あらすじ
80万部突破『罪の声』を超える圧巻のリアリズム小説!
「聞きたい、彼女の声を」 「知られてはいけない、あの罪を」
ライターの大路亨は、ガンを患う元新聞記者の父から、
辻珠緒という女性に会えないかと依頼を受ける。
一世を風靡したゲームの開発者として知られた珠緒だったが、突如姿を消していた。
珠緒の元夫や大学の学友、銀行時代の同僚等を通じて取材を重ねる亨は、
彼女の人生に昭和三十一年に起きた福井の大火が大きな影響を及ぼしていることに気づく。
「実在」する情報をもとに丹念に紡いだ社会派ミステリーの到達点。
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Posted by ブクログ
これも一気に読んでしまった。インタビュー形式が大部分で、登場人物も多いため、もう一度読み返さねば。
珠緒さんと年齢が近いので(こんなに辛くはなかったけど)就職後の描写は懐かしささえ感じた。珠緒さんは一切登場していないのに、インタビューで彼女の性格が肉付けされていくのが、見事でした。
でも珠緒さんもお母さんもお祖母さんも壮絶な人生すぎて可哀想でした。
Posted by ブクログ
★-1としたのは登場人物が多すぎて頭の整理が追いつかなかったからでストーリーの完成度の高さは満点であることを先に弁明します。
塩田さんの作品はどれも罪≠悪を描いていて物事を一側面で捉えてはいけないという教訓じみた想いを抱かせてくれるのですが、本作はその点がとても色濃く描かれています。
罪のベースにある理不尽さ。その理不尽さが社会構造に起因するのだという作者からの問題定義と受け取りました。
現代社会がジェンダーフリーだマイノリティの尊重だと体裁だけ整えるような対応に終止しているように思えてならない私には、
現代でも、いや現代は過去よりさらに、この作品の被害者(?)を生み出しやすくしているのではないかと危惧してしまします。
Posted by ブクログ
序章 湯の街炎上/第一部 事実/第二部 真実/
終章 朱色の化身
父に頼まれ行方が分からなくなった女の事を調べ始めた亨。
多くの取材を重ねてわかってきたことは………
Posted by ブクログ
久々の塩田さん〜
な〜んか切ないな…
やりきれん感満載。
大火事を契機に、揺れる女性の人生というか生き様…
それが、三代も…
今でも、男女平等といわれながらも、まだまだやのに、こんな前の時代の女性なんか、振り回されて生きて行くのかな。それも男によって。
不倫、
離婚、
アルコール依存症、
etc
生きていく上で、色々あって、
人を殺め…
罪の意識に苛まれながら、やっと…
行方不明の女性を探して、元新聞記者のライターが、取材しながら、明らかになる真実。
もうええやん!と言いたくなる。
何が正しくて何が正しくないのか、という問題が重要なわけではない。むしろ、どうすれば正しさと正しくなさの曖昧な世界の中で、私たちは、心に背負った傷を回復できるのか?という問題こそが問われるべきなのだ。
Posted by ブクログ
さすがは元新聞記者と思わせるほどの緻密な取材力、圧倒的なリアリティが文章から伝わってきました。時代に翻弄された一人の女性を軸に様々な
物語が始まる。福井県の芦原温泉、雄島を舞台に
ある家族の壮絶なる一代記が繰り広げらる。
Posted by ブクログ
序章として昭和31年福井県芦原大火から始まる。
大火の描写は作者が実際に取材し、得た情報のままであるらしい。
時を経て令和の世、失踪した謎の多い女性を記者である男性が時代を遡りながら探ってゆく。
取材の返答の話し言葉中心で展開され、読みやすいが、登場人物と証言や調査で明らかにされることが各々で生み出されるため、混乱しそうになるが、全てが点であり、線となって昭和の芦原にたどりつくという緻密な作品の作りに息を呑んだ。
Posted by ブクログ
辻珠緒。
関わった人間の証言を読み進めるも、捉え所のないよく分からない人物としての印象が強くなっていく。
この女は一体、何者なのか?なぜ失踪したのか?それが気になってほぼ、一気読みに近かった。
そして浮かび上がってくる様々な角度から見た、珠緒の表情と過去の因縁。
因縁は、珠緒だけに限らずその母、さらにその母をも時代とともに巻き込み、飲み込んでいたとは。。。
時代とは時に残酷であると感じた。
そうしたくなくても、そうしないと生きていけない時代の中で抑圧され必死に耐える。。。今の時代もそうであるが、女性はいざと言う時の職をやはり持っておくべきた。
この本を手に取ったのは舞台になっている芦原温泉が比較的、今住んでいる場所から近くにあって足湯や雄島に馴染みがあったからだ。
Posted by ブクログ
この読後のやるせなさは『絶叫』や『イノセント・デイズ』以来。
芦原の温泉街を襲った大火から始まった人一人の人生を追う重み。ライターの大路が大勢の関係者に取材しながら明らかになっていく辻珠緒という女性の生き様と遡る母娘三代に渡る悲しい業に言葉を失くす。
「男」に生活を依存してきたその結果と片付けるのは簡単だが、男尊女卑が当たり前だった時代背景を思えば彼女たちの生き方を責めることはできないな。
できすぎたラストだったけど、ここからまた新雪のようにまっさらな辻珠緒の人生が始まってほしいと願わずにいられなかった。
Posted by ブクログ
大河過ぎて、登場人物も多く、かなり混乱しながら読んだ。そして、1人の人が持つ多面性により、さらに混乱を来したが、あれは伏線だったのか…と思わされるところ、はっとさせられ、思わず顔を上げてしまう場面が何度もあった。
Posted by ブクログ
1人の女性を探すため、インタビュー形式で話が進んでいくので割と読みやすかった。
インタビューを通して"辻珠緒"の色々な面が見えてくる。
実在に起こったことを基にしているのですごく見応えがあった。
Posted by ブクログ
私だって「存在の全てを」を読みたい
読んで待ちます、塩田さん、7作目
デビュー10周年作品っぽい
新たな手法で描き出す「リアリズム小説」とのこと
フリーライターの主人公が、元新聞記者の父親から一人の女性の行方を託される
その女性の行方を探す事は、彼女の人生をたどる事になった
彼女に関わったあらゆる人達へのインタビュー形式で 人となりを形成させていく
数多くのインタビューから彼女の祖母、母親への繋がる
そんな感じなので、母娘3代のその時の社会情勢なども織り込み、変わった形式の大河小説風
おそらくは、かなり大変な執筆だったのではと思われます
取材も多いし参考文献も多いし
あくまでリアリティを目指してます
で目指しすぎて 主人公達の心情の入る隙間が狭くなってしまったのではと
探し出した彼女は、時代に飲み込まれたか、
家族に翻弄されたか、あるいは流された自分が悪いのか、たぶん全部だね
Posted by ブクログ
昭和から現代に至るまで その間に起きている社会問題 貧困 暴力 男女差別 格差 アルコール依存 ゲーム依存 など数多の問題を母娘三代の人生を通して描いている。
正直少し盛り沢山すぎる感じもした。
ライターである大路の取材による各人の証言で珠緒という人間が外側から形作られていくのが面白かった。
どれだけ努力をしても どれだけ能力があっても自分を縛っているものからは 結局逃れられない そんな珠緒の切羽詰まった感じが伝わってきた。
最後に大路が珠緒に会え 母娘三代に 引き継がれてきた おそらく捨てられなかったであろうモノを受け取ることができて 良かった。