沼野充義のレビュー一覧
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『ソラリス』
人間は罪を背負い、記憶に刻む。
それと向き合う孤独の先に、どんな未来があるのか?...
1. 物語
心理学者ケルヴィンは、未知の意識体である「海」に覆われた惑星ソラリスの観測ステーションに赴任する。
しかし基地は荒廃し、研究者は異様な挙動を見せていた。やがて彼の前に、10年前に自殺したはずの妻ハリーが姿を現す。
海は人間の脳から記憶や罪悪感を読み取り、実体(訪問者)として送り込んできたのだ。ケルヴィンは苦悩の末、彼女を再び失う悲劇と向き合う。
2. テーマ
本作の核にあるのは「絶対的な他者とのコミュニケーション不可能性」と「人間中心主義への批判」である。
『100分d -
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ネタバレ海外の小説、SFともに苦手なので、どうせ読み終えられないだろうな…と恐々と手にしてみた。きっかけは「kotoba」2026年夏号の、三宅陽一郎氏による連載「文学がなければ人工知能はない」で本作が取り上げられており、ソラリスが送り込んでくる「客」について、「ソラリスの海の知能は、現在のLLM(大規模言語モデル)と酷似している」(P.147)、「この擬似人間は人工知能と言っていいだろう」(P.149)と指摘されていたこと。
結果的には、もの凄い衝撃を受けたとしか表現しようのない面白さだった。早速再読中。(ちょっとずれるかもだが、ソラリスの海の知能を人が理解できないことについて、保坂和志さんの「この -
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スタニスワフレムの作品を初めて読みましたが、
ちょっとレベルが違うように感じました。圧倒的。
ソラリス研究の中身のところ、研究の歴史や現象の分類のところは、まぁ正直に言えば退屈にも感じましたが(SFにありがちな)、
海と、海が生み出した、客、にどう対峙していくのかところは、圧巻の描写と考察。
これぞSF。
読んでる方もぐらつきまくる。
小説に書いてある言葉を、鵜呑みにできない。
なかなかない読書体験でした。
訳は、ポーランド語の原作から日本語への直接の訳というもので、訳者の沼野氏の解説も必見。
作中でも、解説でも言及されているとおり、人間中心主義、人間形態主義が批判されていますね。
そし -
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惑星ソラリス。星の大部分が海に覆われている。ソラリスの海は高度な知性をもった未知の存在。科学者たちは長年その海を研究しているが、意思疎通・分析・理解ができない。ある日、惑星の宇宙ステーションで異変が起きたと報告があり、心理学者クリス・ケルヴィンが調査にやってくる。宇宙ステーションの研究員たちは精神異常・混乱をきたしており、意味不明な言動をしている。また「来訪者(visitor)」と呼ばれる存在が徘徊している。人間の姿をして物理的実体はあるが、人間ではない。ケルヴィン自身にも、死んだ妻ハリー(の複製)が現れる。ソラリスの海は人間の記憶(トラウマ・罪悪感・愛情・抑圧された過去)を読み取り、その記憶
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SF小説傑作、やっと読む機会ができました。本書は海の惑星ソラリスを研究するために宇宙ステーションに派遣された心理学者を主人公として描かれた作品です。ネタバレになりますのでストーリー関連についてはコメントしませんが、これこそ「未知との遭遇」を描いた作品という印象を持ちました。人間がどうやっても理解できない知性が存在しているのではないか、そしてそれは知性が高い、低いというスケールの問題ではありません。人間とは「違う」知性の存在です。これは現在大きなテーマである人工知能を考える際の視点にもなるでしょう。ソラリスという未知の存在、そしておそらく永久に?不可知の存在ではないか、というものに対峙した時に、
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始まりさえも覚えていないこの存在が経てきた、様々な経験や感情の一覧表だろうか?束の間の生を享けて解放された山々の願望と情熱、希望と苦悩の記述だろうか。数学が存在に、孤独と断念が豊穣に変容することだろうか。しかし、このすべては伝達不可能な知識なのだ。もしもそれを地球のいずれかの言語に翻訳しようとしても、価値と意味のあらゆる探索は無残な失敗に終わり、向こう側に残ったままだろう。しかし、結局のところ、『信者』たちが期待しているのは、そういった科学より詩学の名に相応しい新発見の数々ではないのだ。なぜならば、彼らは自分でもそれとは知らずに、〈啓示〉を待ち望んでいるのだから。それは人間自身の意味を説明して
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惑星ソラリスの海へ
探索 実験と称してX線を照射してから
客人として登場するようになった
得体の知れないもの
その現象は
人間の潜在意識の中に深く沈む何者かを具現化
実体化したもので
知性を持つソラリスの海から
未知なる人間へ向けての
コンタクトのようでした
その具現化したものに
恐怖 混乱 懐かしさ 愛情を感じてしまう人間の弱さが浮き彫りになっていました
ソラリスの海の精緻でダイナミックな情景描写には
ただただ圧倒され続けた
人間の叡智が全く及ばない未知なる存在の
ソラリスの海
それに対峙した時の
人間の奢り 愚かさ 生物としての限界を
はっきりと見せつけられた気がしました
それで -
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“チェーホフの魅力、たっぷり丸わかり”
チェーホフの作品を読んでみようと思ったきっかけは、『1Q84』(村上春樹)でした。
“チェーホフがこう言っている。(中略) 物語の中に拳銃が出てきたらそれは発射されなくてはいけない。”
こんな記述があり、村上春樹さんが影響を受けているのはドストエフスキーだけではないと知り、興味を持ちました。
訳者の沼野充義さんは、定訳となっているタイトルに変更を加えるといった、あらたな試みをしています。作品選択も素晴らしいです。
年がら年中、恋なしにはいられない、オリガちゃんのお話(「かわいい」)、家庭教師をしている少年の兄と恋愛中の場面をのぞき見されてしま -
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ネタバレ1.理系っぽい解決プロセス
問題に対して観察、分析、先行研究を確認して、解決策を考えるのは理系っぽくて面白かった。自分が正常かどうかを確認するために天体物理学の計算をするなんて考えられない。研究のためにどんな犠牲も厭わない覚悟は素晴らしい。(ただ文献調査パート長すぎ...)
2.ミステリっぽい空気感
なにが起こるのかわからない不穏な空気感がミステリっぽかった。会話シーンもどこか探り合いを行っているようで、衝突しているところもあって、なにか起きそうな緊張感が常に伝わった。先が気になってどんどん読み進めてしまった。
3.未知の存在とのコンタクト
意図があるのかないのかすら読めない未知の存在との -
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20代の頃にタルコフスキーの「惑星ソラリス」を観て、ソダーバーグの「ソラリス」を観ました。
そして最近コミック化されたと知り、原作の本書とコミックを同時に読みました。
うっすらとそうじゃないかなぁとは思っていましたが、タルコフスキーもソダーバーグも原作とはかけ離れていて、自分としては原作が1番面白く、知性が高く感じました。
原作は未知とのコンタクトを本質的な主題にしていて、1番リアリティを感じました。
途中のソラリス研究の史実を語るところは冗長になりましたが、意図している所だなと理解できたので、全体としては読みやすく、とても深みのある内容でした。
アクション要素や派手な展開は皆無で、静か -
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ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムによる『架空の書籍』の書評集。
本の内容を個別のパーツにばらして、ひとつひとつを解説・批評することが書評のおもしろさだとすれば、架空の本の書評はそもそも「全体」がないのに「一部」だけを切り取って摂取することになってまずその経験自体が奇妙で楽しかった。
それを前提に、この本は架空の書評をするというアイデアを超えてすごい。ひとつひとつの「架空の書籍」につぎ込まれている想像・思考が尋常ではない。
『新しい宇宙創造説』『とどのつまりは何も無し』『生の不可能性について/予知の不可能性について』など、いくつの分野でどれだけの教養を蓄えたら書けるのかちょっと想像もつ -
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ネタバレPS5の「The Invincible」というゲームをジャケ買いして遊んだところ、実は原作は小説であるということを知ったので、気になりすぎてこの新訳版を買ってみた。
スタニスワフ・レム、一生きちんと名前を覚えられる自信がないが、一冊読み終わった今ならなんとかなる、かもしれない。
まず装丁が良い。半透明の表紙の内側からうっすらと見えるLEMの文字となんか丸い図形。
そして全体的に翻訳が大変素晴らしく、直訳感、翻訳感がほぼない。そして時折出てくる単語が普段遣いのものではなく、日本語なのに意味を知らなかったりそもそも読めなかったりして、自分の語彙のなさを嘆くと共に、翻訳のセンスを感じて震える。