逢坂剛のレビュー一覧
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ヒロイン美希が年月とともに変転していくハードボイルド。
非情な運命を非情な心で受け止め、淡々かつ冷ややかにたどっていくのがハードボイルドというジャンルである。哲学とか思想を期待せず、軽く読めばいい。
「幻の翼」で倉木尚武と結ばれた美希は息子真浩を授かった。しかし、その家庭は平和にはならない。事件事故が次々と起こって、警察官の同じ職業の夫とともに警察機構の中の陰謀に巻き込まれていくと言うストーリー。
内容のおもしろさという「横糸」と前作とのつながりの「縦糸」を、キャラクターの特徴で色づけされているので、引っ張っていかれた。逢坂剛という作家魂で読ませる。
続編は「よみがえる百舌」「ノスリの -
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たしか百舌は「ケケケッケーーー!…」と叫んで飛んでいく。暗闇に不吉な余韻を残して。餌も蛙とかトカゲを木の枝に串刺しにしておいて食す。という印象が強くある。
そんな異名を持つ殺し屋が現れたのではないか、と思わされるプロローグのひとつが「怪」を呼ぶ。本書には三つのプロローグがあり、これが百舌の叫び声の余韻ように全編を読んでいると絶えずよみがえる。
ハードボイルドではあるが、むしろ愛と憎しみの人間臭い悩みを抱え、過去、深層心理、血縁の血のなせるわざにうごめく沢山の登場人物たちの克明なストーリーである。
作者は警察の組織(公安と刑事)に場をとってはいるが、この社会のどの場をとっても当てはまる人間 -
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<御茶ノ水警察署シリーズ6冊目>
逢坂剛によるシリーズ短編もの。
ユーモア・ポリス・ストーリーという触れ込みだが、ドタバタやギャグではなく、落ち着いた、若干シニカルな味わい。中年男2人が主軸で、彼らは特段ヒーローでもなければ悪漢でもない。
生活安全課保安二係に所属する彼らの扱う事件は、さほど派手ではなく、流血やドンパチもない。
係長の斉木斉(さいき・ひとし)と平署員の梢田威(こずえだ・たけし)は、実は幼馴染。昔は、悪ガキだった梢田が斉木をさんざんいじめていた。大卒で現在警部補となった斉木の下に、高卒・平刑事の梢田が偶然配置された、という形。2人とも何となく居心地が悪い。
梢田は昇進試験を受 -
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百舌シリーズ第4弾。
主人公が女性で、スピーディかつアクションのハードボイルドとくれば、読むのも早い。
「元刑事が殺された。後頭部を千枚通しで一突き。伝説の暗殺者、百舌の手口だ。闇の彼方から百舌が帰還したのか?それとも、警察の汚濁に基づくあの事件を知っている者が始末されていくのか?いまわしい記憶に怯える女刑事・倉木美希の前に第二の殺人が起こる!野に下った大杉良太も友のために立ちあがる。警察の腐敗を告発し、サスペンスの極限に挑む逢坂剛の大ヒットシリーズの最新長編。」(表紙裏より、1999年)
逢坂剛の作品はカラッとしているからいい。
情緒、叙情たっぷりの作家の作品郡と取り混ぜ読むには最適、な