あらすじ
霧間凪──彼女は炎の魔女と呼ばれている。人知れず人のために戦う正義の味方。だが彼女の気持ちは誰も知らない。その心の痛みを、そして秘められた宿命を。日常に潜む悪と、そして世界を裏から監視する統和機構の合成人間たちと凪が死闘を続けている間にも、さらなる邪悪が彼女に迫りつつあった。かつて凪に救われた少女、織機綺が奇妙な影と遭遇するとき、その悪夢は幕を開ける──すべてを呑み込む魔女戦争が。 「正義なんてものは、ただの戯言だわ。真の存在はそんなものを超越しているものよ。善を嘲笑し、悪を弄ぶ──それが我が愛しの宿敵、魔女ヴァルプルギス。じきに私たちは未来を賭けて戦うことになるわ……」 闇の中で微笑むいまひとりの魔女は、凪の運命をどう導いていくのだろうか……?
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Posted by ブクログ
「正義だけではつまらないし、悪だけでは未来がないし、じゃあどうすればいいのか」というのがテーマの今作。第一作で、物語の展開がやや遅く感じました。
霧間凪が、魔女ヴァルプルギスに憑依されるまでを描いた今作ですが、中々に凪の過去が掘り起こされるので、凪推しとしては非常に楽しい作品でした。
相変わらず凪はクールで、それは戦闘中でも同じで、冷静に敵の分析ができているところがすんごくカッコいいです。
〝正義と悪〟って言うと、私たちの日常では中二病っぽく聞こえてしまうかもですが、意外と緩く考えれば普段の生活にも当てはまる気がします。
例えば、「変わり者だから」という理由で、「いじっている周りが〝普通の人〟」みたいな感じになってる状況。
ようするに、その場にいるほとんどが賛成した意見が正義であり、それに反する意見が悪──みたいな感じです。そういう状況、私はどうしても「皆に反する側」になることが多く、周りに流され、「あっ、じゃあそれでいいです」と、自分の意見を押しつぶしてしまうことがあるのです。
それはトラブルにならないので楽なのですが、どこかプライドのようなものが傷つけられる。といって逆らって面倒事になるのも嫌……その判断がすごく難しいんです。
凪だったらそんな状況、絶対に自分の道を選びますよね。他人に合わせるなんてこと、中々しなさそう。父親の〝たとえ世界がどんなに揺れ動こうとも、その中で揺らぐことのない心を持つんだ。それだけがきっと、おまえをほんとうに守ってくれるものになる──僕は、きっと間に合わないだろうから……〟という言葉を信じて、自分の考えを貫き通すんじゃないでしょうか。まぁそんなトコです。以上。
「小さいことにくよくよするな、とかよく言うわよね──でも、あれって変だと思わない?」
「何が?」
「だって大きなことだったら、くよくよなんかしてられなくて、ただ呆然として、ひたすらに途方に暮れるだけじゃない? くよくよできるのは、小さいことだけだわ。他に、くよくよできることってあるのかしら?」
──P81、冥加暦と村津隆の会話より
『勝敗を分ける選択は、実際にその必要が生じたときにしていては間に合わない。負ける者は、自分がいつから負けていたのか知らないものだ』
──霧間誠一〈無敗と必勝のあいだ〉
「君が〝かくあるべき〟だと思っている世界は、ぼくには関係がない。現実を良くしようとも、悪くしたいとも考えていない──それを思うのは人間の領域だ。世界というのはただ、漠然と存在しているだけで、そこには意志はない。その中で考えているのは人間の方だ」
──ブギーポップの言葉より
「どうしようもないことに出会ったときに、いったい何を最後まで残しておくのか──それ以外のすべてを差し出しても、それだけは守らなければならないものは何か、それを知ってさえいれば、あなたは何にも負けることはない。そう──たとえ相手が最凶にして最悪の魔女だったとしても、ね……」
──夢の中、冥加暦が村津隆に告げた言葉より
「たとえ世界がどんなに揺れ動こうとも、その中で揺らぐことのない心を持つんだ。それだけがきっと、おまえをほんとうに守ってくれるものになる──僕は、きっと間に合わないだろうから……」
──生前、霧間誠一が娘に残した言葉より
それは警告だというものもいて
兆候だというものもいて
私がその場所に立っていたとき
それは空から落ちてきて
心に語りかけてくるのがわかった
すべては我々次第で
決めることができるのは
こちら側からだけなのだ……と。
──ナイン・インチ・ネイルズ〈ウォーニング〉
Posted by ブクログ
えー
人ってのは多面的である。
様々な面を持ち、時には「二重人格なんじゃないの?」とまで言われたりする。
だが、それはある意味で正しいとも言える。
人というのは自分の中に複雑な面を持ち合わせているからこそ、社会生活を過ごせるのだ。
というか、他者と付き合う上で、常に同じであってはどうにもならなくなってしまう。何故なら、相手もまた多面的だからだ。多面的に対して一面的であってはどうにもならない。
それこそ、炎と氷のように相反するしかないのだろう。
ところで、『正しい』とは何だろうか。
正しい、という言葉はそこかしこで耳にすることができるが結局のところ、本当に『正しい』ものが何かというのはいまいち判然としなくて、それこそ人の数だけ正しいがあるような気がする。
これと同じように悪というのも多面的なものだ。
様々な人々がこれは正義だのこれは悪などと言ったりする。
しかし、『本当の』正義とか悪とかが何なのかは分かっていない。
この世には『善に対する正義の優位性』なんて言葉があるくらいなのだが、それにしたって個人の主張と社会の主張が食い違うがゆえに生まれるものだったりする。
結局のところ、正義とか悪なんていうものは人それぞれな部分が大きい。
これは人間そのものが多面的であるがゆえに生じるものなのだ。そして「人間が二人いれば戦争が起きる」という言葉通り、多面的で二元的な正義と悪は対決するしかないのだ。
その時に必要なのは正義におもねることなく悪に屈しない精神なんじゃないかな、とか言ってみたりして。
そんな感じ。