塩田武士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ重要な登場人物が多いことに加え、視点も何度か変わるので途中でリタイアしそうになった。が、この本を読み終えるために3連休を費やそうという意思があったので、なんとか読み終えた。(日が経つと前後の流れを忘れてしまうので、まとまった時間が取れる時に読んで欲しい…)
タイトルの「存在のすべてを」の意味を象徴するのが野本(弟)と亮を魅了した写実画だと感じた。
景色を捉えるのは写真と同じだが、写実画はユニークな画家のレンズを透す。そして捉えたものを描き起こす際に加えられた画家の信念や感情が受け手の心を動かす。
目に見えるものや、情報として世に出回っているものが正しさや真実ではない。裏には沢山の想いと -
Posted by ブクログ
私は学生だった時、塩田武士の小説が苦手というか、上手に読むことができませんでした。
なぜならば、地の文が多いと感じたからです。
描写や独白が長くて、読むのが疲れてしまうからです。(個人の感想ですよ?)
社会人になった今、この作者の本当の良さというか、地の文のありがたみを理解するに至りました。
また、塩田武士は神戸新聞社で取材の仕事をしてたそう。なるほど、、!
取材して追求していく感じが、伝わってきて、本読んでるだけなのに一緒に疲れてました。
登場人物の心理描写がとにかく良くて、特に、「8章逃亡」から先の答え合わせは感動を通り越して、なんかもうここに書くのもどうやったらいいかのか。
カフェの二階 -
Posted by ブクログ
冒頭の「宣戦布告」で、殴られたような衝撃を受けた。
83人の話しが、この本に全部書かれるのかと、ある種の恐怖を感じた。
「他人の不幸は蜜の味」
というように、ひとは自分より不幸な人を見ると、自分はまだ幸せだという安心感に浸ると思う。
自分自身が思うように生きてない人ほど、嫉妬と羨望で、知らず知らずに成功した人の粗探しをするだろう。
それが自分の身近な人であれば、なおさら強く思うかもしれない。
アイドル全盛期の時代は、週刊誌やメディアが、売り上げや視聴率の為になんでもありだった気がする。
でも現在は、一人の人間の一言で、ネットを介して一気に広がる。
ネットは便利だが、使い方で、凶器になる。
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Posted by ブクログ
圧巻。このひと言に尽きる壮大で重厚な物語だった。
誘拐、恋愛、絵画。それぞれが追いかける物語の先にある愛情のかたちとは。
確かに犯罪は犯罪であるし、どんな事情があったとしても美化されるべきではないと思う。けれど理解されるされないなど関係なく、それぞれがそれぞれの事情を抱えて「存在」していることに気づかされる。
そこに存在するかのように感じられる登場人物たちと、読みながら次々と頭に浮かんでくる景色は、これがフィクションであることを忘れさせるほど。
登場人物が多く、視点や時間軸が行ったり来たりする構成で決して簡単に読める作品ではなかったけど、最後まで読んで良かったと心から思う。
前半何度リタ -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった!
ミステリーではなく、過去に起きた事件を調べていく形式というのが新鮮に感じられた。
「存在のすべてを」に繋がる言葉は何なのかなと思いながら読んでいたけど、「存在のすべてを描く」ということを野本が亮に教えていたんだなと。
そして、きっと野本や亮の写実画は何層にも筆が重ねられているのだろうけど、「存在のすべてを」というこの作品自体が、ある出来事を内包した様々な層をひとつづつ捲って明らかにして書かれたものであることと重なって、それがまたこの作品の厚みになっていると感じた。
読後に重厚感が残る作品ってなかなかない。
素晴らしい作者だと思った。 -
Posted by ブクログ
「虚実は皮膜の間にあり」という言葉がこだまする。3人は紛れもなく家族だった。たった3年間の薄氷の上の幸せ。しかしそれは確かに「実在」したのだ。
幼い亮が自ら求めた安息の日々。自分の才能を見出し育ててくれる「両親」。ただ純粋に絵を描き、芸術家でありたいだけなのに、心から己の絵を理解してくれるものと出会いたいだけなのに、それが叶わず忸怩たる思いを過ごしていた貴彦のもとにやってきた亮。写実絵画を介して心通わせていく2人の日々が、意図せずして訪れた影と不安の中で紡がれていくからこそせつなく尊い。そして2人を温かく包み込む優美。
終わりを告げた後の30年間を思うと心が痛い。しかし、
ジョージウィンストン -
Posted by ブクログ
圧巻…
この言葉以上にこの作品に見合う言葉が見つからない。
素晴らしかった。
30年前に起きた2児同時誘拐の真実を新聞記者・門田が追う中、その関係者の目線からも物語進んでいく。
すでに時効が成立している事件の糸口は『絵』である。
事件被害者の少年が写実画家として話題になったことから、事件は小さいながら進展していく。
そしてその先に、とある写実画家の存在が浮かび上がる。
あぁ、何を語ってもネタバレになってしまいそうで怖い。でもこれらを語ったところで、事件の真実の予想など全ては出来るまい。
それほど深く重厚なストーリーなのである。
それに何度涙を流したことか。
犯罪の果てに得 -
Posted by ブクログ
ミステリー小説だと思って読み始めると、どうしても登場人物の名前を覚えなきゃという気になってしまいますが、本書は不要でした。序盤から登場人物が多くて萎えそうでしたが、刑事の名前は重要じゃありません。事件の流れがわかれば大丈夫な構成になっています。
塩田さんの作品は、描写が細かく情景が思い浮かべやすいのですが、自分が疎い分野の美術にまつわる話ということもあって、知らない世界を知れ、より厚みを感じました。圧巻!と書かれている方がいらっしゃいましたが、そのとおり。見事でした。
いつもは通勤読書ですが、読書時間をとって読めたのが幸いでした。出てくる土地や美術館にも行ってみたいです。
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Posted by ブクログ
また最高の作品に出会ってしまった。この小説を書いた作者の熱量に何度も唸った。入念な取材と下調べに捧げた時間は途方もないものだったはず。
こんなに知識欲を満たしながら愛や倫理観も考えられるところが贅沢だった。
この小説は主人公が複数人いる。そしてほとんどが魅力的だ。特に私は門田と貴彦が好きで、不器用だけど仕事に真面目なところに惹かれる。
ネットの普及で実態が不明確なものが取り上げられる時代に、事実を追い求める門田と写実を作品にしようとする貴彦。最終的にたどり着いた両者の落とし所が綺麗だった。
序盤は神奈川県の地名や警察の専門用語が頻繁に使われて難解に感じる部分もあったが、絶対に最後まで読んで