杉井光のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
杉井光先生の作品を読むのはこれで2度目。というか、『さよならピアノソナタ』以来
あらすじや表紙にどこか『さよならピアノソナタ』っぽさを感じてしまってどうにも読まずには居られなかったよ
そして内容はあの懐かしい熱量を彷彿とさせる要素を含みつつ、現代における若者達の音楽の楽しみ方を上手く作品に落とし込んだ作品に思えたよ
鬱屈とした想いを懐きつつも音楽に向き合わざるを得ない幾人もの少女達に寄り添う事になったのが本作の主人公・村瀬真琴
凛子達が持つ音楽の才能が非常に判りやすく華美であるのに対して、真琴の才能は控えめであり陰に籠もるかのよう。この控えめというのは才能が無いという意味ではなく、一見して判り易い才能を持つ華々しい凛子達に比べて、彼の何が凄いのかという点がすぐには判らない意味
真琴が投稿した動画の反響って冷静に考えれば凄いものだと判るけど、女装して投稿した事で再生数が伸びた事実が「実力に拠って評価された訳では無いのでは?」と本人含めて思わせる状態となっているね
けれど、美沙緒から押し付けられた音楽授業の代役も立派にこなせているし、合唱曲の編曲なんてのもほいほい出来ている。これらを「実は音楽の才能が無かった」なんて表現する事は宜しく無い
自信が無い彼の一人称視点である為に誤魔化されそうに成るけれど、よくよく見れば彼も一角の音楽家である事が判る
けど、本人の自覚としては凛子達に劣っている認識が続く。だからか華々しい才能を持ち、自分を魅了する音を鳴らせるのに、音楽に向き合う事すら辞めてしまいそうな凛子達を放っておけなかったのだろうね
音楽で絶望しているなら音楽で吹っ飛ばせ。これまで接してきた音楽で悩みを吹き飛ばせないなら、新たな音楽の光景を目の前にぶちかませ。そのような無茶苦茶な方法で真琴は少女達に寄り添っていく
この流れがいつしか控えめであった筈の真琴の才能を更に花開かせ、衆目に晒す流れも素晴らしいね
最初に関わる事になった凛子は音楽の申し子という表現を判りやすく当てはめられるタイプだね
真琴が面倒でいやらしい感じにアレンジした楽譜を少し見て弾いただけで暗譜してしまう。また高校入学前はコンクール荒らしなんて呼ばれる程にコンクールで優勝していた
そんな彼女が衝突してしまったのは音を望ましい形でなぞるだけでは到達できない領域か。彼女自身も自らの音を価値のないものだと考えるようになったのに、それでも彼女は音楽を捨てられなかった
そんな凛子に真琴がぶちかましたのはそれこそ音色を操作できる鍵盤楽器。あのシンセサイザーなら凛子が願い望んでいた音色を完全に再現できる。けれど、混じりっ気がないが故にそれは音楽家の凛子を満足させず、むしろ混じりっ気のある音楽こそ彼女が求めて止まなかった音だと気付かせる流れは素晴らしいね
このような遣り方にこそ真琴の真髄が詰まっていると言える
次に関わったのは詩月。本人は音楽に染まりたいと思っているし、ドラム愛が抑えきれていないが、家庭の事情や周囲が彼女に望む在り方によって音楽に己を染める事が許されない
結果、音楽の道が絶たれようとしていた。勿論、音楽の才能を愛する真琴はそのような事態を許せないが一方で他人の事情に踏み込む事を思い切れない弱さがあるね
ここで真琴の背を引っ叩いてくれるのが先に真琴に解放された凛子となるわけだ。凛子が仕掛けたセッションは詩月が自信を無くした一因かもしれない音合わせの焼き直しのようで居て、そこに真琴を挟み込む事で二人の音が調和される形となっていたね
凛子と詩月は幾つもの壁を挟んで音を重ね合わせようとした。普通なら届かない音が互いに耳を澄ませ、相手に届けようと思う事でセッションが可能となった。その上で真琴は二人が綺麗に合わせようとしていた音をぶっ壊してしまった。けれど、そのような無茶苦茶な音こそ詩月にとって気持ちの良いものだったと教える工程は真琴と凛子のコンビネーションでなければ出来なかったものだろうね
朱音は音楽以外に居たい場所を持っていなかったのに、バンドを続ける調和性がない為に音楽の居場所すら失いそうになっていた少女か
朱音は真琴や詩月が陶然とするような音楽の才を持っているのにそれを発揮できる居場所を持っていない。というより、手近な居場所に居着く為に才を敢えて使っていないというべきか
なら、彼女と向き合う為に真琴はバンド的な居場所を作る必要に駆られる訳だ。ここで面白いのは今度は詩月が朱音を解放するのに一役買う点かな。凛子の解放に真琴が対面したように、詩月の解放に凛子が前に出たように。彼女らはバンドを名乗り始める前から互いの音楽を必要とする繋がりが生まれていた
そうして行われたセッションはその後に作り上げられる楽園を前借りしたようで居て、既に完成形に近い形として出来上がっていたもののように思えたよ。あの時点で彼女らは互いの音に惚れ込んでいたと伝わってくる
少女達が集まる流れは全てが運命に拠るものとか、偶然が積み重なってとかそういったもので無いのは少し印象的かもしれない
本作における物語の始まりの地点を何か一つ定義するとしたら、それは美沙緒が真琴を見出した時ではなく、やはり真琴が演奏動画をネットの海に放流した時だったのではないかと思えてしまう。その時から全てが回りだし、美沙緒が真琴を見出し、真琴が凛子達と関わるようになったのだから
美沙緒が真琴と凛子達の出会いを導いたのは事実だけど、そこから様々な音楽が奏でられる楽園が築き上げられたのは確かに動画がきっかけだろうから
そういった意味では真琴達の在り方を変えるのが再び投稿動画となるのは納得の展開かもしれない
バンドをしたかったわけではない。音楽で世界に向けて訴えたいものが有るわけでもない。それでも鳴り響かせずには居られない音があって、十全に奏でさせてやりたい音楽家達が居て、音を届けてやりたい相手が居て……
人気や今後の活動を考えればあのライブシーンで真琴が出ないのは正解
でも、彼らPNOが音を奏でているのはそういった理由に拠るものではなくて、もっと純粋で尊い動機によるもの
だから幾千幾万のコメントから奇跡にも近い確率で一番大切な言葉を掬い上げられるし、そこから始まったアンコールはPNOが最も奏でたい音になる
いや、それにしても真琴が消してしまった初期衝動が込められた楽曲を凛子達も知っていたというのは驚きだったけども
最後に示された楽園の場所、美沙緒から託された大切な音の数々
終わり方は残響音だけが響いて他の音は鳴り止むかのように静かなもの。そのような構成だから読後の余韻を感じられるし、次に鳴る音がどのようなものか想像を膨らませてしまったよ -
購入済み
復活(?)おめでとうございます
このラノベは前作からかなり好きでしたので、この再開は本当に嬉しいです。ただ今巻はそれを差し置いても気になる所がありました。
今巻も色々事件が起こりキリカが捜査し解決するのですが、犯人の動機がかなりショボいです。とある事件簿みないな長年の因習とか強い恨みなどとは言いませんが、使ったトリックの大きさにしては動機が薄っぺらい印象です。ただまあ、待望の再開一作目ということで★+1です。 -
Posted by ブクログ
このシリーズでは一番面白かった。
単に麻雀の話題が出てきたから、ということもあり得るが、それだけではないだろう。
軽めの文体、重苦しい出来事、ほとんどどうでもいいかもしれないことの描写の細かさ、ストーリーの構成は、きちんと「小説」のレベルだ。というか時々話が重すぎて「ぜんぜんライトじゃないよね、これ」と思う。
続き物だから、これまでの話(17巻)を読んでいないと、うまく受け取れない場面も多々あるだろうが、その点を差し置いても完成度は高いと思う。
エンターテイメントの部分と、小説のコアの部分。これからの物語作家はそのバランスを見つけないといけないのだろうと思う。 -
Posted by ブクログ
おもしろかった! でも22万円事件とキリカ父襲来事件が立て続けだったので、なんだか話がどんどこ進むなあ〜という印象もあった。神メモ読んでる感じだと、キリカ父襲来事件は1冊だけで出しそうなんだけど。短編二つくっついたみたいな印象?んん?多分22万円とキリカ父に関連がなかったからなんだろうけど、普通に考えたら個々の大事件にそんなに関連性あっても不自然だし、別にこの二つの事件が独立しているのはいいのか。ただなんとなく、一巻として出しているから何かしら関係あるのかなって勝手に想像してしまっただけだった! とにかく、キリカとの仲は深まってなによりだ。2巻も見つけないとなー!
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Posted by ブクログ
新しいレーベルの第一弾として書かれた杉井作品。
題名や書店店長が主人公な所から、こんどは流通業界を巡る口八丁な業界物語かなと思ったら、ちょっと違った。
店長は元伝説の不良でその筋からアイドルのストーカー騒動の解決を依頼されるという筋書きの神メモ的軽ミステリー。
いやこれ正直書店店長の設定要らなかった気がするな(笑)
主人公が腕力に自信があるのはいつもと違うので、いつもより少しへたれ度は低い(笑)
でもトーヘンボクなのはいつも通り。
吉村さんも苦労するなあ。
謎解き的には半分ぐらいは分かったけど、最後までお兄さんの正体には気づかなかった。
やっぱりかわいい探偵役が必要かも(笑)
この一冊で終わるのはもったいない気がする。
出来ればシリーズ化して欲しい。 -
Posted by ブクログ
イベント満載の学園に、ついに生徒会選挙の時期がきた。
今こそ、反旗を翻すべき時。
無敵にしか見えない生徒会長に勝つために! が
全員の合言葉。
それはそれで間違ってないと思いますが
口を開くと憧れやら、認めてほしいやら。
動力源にはなると思うのですが、何か違う?
どうすれば勝てるか、どうしたらいいのか。
右往左往していますが、どうしてこうなったのか、の
ニュースソースが…どういう事ですか?!w
黒幕と言っても、案外間違ってない気がします。
打倒、を掲げているので、学園生活(?)はシリアス。
情報を得るためだけに出て行った先では…頑張れ…w
何かこう…読んでいて、政治のシステムに
詳しくなったかのような錯覚を覚えます。 -
Posted by ブクログ
熱い。ホント熱い。
作中の季節は冬で雪とか降っているのにめちゃ熱い。上手く表現することはできないけれど、この作品で書かれていることは心に深く突き刺さるのだ。少年漫画のような熱さではなく彼らの置かれている状況が青春風景の中に居るからなのだ
それにしても直巳の鈍感さは何なのだろうか。正直言って読んでいて全力で殴りたくなる程に鈍感である。ようやく相手の想いに気付いてからも全く動けず極度の優柔不断っぷりを披露している点にはもう賞賛さえ贈りたくなる。だからこそこの巻では皆の想いが溢れ出し直巳に心労を負わせることになるのだが。
直巳は徹底的にぶちのめされる。何度も傷付き涙を流し倒れてしまう。ある意味痛々しくさえもあるのだが(プレゼントの件含め)、因果応報というべきかそれとも巡り合わせというべきか悩む点ではある。クライマックスでは今までにないほどボロボロの状態のフェテケリコがステージに立つ様は読んでいながら「もうやめてくれ!」と言いたくなってしまうほど
この作品を読んだ事で様々なジャンル、時代の音楽に触れてみたいと思うようになったのは大きなきっかけだったのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後のライブシーンを敢えて見せないなんて作者はなんて憎たらしいことをするのだろう。
恋愛モノには王道展開とも言える主人公よりもヒロインのことを知っているライバルキャラ登場。これにより直巳の心は大きく揺れ、謎の失意に襲われてしまう。こういった時には更に事態をややこしくするような事件が起きたりものだけれど本作ではそんな展開にならないばかりかライバルであるはずのユーリまでもが直巳に惚れてしまいある意味スッキリした展開に!何でだ!?
正直言って作中に登場する音楽用語や作曲家の名前はさっぱりだったりするのだが、それでも気にならず物語の雰囲気にのめり込めるのは流石だと思う。
ラスト数十ページはまるで最終回のような雰囲気で、このまま終わりだったとしても十分納得できるようなノリだった(そうなってしまったら物足りなく感じてしまうだろうが…)。実際には次巻が最終巻。どのような感動、そして終わり方を魅せてくれるのか非常に楽しみであり、同時に寂しいような気分になってしまう