逢坂剛のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「映画化」と書かれた帯を見て手にした本作。「情状鑑定人」と題された第一章はキャラも立ってて興味深く、映画化されても面白そうだと思いながら読み進めて行くと、妙な違和感が…
あー、この本、短編集なのね。
と気づくまでに結構時間かかっちゃいまして、全く異なるシチュエーションや登場人物がどう収束していくのか興味津々で読んでいたので、思いっきり肩すかし食らった気分。まぁすべては自分の勘違いのせいなのですが…
それがあって、やや冷めた目線で読んでいたのですが、一癖も二癖もある人物たちが織りなす敵の裏の裏をかくような知略戦の数々は、なかなか面白いと思います。映画化される「都会の野獣」はそんなにスケールのデカい話でも長尺の話でもないので、逆にこれがどう映像化されるかがちょっと気になります。 -
Posted by ブクログ
◆真実の証明・・・大病院の院長が自宅の書斎で何者かに殺された。院長は生前、医療ミスではないかと死亡した患者の兄から脅迫を受けていたようで・・・。
◆美醜の探求・・・醜男ばかりが殺される連続殺人事件が発生していた。捜査線上に浮かびあがったのは長身の美人。事件を追う榊部長刑事の元に、かつての仲間・山倉から、被疑者に似た女に今まさに誘われている最中だと連絡が入る。
◆嫌悪の条件・・・大手カメラメーカーの「アルファカメラ」の広告合戦に挑もうとしている新生アド。しかしこれが出来レースであり、勝者はすでに西央広告に決まっていると見抜いた大津と中倉は、アルファカメラの社長・井手が人に言えない性癖で精神科に通っていることに着目する。
◆不安の分析・・・俺はどうしてこんなに”車”が恐いのだろう。車輪が回っているのを見ると吐き気がし、冷や汗が出て、1秒たりともそこにいられない。
◆空白の研究・・・自分が留守の間に夫が愛人を自宅に連れ込んでおり、鉢合わせしてその愛人を撲殺したとして逮捕された池原季子(いけはらすえこ)。しかし供述には曖昧な部分も多く、精神鑑定が請求された。鑑定人の祝田卓(いわいだたく)、そして助手の季建華(リーチェンホア)が彼女を面接する中で浮かび上がってきた真実とは。
以上5編の短編集。いずれも精神・メンタル的な要素を含んではいるが、登場人物のキャラクターのせいか、重い暗い雰囲気は不思議と無く、昔の作品にしてはやはり読みやすい。
◆美醜の探求・・・まんまとミスリードされていた作品。後になって、疑問に思っていた箇所が腑に落ちる快感。なるほど、見事。
◆空白の研究・・・以前読んだ「情状鑑定人」に登場した変態(?)精神医学者・祝田卓が登場。今回は中国人の美人助手がパートナーだが、そのやりとりはやはりコミカル。麻酔分析や催眠面接、他多数のテストをしながら真実を追求する。限りなく専門的でありながら、知識がない者にもとてもわかりやすく書かれているのはさすが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスペインと日本をギター一本が結ぶ、壮大なハードボイルド。
まず細かさに驚く。スペインはヨーロッパの中ではイスラム教の影響が色濃く残る異質な国だというのが、現代に生きるわたしのイメージだった。だが自由の国として歩むようになったのはつい最近だと知ったときのまず、歴史的な面白み。そして日本からスペインへ移動してから無茶苦茶とまで言えるような主人公がぶち当たる壁の冒険性。そこにハードボイルドには欠かせない美女もからんで…。大人な雰囲気もしっかりとあるというか、冒険性の多少のルパン的な子供っぽさとそのほかの大人の雰囲気が絶妙にミックスされているのだ。
特に後半、スペインへ行ってからの物語の終息までの展開が怒涛。スペイン中を飛び回り読者は本書を読むだけでスペインを多少なりとも知ることが出来る描写も楽しめる。
ただ、なんていうか大人の小説なのだ。盛り上がり方も冒険性を通して子供っぽさがあるのだが、逢坂さんの文章がダンディ。
北森鴻は楽しめるけどこれを楽しむにはまだ年齢が足りないのかな、と思ってしまった。