前半がやや長くて退屈だけど、最後にきちんと回収されるので安心して読み進めてほしい
なんとなく読める展開ではあるけれど、それでもぐっとくるものがあった
個人的には流浪の月を彷彿とさせる内容だった
愛や暴力の形は人それぞれで、人の幸せと悲しみは本人の口から語られるまで絶対に決めつけてはいけないのよ
...続きを読む✏誤解を恐れずに言えば、私は芸術とは「解釈」だと思っている。
✏この世の真理について、芸術家の心身を通して濾過された原液。
✏里穂は亮が写実画の世界へと突き進む必然性をおぼろげに感じ取った。他者のさじ加減で翻弄される世の中で、本当に信じられるものとは何か。目の前の実在こそが唯一、根を張って彼を見つめているのではないか。
✏出会ったほとんどの人は会わなければ自然と忘れていく。だが、特別な人というのは、空白が広がるほどに神秘性を増す。
✏「この雪景色ってさ、何もしてないのにきれいだろ?美しいものはありのままできれいなんだよ。美しく見せようと意識すると、もう何でもなくなっちゃう」
✏酒井はブランデーグラスを片手に明るく話し「苦労のない人生は振り返り甲斐がない」と言い添えた
✏「いっぱい本を読んで、いっぱい人の話を聴いて言葉を知ってほしい。絵を描くときは『何が描きたいか』『なぜ描きたいか』をできるだけ言葉にしなきゃいけない。キャンバスに向かう前から勝負は始まってるから」
✏「これから世の中がもっと便利になって、楽ちんになる。そうすると、わざわざ行ったり触ったりしなくても、何でも自分の思い通りになると勘違いする人が増えると思うんだ。だからこそ『存在』が大事なんだ。世界から『存在』が失われていくとき、必ず写実の絵が求められる。それは絵の話だけじゃなくて、考え方、生き方の問題だから」
✏「油絵って不思議なんですけど、絵の具の層に土地の空気が入ってるんです。だからこの絵を描いてるときは、僕は父と会ってるんです」