおかげ
人は誰しも誰かの人生と交錯して生きているし、
周りの人のおかげで今日も生きてる
「二人の父の娘でよかった。申し訳ない」
「俺の…初恋の子なんや」
-
Posted by ブクログ
『罪の声』『存在のすべてを』などの社会派ミステリーで有名な塩田さんの初期に書かれた短篇をまとめた短編集。
真面目な社会派ミステリーばかり書いていたのかなと思っていた塩田さんが、初期には『小さい上司』や『仮縫い』みたいなユーモアのある作品も書いていたのかとビックリ。
特に『仮縫い』なんかは、私の大好きなバカな高校生男子がものの見事に描かれていながらも、感動してしまうし、『鈍い火』なんかは、最近の作品の原点となるような感じがするし、『起点』は、近い将来、こうなるかもなと思えてしまう。
講談社の「STORY IN POCKET」シリーズは、200ページ足らずなので、ちょっとした出先でも読めるし、何より550円という安さでかなりお得。実家には東野圭吾さんの『小さな故意の物語』もあるので、読まなくては。 -
Posted by ブクログ
塩田さんに書く物語は、人生の難しさと、ダークな側面、そして希望だ。女性を知らない中学生の男子たちがとるクレイジーな行動、その時期特有の高揚感と期待感。こういうところが塩田さんらしい。それでいて、カツアゲされた男生徒の悩みもまた、親には言えないダークなものを含んでいる。起点になるのは、先生の甲子園に連れて行って試合を見ている途中に、無造作に見える所作で取られてしまった金額をちょっと越す金額の商品券を渡すシーン。その子は泣いた。
ただの見晴らしのいい道路で子供が轢き逃げされた裁判、取材する主人公が違和感を覚える。ほぼ無罪を勝ち取った幸せを壊す男、そして壊された男。その間には、1人の共通の女性がいた。怒りと恨みから幸せを壊し、そしてその笑みを見たことで殺意を確固たるものにした子供の親。最後止めたのは、何の関係もない取材する新聞社の男。殺したらダメだ、人生はまだあるんだ続いているんだ。はやまっちゃいけない。
人生で一番大切なのは、続けることだ。30年を超えて想いを叶えた小学校の同窓の結婚式で、テーラーの花嫁の父親が「服でいうたら仮縫いですが、これから立派な服に仕立てられるよう、ご支援ください。思い残すことはありません。本日が我が人生最良の日です。」と締め括った。素敵だなと思った。そういうふうに人生最良の日を迎えられた人が何人いるのかわからないが、そうありたいと思った。人生で一番大事なんは続けることや。
最後の起点、は秀逸だ。最も短いが、最もインパクトがある。罪の声の作家に取材について尋ねる息子が、無駄な出張や、取材して人の話を聞いて聞いて聞きまくれという時代遅れの感性に触れるシーンだ。これは、ビジネスにも言える。取材して、情報を足で集める時代から、AIが分析して仮説まで立ててくれる時代。それでも僕は人を信じている。だからこそ、ビジネスが好きなんだろうと思う。生き物だから、そして自分が変えられるから、そして人と一緒に作れるから。こうした感性を、起点、は示し、感じさせてくれる。それぞれの起点、後になってみてわかる、意図せず人の人生が変わる瞬間。その奇跡を筆者は大事に、大事に、言葉にして紡いでいるんだろうと思う。人生もそうありたい。 -
Posted by ブクログ
私はグリコ森永事件のことはよく知らなかったけど、未解決事件と聞くとわくわくしてしまう。実は…なんて話もあると、都市伝説的な面白さで、つい読み進めてしまう。にやついている。読後、自分の浅はかさに気付いて、嫌になった。
加害者と被害者、それぞれに家族がいて、みんなが未解決事件だと面白がっている間にも現実を生きている人がいる。罪を犯した訳ではなくともどんな未来も描けなくなっている人もいる。
俊哉パートの方にぐいっと引き込まれるのに対して、阿久津パートは関係なさそうなところが多かったり、後半ものすごいスピードで事件の内容が分かったり犯人が独白するもんだから、なんだかご都合主義的になってきたなと思ったけども、全部意味があったし、あぁ大事なのはここじゃなかったんだと気付く。ラストは泣けて泣けてたまらなかった。
塩田さんのインタビューまで読んだけど、大学生のときに思いついてでも今の自分では書けないから社会勉強のために新聞記者になったと言われていて、ひっくり返った。いやー…すごいものを読ませていただいたんだなと改めて思った。