杉井光のレビュー一覧
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注目作家のアンソロジー作品
SNS、Vtuber、SNSによるバズり、マッチングアプリ、若手社員と再雇用者のネットリテラシーの差異
今の自分達にとっては馴染み深いテーマでとても読みやすい作品だった
もちろんアンソロジー作品なので好き嫌いは多少なりとも出てしまった。
かわうそをかぶる
どうしてこれほど心が壊れた少女を描けるのか読んでいて不思議な気持ちになる
物語の展開がとても綺麗で短編と思えない読み応えがある
ラストで伏線回収があるのもなんとも秋山先生らしい
ヤリモク
40代男性のマッチングアプリ事情
妻子持ちの彼がやっている理由とは…
こちらも伏線回収ものだが、一番個人的にはなってほしくない形の結末迎えてしまった
後味は悪いが面白く一気に読むことができた
一度結城先生の他の作品も読んでみたくなった
君がため春の野に
亡くなったSNSのアカウントが動き続けると言う現実も起こり得るような題材のお話
気に入った作品の中では唯一心温まる内容の作品
1月7日の投稿主の詮索をするのは…ヤボってもんですよね…
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Posted by ブクログ
ネタバレ嘘がテーマのアンソロジーであり、各作品で何が嘘に当たるのか?を考えながら面白く読めた。1つ目の『カワウソをかぶる』がインパクト強すぎる。あーこっちの人やったんかい!ただのASD(解離はあるかも?)かと思わせといて自分が気持ち良くなるためならどんな事でもやっちゃうサイコパス人格の居る解離性障害やったんかい!が痛快で(書き方が上手くてミスリードさせるからズルい!)、思わず最後の数ページを何度も読み返した。途中何度もあれ?って思わせつつ上手く気付かせないようにするのが作者の狙い通りやとすると凄いなと。その次の話がなんか面白くなくて途中やめそうになったけど、『ヤリモク』が途中早めにネタバレしたけど面白かったから最後まで行けた感じ。最後の『君がため春の野に』も題名の意味が最初全然分からんかったの最後にちゃんと回収出来るようになってて『世界でいちばん透きとおった物語』の続編として楽しめたりしたし、軽ーい読み物としてオススメできる本。
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Posted by ブクログ
火目と呼ばれる力を持つ者は若い女性から希に出て、身体に特定の形の痣がある。その力のみが、人を喰らう化生を灼箭で焼き滅ぼせる。伊月は村が赫舐(あかな)という化生に襲われた時、火護衆の豊日に救われ、火目候補である御明かしとなる。火目は当代一人。火目が力を無くすと御明かしから次代の火目が選ばれる。
特殊能力がないと殺せない人を襲う妖怪(化生)が出てくる。なんとなく呪術廻戦っぽかった。主人公が結構ウジウジしてるので、スカッとしないけど、世界観など結構良かった。杉井光さんのデビュー作ということで読んでみたけれど、まあ、ラノベ読ではない人でも挿絵とか我慢すれば読めるかなー。結構面白かったので、杉井光電撃文庫本、読み進めたいと思います。
神様のメモ帳、さよならピアノソナタ、楽園ノイズあたり気になる。あ、あと挿絵で幼女などのお風呂シーンあったのと、残酷描写(人喰い)アリなので、小学校NG。 -
Posted by ブクログ
原作における丁々発止のコメディトークを損なうこと無く、むしろ漫画ではパワーアップしているんじゃないかと思えるテンポ感の良い遣り取りは好印象
凛子も詩月も別にボケキャラという訳ではないのだけど、傍若無人な二人に対する真琴のツッコミが全編に亘って冴え渡るものだからどこまでも楽しんで読める
勿論、音楽表現も負けていないのだけど
今巻前半で主題となるのは詩月のエピソード
ドラムの才覚はあれど、家の都合により満足に音楽に注力できない。それに釣られて望まれる華道も微妙な出来映えになる
音楽バカである真琴としては詩月がドラムに関われない点を惜しいと思うが関わる踏ん切りもつかない
そこで凛子が有無を言わさず機会を作る流れは良いね。こういうシーンを見ると真琴の最良の相棒は凛子であると思えるよ
そのような二人が仕掛けた音楽劇だから詩月は音楽と華道を取り戻せたのかな
次に主題となるのは日常での居場所を無くし音楽を奏でられる場所を彷徨う朱音
原作を読んだ際はわんぱく犬のイメージが強かったのだけど、漫画版では中性的な魅力が増してカッコイイ系になっているような
見た目が目を引く彼女だけど、バンドの助っ人をする際は目立たぬ演奏に終始。スタイルの異なるバンドに対して背景に徹せられるならそれは実力の現れで
実力があるのに思うように音楽を楽しんでいない
そんな音楽不満足状態の少女に対して何をするかは次巻に続く感じか
結構じっくりと描いてくれていてファン的に満足できる構成だよ
あと、本コミカライズにて注目したくなるのはやはり各キャラクターの表情だろうね。小説媒体ではどうしたって限界があるそれぞれの見た目の表現、けれど絵で表現される漫画ならそこは余さず見えてくる
特に原作は真琴視点で進行するから真琴が見ているものしか描写されない。…まあ、彼は気付かないけど色々と見ているタイプだからそれなりに描写されていたりするけど
それでも7話ラストの表情はコミカライズならではと言えるのだろうね -
Posted by ブクログ
美沙緒が戻ってきて、伽耶も高校に入学、凛子達は真琴と同じクラス。バンドにはマネージャーも付いたし、拠点となる活動場所も確固たるものが手に入った
真琴にとって何もかも順調と言える状況。…だからこそ彼がヘタってしまうというのは面白い話
思えば真琴って逆境を好むと云うか、自分で状況を複雑怪奇且つ難題だらけの局面に持ち込むのが好きなような気がする。勿論本人としてはギリギリの状況を楽しんでいるなんて事はないのだろうけど、彼の本領が最も発揮される時がそういう局面である点を考えると、彼は安寧を手に入れてしまったが故に緩んでしまったのかも知れない
窪井拓斗からの依頼曲、邦本からの依頼曲。どちらもプロとしての依頼であるにはベストな楽曲を提供しなければならない。けれどそんなタイミングで緩みが生じてしまえば、そりゃ最良の楽曲なんて手掛けられるわけがなくて
状況打開の最初の一歩がちょっと驚きの方向性だったね。軽音部のプロデュースだなんて
バンドの楽曲でもなければ仕事の楽曲でもない。なら趣味曲といえばそうでもない。一度依頼されたとはいえ断った素人の案件、加えて他人事なのに無理して関わったからには良いものを作り上げなければならない。
その意味では自分を追い詰める遣り方。今の真琴が取るべき姿勢
そうして作り上げられただろう楽曲は是非とも聞いてみたいもの。作中で疑問視されたように安易に作ったらアイドル気取りっぽくなってしまう。でもバンドマンがバンドの楽曲としてハモるからこそ形になる
楽曲アレンジの完成度、そしてバンドのプロデュース方針。それらが合わさるから真琴が手掛けた軽音部への助力は形になるわけだ
それを踏まえると3・4話のエピソードは更に別方面のエンジンとなったのかな
普通に生きる事すらまだ難しい美沙緒、ピアノコンクールの世界を捨てた凛子。本気の世界と既に無縁になっていた筈の二人。それが美沙緒の決意のコンクール出場によって戦いの場が生まれるのか
ただ、二人が胸に抱えた悲願は全くの逆だったのかな?美沙緒はこれからも生きていく為に真琴から離れる決断をした。凛子はこれからを真琴と生きていく為に美沙緒と戦った
だから二人の戦いの勝敗はコンクールの順位ではなく、真琴が決める必要がある
超絶技巧と言える二人の楽曲を聞きながら真琴が下した判断基準はスキルではなく、再び聞きたい曲という基準
それは正しく美沙緒と凛子を分かつ順位付けになるね。真琴は知らずしてこれまで何度もこだわってきた美沙緒よりも凛子を選んだという事になる
その決断はこれからを音楽に関わって生きていく真琴にとってもエンジンとなる
だから5・6話はそれらの前置きによって得られたエンジンを真琴自身が点火する物語
失う物や立ち止まる事を恐れていたら何も手に入らないし進めない。今の真琴にはエンジンは有っても点けるべき火が見当たらない。まさかそれがあんなものだとは思わなかったけど
無茶苦茶で違法スレスレなダブルブッキング、落ち度なんてPNO側には一切ない。本来なら真琴が負うべき苦労もない
この構図は軽音部の時と似ているね。わざわざ関わるべきではない局面。でも関わったらとんでも無いプレッシャーが舞い込む
でも、真琴はそれだけでなく、不必要にも程が有る荒業にも出てるね
真琴達にとってPNOとは自分の音楽を奏で守れる楽園。安寧を得続けるにはそこに居座り続けなければ良い。けれど、その道を選んでしまえば音楽家村瀬真琴は進めない
もう一つの楽園、もしくは楽園の外側。PNOなのに真琴一人で立ったステージ。以前のムサオならあのような歓声は得られなかったしそもそもステージに立つ事すら出来なかっただろう規模
それでも真琴は一人でステージに立ててしまったし、成功もしてしまった。それは間違いなく旅立ちの証明
真琴側から見れば楽園を壊してしまったようなもの。でも伽耶達は帰ってきた彼を熱烈に迎え入れた。楽園は失われていなかった
それは真琴がこれからを進んでいくには充分過ぎる原動力で充分過ぎる温もりだね。そしてPNOという楽園とは別に出航した『村瀬真琴』という新しくて古い船。音楽に生きる彼の業を新たに見た気分になったラストだったよ -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルがとても好きなので手に取りました。読み終わったあとに気がついたのですが、神様のメモ帳の作者様だったのですね。
ある夏の日、恋をした相手が死体で発見され助けるためにタイムリープを繰り返すおはなしです。私だったらそうそうに心折れて、廃人になる気がします。なので、最後まで粘った主人公を尊敬しますが、後半は「だよね」と言った感じと好きになれなかった…。
それでも序盤から中盤はどんどん引き込まれて、ページをめくる手が止まりませんでした。面白かった〜!
夏って暑くて早く終わって欲しいけれど、終わったら寂しいよねって思う読後感でした( 伝わるかな ) -
Posted by ブクログ
死んだ先輩を救うために何度もタイムリープを繰り返す青春もの。
と言う作品のあらすじを見た時、作者にしては珍しく流行りの設定に手を出したなあと思ったのだけど、よく考えたら、いつもヘタレな青年がいろんな事に後悔している作者の作品と、これほど合う設定もないなと思った。
そして時間巻き戻しという反則技を手にしてもやっぱり作者の主人公は作者の主人公であって、格好良く全てを解決したりしないのだ。
いやむしろ、それだからこそ絶望的な現実に押し潰されそうになって、それでも最後には僅かな希望が残るーーーまごう事なき作者の刻印が押された物語だった。
実に杉井光らしい。いや、好きですよ。
先輩の死の真相は個人的には一番最初から予想できていたのだけど、どういう決着になるかは最後まで疑心暗鬼だった。
最後まで読んで改めてタイトルが全てを物語っていると思った。 -
Posted by ブクログ
バレンタインデーに受け取った想いを返すホワイトデー、甘酸っぱいイベントも音楽バカの真琴に掛かれば素っ気ないイベントになってしまうのでは…?という懸念を他所に予想以上のホワイトデーが描かれていたような
一方で女の子達と向き合うイベントは真琴にとって自身の構成要素に音楽以外のどのようなものが含まれているか捉え直す機会となったのかな
ホワイトデーに何を送れば良いのか、そして何故姉の偽装恋人なんてしなければならないのか。音楽バカにとって余計な悩み事となる冒頭のエピソード
出掛け先でバンドメンバーに遭遇してしまうなんてラブコメとして定番展開の中で見えてくるのはホワイトデーに何を返すかという悩み事が近づく日々においても真琴がバンドメンバーの女の子達をバンドメンバーとして見ている点。硬派なのか超鈍感なのか。
でもそういった変わらなさこそ真琴らしい
本番は姉の補助も有って皆が想定していた以上のお返しが為されたようで
きっと彼女らも真琴がきちんと意味を把握した上で渡してきた、とまでは思わないだろうけど、それでも特別なお返しは特別
それにしても複数の女の子へ同時にマカロン渡すって凄い状況……
続く少女達との逢瀬は日常イベント味が強いエピソード。一応、マネージャーをどうするか?という課題こそあれ、大きな問題が存在しない日々の中で強調されるのはこれまでとこれからの少女達と真琴やバンドとの関係性かな
朱音が考えていたのはマネジメントの問題、PNOは真琴が始めたバンドだけに真琴の雑用部分が多い。だから朱音がしようとしたのは真琴から余計な重しを取り除こうとした行為
やっと本気になれる場所を手に入れた朱音からすると大切な友達が居るバンドはずっと存続させたい。だからそれが消えてしまうんじゃないかと不安に思ってしまうのか
ああして地元トークが出来るなら繋がりは消えないかもしれないけど、音楽バカの真琴にとっても同様の意味となるのか……
詩月が考えていたのは距離の問題か。今は同じ高校だし近場に住んでいるから一緒に活動できる。でも転校なんてしたら真琴達と離れ離れ。詩月がしようとしたのは余計な重しが降り掛からないようにした行為。だから父の不倫相手にも会いに行った
親が離婚した際にバンドの為に一人暮らしか華道の為に母についていくか。詩月にとってどちらも重きを為す要素。だからバンドに居る真琴に本気度が疑われてしまうかと詩月は懸念していたようだけど…
真琴の返しは良かったけど、口説いているようにしか聴こえない台詞だなぁ(笑)
伽耶が考えていたのは所属の問題か。これからも本格的に音楽活動を続けていくならどこかしらの事務所に所属した方がいい。それはバンドの重しを分散するような行為だけど、所属したらそれはそれで重しが現れるというのは難儀な話
伽耶がそういった点を気にしていたのは自身が気にしているからか。演技と音楽の両輪という意味では詩月と似た悩みだけど、未熟な伽耶はまだ自分の中でどちらに重きを為すべきかを決めきれなかった
真琴は伽耶にとって必要な答えを与えてやれた感じだね
凛子が考えていたのは練習場所の問題か。音楽に関わる者にとって大切な音を鳴らす場所、たった1つの場所にこだわっていれば今回のスタジオ改装のように不意に使えなくなる日が来るかもしれない。かと言って様々な宛てを作るのも重しとなる
シェアハウスさえ有ればバンドメンバーで住めるし一緒に練習も出来る。音楽をやる者にとって理想的な環境。そういったものを差し出して、更にはそこから続く未来にも目を向けている凛子の想いの深さを感じるようなエピソードだったよ……
そして肝心の真琴は……
彼の音楽はどのように開始したのか、どのように継続しているのか。これまでも美沙緒の存在が真琴を揺るがす場面は描かれてきた。それは彼にとって美沙緒が掛け替えの無い人物という証左。曲すら書けなくなるだなんて音楽バカである真琴の原動力に近いものに美沙緒はなっているという事か…
そんな状態だから普段なら心躍るような依頼も無味乾燥なものとして、気乗りしない話題として受け取ってしまうわけで
本作は真琴視点で描かれているから、真琴と同じように美沙緒の現状を心配する凛子達の心情はしかと描かれない。けど、気落ちした真琴に踏み込まないという形で配慮や心配がされてきた
でも考えてみれば、それは元教え子である凛子達の問題であって、会った事すらない伽耶にとっては全く無関係の問題なんだよね。おまけに美沙緒の音信不通で真琴が揺らいでいるという事はそれだけ真琴にとって美沙緒が大切な存在であると叩きつけているようなもの
伽耶は勇気を出して、そして挑むように真琴に音楽バカのなんたるかを叩き返したね
これまでの真琴は自分がやりたいとか、美沙緒に聴かせたいが為に音楽をしていたかもしれない。
伽耶が示した痛みの音楽。大切な存在が居なくなっても音楽にしがみついてやるというバカみたいな覚悟。これに応えられなかったら音楽バカなんて名乗れやしない
そうして結集した音楽の先にまさかの再会が待っているとは……
第1巻にて真琴達の前から姿を消しつつも、その存在感故にPNOの中核と等しい核を為してきた彼女。これで完全復活というわけではないようだけれど、それでも彼女が戻ってきたのは本作においてとても明るい話題となりそうだ
美沙緒が戻ってきて、伽耶も高校に入学した。PNOの未来含め何もかもが上手く回り始めそうな春先。これからも本作を読み続けられるという喜びや温かな春模様が幾つも描かれた巻だったよ -
Posted by ブクログ
作曲家が消えたとしても音楽は消えないと云った趣旨が描かれた前巻、続く今巻はならば残り続ける音楽に対して奏でる音楽家や演奏家はいつまで音楽に付き合い続けられるのかと云った趣旨が描かれていたような
この巻において、真琴の人間性を表す言葉として、「人間やめるか音楽やめるか選ばせたらお前は一秒も迷わず人間やめるだろうな」なんて失礼な発言が登場する。他にも「あんたはそっちの国の人なんだよ」なんてぼかしながらも真琴という人間を表した発言も有る
真琴は命の危機に瀕したとしても音楽を続けていそうなイメージが有る。そんな真琴にとって本人の意志ではない理由で音楽の才能があるのに音楽を辞めようとする人間を放置しておけないのかもしれない
音楽の危機に瀕した人々に真琴が関わる事で起きる反響はとても素晴らしいものに仕上がっていたように思えましたよ
黒川と蝶野のエピソードは音楽家で有り続けられる者とそうでない者の物語と言えるか
かつて界隈で一斉を風靡した伝説的ユニットの再結成。今も音楽に当然のように身を浸す蝶野と同じように、黒川もステージに上がれば素晴らしいプレイングを披露できる。二人は同じ音楽や夢を共有できているように見えてしまう。
それでも黒川は音楽を辞めた。あれだけのステージを披露した後に辞めざるを得ない理由を説明した際に蝶野が彼女の勧誘を諦めたのは、黒川の限界に理解を示したのではなく、理解できなくなったから勧誘しなくなったのではないかと思えてしまったよ…
それだけにキョウコの発言は印象的と思えたな。「音楽をやめた人というのは、ただやらなくなっただけだよ」
同時進行する黒川のエピソードからは彼女がこの法則に当て嵌まるとはとてもではないが考えられない。つまり、この「やらなくなっただけ」というのは音楽をやるのが当然のような人達に関する話であり、言ってしまえばこのような発言が出来るキョウコとて“人間よりも音楽を選ぶ”人種であると察せられる
結局、音楽の世界に生きる者にとって夢があるからとか素晴らしい音楽を披露できるとかそういう理由で音楽をやっているわけではないのだろうね。逆に言えば、音楽の世界に生きられない者はどれだけのプレイングを持っていたって音楽を続けられない
音楽の世界に生きる事を当たり前としてしまう真琴にとって、素晴らしい歌声を持つのに住んでいる国が違う黒川の姿は寂しいものに映ったのかもしれない…
後半部はアマチュアオーケストラ『けものみち交響楽団』との関わり
年齢の高い団員ばかりのアマ楽団。前半部で語られた“そっちの国”とはまるで異なる世界に生きていると思える人々。けれど音楽の世界に生きる真琴が尊敬し、真琴が音楽とほぼ同一視しているフシが有る美沙緒が指導した楽団であるのなら、そう単純な存在ではないわけで
自分の音を持つ真琴達を驚愕させる音楽を披露できる『けものみち交響楽団』はいわば本物。立場とか年齢とか関係なく音楽の世界に生きている。そこまで精緻に組み上げられた楽団であるなら、それを一つの楽器であると形容するのは納得の内容
指揮経験のない高校生が選曲をした上で楽団の指揮を執る。普通は尻込みして当たり前の展開。けれど、自分が聴きたい音楽の為に突き進んでしまう真琴は音楽バカな側面が強調されているね
バレンタインコンサートの段階では選曲だけして客席で聴くしか無かった。素晴らしい演奏を「なんでこんな客席の片隅でシートにへばりついて聴いているばかりなんだ」と忸怩たる想いに囚われてしまうのが真琴の真髄。このシーンにこそ黒川が住んでいる国が違うと形容した真理が詰まっているね
真琴は良いと思った、魅了された音楽が眼の前に有るならそれを体感しなければ気が済まない。当然に『けものみち交響楽団』の解散も許容できない
だからこそ真琴は突っ走り始めるわけだ。自分が指揮台に立つのを待たずに楽団が解散してしまうなんて許せないから
そこには冴島俊臣の件が絡んではいる。下手をすれば凛子はバンドを辞めさせられ望んだ進路も選べなかったかも知れない。冴島俊臣に自分達が身を浸す音楽を馬鹿にされた件は真琴にいつもの如く相手を音楽でぶっ飛ばす活力を与えるものに成るね
けれど、最後に明かしたようにそれは建前のようなものになっていくね。真琴は確かに楽団が奏でる音楽を最高峰へと押し上げ最上級の演奏を実現しようとしていた。そこには冴島俊臣に認めさせ、楽団の解散を止めるという目的が有った。けれどいつの間にか目的がすり替わっていくのが手に取るように判るね
『けものみち交響楽団』は美沙緒が残したものであり、きっと残したいものであり。『けものみち交響楽団』には真琴の音楽が活きていてそれを刺激すれば最高の音楽が奏でられると判っている。つまり真琴の中で最高の音楽に身を浸したいという欲が勝ってしまうわけだ
いや、それにしてもとんでもない曲で冴島俊臣をぶっ飛ばそうとしたものだね!まさかの自作曲をクラシックと偽って楽団に演らせるなんて。そのような曲を音楽家にぶつけるだなんて
でも、あれこそが音楽家の武器であり、自分を表現する魂であり、真琴の音楽バカとしての全身全霊なのだろうね。だからこそ冴島俊臣に楽団の価値を理解させられた
それはさておき、続々と真琴とヒロイン達の関係が両親公認みたいな感じになっていく流れにはちょっと笑ってしまう。これ、そろそろ後戻りできないトコまで来てしまっているんじゃなかろうか(笑)
再びの春。伽耶は無事高校に合格し、『けものみち交響楽団』も続く事になった。春の芽吹きと共に喜ばしいニュースが幾つも舞い込んだラスト。こうなると“彼女”の復帰も近いのではないかと期待してしまうが…… -
事業内容はニート探偵!
探偵事業を営む、自称ニート探偵のお話。ニート探偵である少女とそれらを囲む人々の群像劇が好きな人には好きな雰囲気。ほのぼのもするしハラハラもする、丁度いい緩急のあるストーリーだと思います。個性豊かなキャラクターも読んでいてかなり面白いです!イメージ近い作品だと「デュラララ」とか「池袋ウエストゲートパーク」ですね!
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前巻が少女達にとってPNOが楽園であると示すエピソードになったなら、今巻はその楽園を作った真琴にとってPNOは楽園足り得るのか?という点を描いていたような
そう思えば、演奏面において真琴より秀でた伽耶の登場は真琴がバンドに居続ける事は正しいのか?と問うと共に、楽園に居ると選ぶのであれば何を楽園の外に置き去りにしなければならないかを問い掛けているかのようだったよ
真琴が新メンバー候補・伽耶のプレイングを耳にして心が揺さぶられる、なんてのは前巻でも似たような展開が有ったけど、今回はまた別種のものだったかな
キョウコの時は真琴の立ち位置が乗っ取られるかのような感覚だった。でも、伽耶は真琴とは異なるベースを操るから乗っ取りにはならずにPNOを別種の存在にさせかねない作用として効いてくる
けど、元々は感情の赴くままに奏でていた真琴にとってPNOは特定の形を持つバンドとまでは必ずしも確信できていない状態。また自らの音楽が急拡大していた事態に心が追い付いていなかった事もあって、真琴はバンドを外から見たいなんて言い出したのかもしれない
真琴の代わりにバンドへと仮加入した伽耶は瑞々しさに溢れたタイプだね。若い憧れを以てPNOに入り込んだ。そこには父への反発なんていうそれこそ若年時代にしか出来ない振る舞いも見て取れるし、芸能社長に騙される危うさも見える。先にバンドに加入した凛子達が音楽体験における危うさを持っていたのに対し、伽耶の場合は人格形成における危うさが見て取れるね
そう考えると、PNOに辿り着いた伽耶は凛子達とは異なる動機や背景によって辿り着いたと捉える事も出来なくはない。凛子達は音楽を自由に奏でられない境遇に息苦しさを感じていた所にPNOという楽園に巡り合った。対して伽耶もPNOは目指していたものの、そこに楽園を見ていた訳ではなかった。真琴への憧れから彼女はPNOを志した
若々しい彼女だからPNOへの加入背景には父親の陰ながらの手助けなんて幼さも見えてしまうが、それを伽耶は許容できないと
そこで真琴の自分勝手な音楽欲が伽耶にまで欲を与える形は面白いね。おまけに「僕は、伽耶の音が欲しい」とか言うなんて。そりゃ伽耶が真琴含めPNOに夢中になるのは当たり前だし、自分が加入した途端に真琴が一時脱退したらむくれるよなぁ(笑)
真琴がソロ活動を模索する中でネットの片隅で出逢った一つの音源。小さな子供にとって秘密の地図を見つけて方々を探し回って宝物を見つける行為が夢の具現であるならば、音楽家にとって音の欠片から関係者の記録を探し回って楽曲を作り上げるのも夢のような行いなのかもしれない。このエピソードを読んでそんな事を思ってしまったよ
何処からどう聴いても良い音源。だけど中途半端な作りで由来も不明。その音に魅了されれば完成させたくなるし、誰がどうしてネットの海に落としたのかも気になってしまう
これは真琴がバンド活動を続けたままであったなら、実らなかった出逢いだろうね
拓人が味わった奏でた音が自分の音では無くなる感覚。昔はそれに対し素直に反発してしまい音は楽曲に成らず誰の耳にも届かなかった。蒔田シュンとの繋がりも途絶えてしまえば、それが日の目を見るなんて本当に有り得なかったのだろうね
そう思えば、生まれ落ちないまま漂っていた音の欠片を何年も経ってから楽曲として作り直すなんて真琴は凄い事をやってのけたね。それはなんて夢のある話だろう
でも、このエピソードにて夢が甘いものとして扱われず苦々しいものとなっているのは現実の儚さを感じてしまう。音は楽曲に成れば消えない。けれど、それを扱う人間はいつか消えてしまうし、聴く人が居なくなっても消えてしまう。
なら、かつては自分の音ではないと反発してしまった音であろうと拓人は蒔田シュンという才能を認めた人が存在したとこの世に刻みつける為に曲をきちんと作り上げる必要があった
そこに真琴が介在できたのなら、真琴が音を拾い上げた甲斐があったというもの
そんな物寂しいエピソードの後に始まるクリスマス編も何とも言えぬ甘さと苦さが両立しているね
クリスマスイブにダブルブッキングならぬクアドラプルブッキングが発生するなんてそれどんな夢次元?と聞きたくなる。しかも、途中で変にバレたりせず誰とも穏やかにクリスマスデートを実行できるとかどういう事です……?
ただ、真琴は四人の少女への恋愛感情が現時点では希薄なものだから妙な背徳感とかも無かったりするのだけど。その傾向は真琴が選んだクリスマスプレゼントにも現れているね。物の見事に音楽関連アイテムばかりで、彼女らのどういった面を重視しているかが浮き出てくるかのよう
どこかの誰かさんみたいにビートルズのレコードを送らなかっただけマシとも言えるけど
こうして都合よく織り成された甘い夢のような時間は守られクリスマスライブの時間へ。そして裏で進行していた苦々しさの静かなインパクトが……
音は楽曲に成れば消えない。だから美沙緒がネット上に上げた楽曲も真琴に届いた為に消える事は無い。つまり、美沙緒という個人が消えてしまう事態が有ったとしても美沙緒が真琴の為に紡いだ楽曲が消える事はない
成功例の少ない手術に対して何か抵抗が出来るとすれば、自分を何処かに残すように祈りを音に乗せて放流する事だったのかもしれない。だからネットに曲を残して、用いたピアノを託して……
こうして託されたなら真琴だって応えなければならない。美沙緒によって結成のきっかけが与えられたPNOは真琴を中心とした楽園。だから伽耶という素晴らしいベーシストが居たとしてもPNOから真琴が抜けるなんて有り得ない
真琴にとってPNOは完璧な楽園とは言い難い。けれどそこを楽園としてしまったなら、楽園が奏でる音楽を求める者達の安息を守る為に彼は音を世に解き放ち続けなければならないわけだ
他方で伽耶を楽園から放逐して終わりにするのではなく、ソロプロデュースの形にしたのは意外だけど、良い着地点だったと思えるね
……その際の台詞がどう考えても告白以外の何物でもなかったのに他意が一切含まれてないって真琴は凄いなぁ(笑)
真琴が楽園で奏でた祈りは届き再会が約束された。彼はもう少しPNOに身を置きつつ、音楽的才覚を発揮していくのだろうと思える暖かいラストでしたよ -
Posted by ブクログ
同じテーマ性の作品なのだから『さよならピアノソナタ』要素を何らかの形で出してくるかもと思っていたけど、まさかこういう形でお出しされるとは!
第1巻では音楽を通して少女達と楽園を築き上げる工程が描かれた。続く2巻では楽園外での環境が少女達にどう影響するか、その際に真琴が築いた楽園はどのような助けとなるのかという点が描かれたような
一度ピアノを挫折してしまった凛子だから、バンドを通して復活できたならピアノの道に戻そうとする動きがあるのは当然。そのような揺り戻しに対し真琴達は他人故に凛子の家庭問題に首を突っ込むのは難しい。詩月の時は音楽を通して華道の腕前を上達させる事で親の束縛を黙らせたけど、凛子の場合は同じ音楽でありながらより難度の高いピアノに集中させるという親の意向が有り、凛子の母が軽蔑するバンドの人間である限り抗議すら聞いて貰えない
だから対処法を誤って初ワンマンが大コケしかねない状況に陥ってしまった。というより、凛子が発していた弱々しいメッセージを真琴が正しく汲み取れていなかったというべきか
ただし、結局は真琴達に出来るのって音を鳴らす事だけなんだよね。凛子を母の拘束から解き放つのは音楽しかない
真琴は凛子が音楽を奏でられる最高の舞台を用意した。でも、それ以上に凛子から弱々しさを吹き飛ばすのは選曲理由だろうね。真琴はいつだって凛子をステージの中央へと、楽園の真ん中へと招いてくれる。それは凛子に束縛する母から逃げる場所も立ち向かう場所もあると知らせるものとなる
最後、これを家庭の問題ではなく「わたしの問題」と言い切った彼女の姿は勇ましい
詩月に生じた問題もやはり他人にはどうしようもないもの。詩月の家庭環境も禄郎の病魔も一介の高校生である真琴に出来る事なんて一欠片も無い
代わりに、真琴に出来る事はここでも音を鳴らす事だけ。けれど、今度は聞かせる相手が異なっているね。余命が限られ親族の多くから嫌われる禄郎にとって、家庭に居場所が無く自分を頼る孫娘の行く末は喫緊の課題。それだけに詩月が慕う真琴に対して査定の形で音楽を奏でさせたのは、音楽を通して真琴は詩月が頼れる人間であるかを見定めようとしたからか
真琴が禄郎と行ったセッションは2回だけ。どちらも禄郎から合格点を貰えた訳じゃない。詩月を救える音楽ではない
真琴の音楽が真の意味で届いたのは禄郎を三途の川から呼び戻す際か。
聞かせる相手は意識が無いのだから本物の音を鳴らす必要はない。音の無い幻想のセッション。傍目に見る分には奇怪で奇妙な音楽。けれど、絶望に顔を伏せた詩月、詩月の行く末を見守れぬまま無人島へ旅立とうとしていた禄郎を引き止める最上の音楽となるね。
禄郎を呼び戻し、詩月を絶望から引き上げた。それは真琴で無ければ出来なかった事、そこに楽園があると示すセッション。禄郎が与えた合否判定は何よりも真琴の音楽への賛辞と思えたよ
そして朱音のエピソードはキョウコとの対決を含みつつ進行する話となったね
話の立ち上がりこそ朱音が詩作をしてみたいと言い出した事から始まっている。けれど、あっという間にPNOのマネージングについての話に移り、キョウコの登場へ至るからこれらのエピソードが朱音のものであるとは感じ難い。というより、朱音の話を展開しつつPNOの話を進行させた感じか
朱音は作詞をする理由を取り分を増やす為なんて嘯くけど、その実態はPNOを確かな居場所とする為なんだろうなと察せられるね
PNOに入るまで幾つものバンドを潰してきた朱音。PNOは真琴の才能に拠って潰れそうにはない。代わりに自分がいつまでも必要とされるか判らない。だから真琴が完璧に出来ているとは言い難い詩を担当する事に拠ってPNOに自分の居場所はあると確定させたかった感じか
だとしたら、キョウコの誘いは真琴を揺さぶるけど、同じくらい朱音を動揺させたんじゃなかろうか?
真琴にとってはキョウコのプレイングを眼の前で見せられて戦力外通告させられた形。朱音にとってはPNOが無くなってしまうかもしれない形。どちらにとっても切実で、バンドを続ける為に何をすればいいか魂懸けて考えねばならない問題
これは先の凛子や詩月の話と比べると、真琴達にはどうにか出来る余地のある問題。けど、プロミュージシャンを納得させるわけだから、実際にどうにか出来るかは別問題
ここで活きてくるのは朱音の詩作か。朱音は詩を作る上で「I need you」をどう訳すかを悩んでいた。この言葉の対象が誰であるか、何であるかは読者にとっては明瞭なのだけど、物語としても真琴としても不明瞭なまま。すると、真琴にとっての「I need you」の対象である美沙緒の話題になって、当然朱音はより真琴から必要とされたいとの想いを強くする事になって…
この必要とされたいとの感覚は双方向のものだね。勘違いしている真琴は当然として、不要と言われた朱音達にとっても互いを必要としている。このような感情から、PNOはバンドという形をしている事で楽園に成るわけではなく、あの4人で成立している事で楽園としても成立しているのだと見えてくる
そうこうしている内に真琴の中でキョウコを倒すという感覚が優先度の低いものになっていく様は印象的。キョウコから戦力外通告された事もバンドを解体されそうな事も腹が立っている。けれど、キョウコに認められたいとかそういう想いは何処かに置いてきてしまった
真琴が音楽を届けたい「たったひとり」、それはあの瞬間において間違いなくPNOの為だったのだろうなと思ってしまうよ。真琴にとっての居場所であり、凛子も詩月も朱音も居る居場所。そしてあの曲の詩を書いたのが朱音であるならば、朱音に最も届けたい歌となって
それを思えば、朱音が最後に告げたかもしれない言葉が「I love you」ではなく「I need you」に連なる言葉であるだろうと思えば、真琴の歌はきちんと朱音に届いたのだろうと思えるよ
そしてラストのオチですよ(笑)
確かにキョウコの発言は紛らわしかったけど、それが真琴を盛大に勘違いさせPNOの動力源に成るなんて誰が想像しただろうね(笑)
真琴ってこれまでも凛子や詩月の告白同然の言葉に全く気付かずスルー、なんて事態が多発していた。つまり彼を極度のニブチンと捉えればこのような事態もそりゃ生じ得るんだろうけど、それにしたってあんまりな勘違いですよ!
本作は基本的に真琴の視点で進行するから気付き難いけど、キョウコが指摘したように実はPNOにおいて最も厄介な問題を抱えているのって真琴なのかもしれないね(笑)