あらすじ
精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始める――。人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。
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Posted by ブクログ
さて、いよいよこいつか。精神医学バリバリで、美人の女医が主人公だっていうんだから、メチャメチャ期待してた。「Esの方程式」も「クリヴィツキー症候群」も越えてくれってのが希望。
右脳左脳の問題が精神分裂や二重人格と関係あるとか、性的なトラウマが分裂症の原因になるとか、大脳生理学と精神医学とを結びつけたプロットはこれまでのサイコものに比べてもかなり優れもの。中でも特に脳梁の断裂が二重人格を引き起こすというくだりが興味深かったな。妙に納得してしまった。だからといって、多重人格がその数だけ脳が分割されているわけでもないんだろうけど。
「クリヴィツキー症候群」をさらに濃密にしたような雰囲気は、もう言うことないっす。完璧OK。ただ、文体があいかわらずあっさりしててちょっと感情移入しにくいのが気になったけど、今回は状況がかなりエロいっすからねぇ。藍子はいい女だ。とくに太股のあたり(^^;)。
読み終わる前の予想としては、藍子を狙ってるのが誰なのかなかなかわからなかったけど、こういう話だからなってことと、太字のところって全部ガラスがからんでるから、「犯人は藍子の分裂したもう一つの人格」でガラスに移った自分の姿を見ているっていう予想だったけど、正解でした。ラストをチラッと見ちゃったからわかったんじゃないかという話もあるけど(^^;)。作者は本間や追分や海藤にも犯人とおぼしき行動をさせてるんだけど、こういうテーマでちゃんと落とそうと思ったら、まあこれしかないわな。残念ながらこのネタは、基本的には「クリヴィツキー症候群」の焼き直しって感じだから、衝撃という意味ではもう一つだった。こっちを先に読んでたら、当然評価はもっと上がったと思うけど。ただ、二重人格になる原因を医学的に説明している点では、結構画期的かもしれない。
その他にもミルグラムの実験とか、左脳右脳の分離実験とかおもしろかった。大学入る前に読んでたら、俺心理学の方に行ったかも(^^;)。
最大の問題は、俺も制服コンプレックスがあるかもしれんということか(^^;)。
p.s.ひょっとしてひょっとするけど、これも「ガダラの豚」と並んで「Esの方程式」の元ネタの一つかも。
Posted by ブクログ
人格を作り上げるのは心なのか、脳なのか。
精神科医である主人公南川藍子は、もちろん心因性の異常を治療する医師だが、腕利きの脳外科医・丸岡庸三は、脳の損傷による外傷性の人格異常を提示する。
治療、実験によって露わにされる隠されていた人格。
今はもっと多くの事柄が解明されていると思うけれど、それでも脳の機能は謎が多い。
過去の衝撃的な出来事が、人格をゆがめていく。
それは心の傷だろうと、体の傷だろうと。
藍子と丸岡のやり取りが、学術的ではあるけれど、読みやすい文章で分かりやすく書いているので、面白かったな。
けれど、もう少しキャラクターを整理して、というか、整頓してくれるとスムーズな展開になったと思う。
連続殺人犯や、刑事の海藤のキャラクターに少しぶれがあるように感じられた。
不要な描写をなくして、目的への動機づけをシンプルにすればもっと読みやすいのに。
とはいえ、ミステリー要素はもちろん、藍子のまわりに漂う不穏な空気がサスペンスフルでもある。
いったい彼女に味方はいるのか?
結末も、幕が下りたと見せかけておいての、最後の三行。
ああ、これはホラー小説でもあったのか。
Posted by ブクログ
医師です。医療系ミステリーということで読んでみたかった作品でした。
まず、海藤が半側無視であることは医学生レベルでも序盤で分かるはず。優秀な精神科医とされる藍子がそれに気付かず、ましてや脳神経外科医の丸岡に指摘されて初めて気付き専門書で学ぶ、という描写はかなり不自然です。
右脳と左脳の機能。海藤や藍子の実験の描写などは、非医療者には少し難しいのではないでしょうか。
脳神経専門外の医者である私にとっても、少し複雑に感じました。
全体としては、結末が気になりどんどん読み進めてしまうところではありますが、脳に障害を持った3人の連続殺人犯-本間、追分-のエピソード、また主人公らとの関連について、まとまりが希薄に感じられます。
医学的観点からみても興味深い内容ではありましたが、ミステリーとしてはかなり内容や登場人物の相関が複雑で難しい、かつ高い読解力を以ってしなければ消化不良感の残る作品かと思います。
Posted by ブクログ
今でこそ出尽くしている感のあるサイコ・サスペンスだが、初稿が二十年以上前という今作の刊行年を鑑みると、この時代に脳科学や心理学をここまで大胆に盛り込んだ作品も恐らく前例がなかったのだろうが、理論が先行し過ぎていて何とも理屈っぽい。真相への伏線であるとはいえ、主要登場人物の男性陣三名のキャラクター像が終始あやふやで、尚且つ作中における互いの関連性も低いので、強い消化不良感が残る作品。しかし、いくら年代を考慮したとしても、作中の女性観が偏り過ぎていて、現代のフェミニストが本書を読んだら卒倒してしまうのでは…?
Posted by ブクログ
精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始めるー。
Posted by ブクログ
作品紹介にはミステリーとあるけれども、読んでみると脳科学を根底に描いたサスペンスのような気がする。
精神科医が患者たちの症状をもとに、その深層心理を探り、分析し、解明しようとする。
だが、壊れた精神が宿る脳からは、常識では図れない恐ろしい闇が潜んでいたりもする。
外部からの衝撃によって脳の機能が損傷すること。
それが原因ならば医学的にもきちんと解明がされ、治療法もまた見つけることができるだろう。
けれど、脳自体に問題がないとしたら?
もしくは、生まれつき人とはほんの少しだけ脳の状態が違っていたとしたら?
見分けることは本当に難しいだろう。
藍子に迫る異常な殺意。
身近すぎるほど身近にも、その殺意があることに藍子は精神科医でありながら気付くことができない。
どんなに科学が発展しようが、どれほど医療技術が進化しようが、すべてを解明することなど出来ないのだろうな・・・と考えてしまった物語だった。
Posted by ブクログ
制服フェチの連続殺人犯、性行為にいたった女を殺す男。
頭と心に傷を持つ刑事、美しい精神科医。
徐々に輪が縮まってゆき・・・。
ってカンジでしょうか。
お話の中心はおおむね美しい女医。
性的な雰囲気がプンプンして、そんでこの女医さんが自信家っていうか、なんていうか。
ともかく登場人物すべてに好感が持てず、そのため客観的に読み進めていたのですが・・・・。
ストーリー的には☆4つですが、やはり登場人物に魅力がないこと、品がないことが気に入りませんでした。
Posted by ブクログ
精神科医の藍子の前に現れた三人の男は、脳に傷を持っていて・・・
読んでいるうちに、誰もが怪しく思えてきた。
今まであまり読んだこと無いような展開だし、脳にも興味津々。
Posted by ブクログ
帝国医科大学付属病院・精神神経科医師・南川藍子。
彼女の周りに3人の脳・精神疾患をもつ男が現れる。
犯人逮捕の際のけがが元で、脳梁が損傷し、右脳と左脳の交通がたたれた刑事の海藤。試合中にマスコットガールを絞め殺そうとしたプロ野球選手・追分。そして制服姿の女性の胸に裁ちばさみを突き立てる連続殺人犯北浦。
この3人と関わりを持つうちに、藍子自身の命もねらわれることになる。
Posted by ブクログ
場面転換の使い方がすごくうまくて、ぞくぞくしっぱなし。緊迫感がよかったです。
ストーリー的には面白く、読み応えあり。
ただ、最後の展開が理屈先行で、ちょい失敗って感じかな〜。。。
Posted by ブクログ
脳や精神のわずかなキズによって
人間はこんなになってしまうのか!と怖くなりました。
脳の大切さ、子供時代の大切さを改めて考えさせられました。
脳って不思議だなぁ・・・。
この本はミステリと言うより、サイコ・サスペンスかな?
Posted by ブクログ
女精神科医の主人公、その前に現れる脳に傷を持つ三人の男達。刑事、プロ野球選手、殺人犯・・・。次々と起こる事件、いつしか命を狙われる主人公。精神医学の専門知識を織り交ぜたサスペンス。エンディングもドキッ!