沼野充義のレビュー一覧
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わたしが参加している読書会の、10月の課題図書だったので読んだ。
理由は自分でもよくわからないがロシア文学が苦手、戯曲が苦手、ということでチェーホフは読んだことがなかったのだけれども、意外とおもしろかった。
ある夏、ソーリンの(おそらく少し田舎の)家に集まった文化人の会話……としかまとめられないなあ。いろいろなエピソードが重層的に進行するのだけれども、わたしはそのうち、作家志望の青年、トレープレフと、女優志望の若い女性、ニーナのwannabe2人の精神的な破滅と成長の物語が中心なのではないかな、と思った。トレープレフは成長しないwannabe、ニーナは最後の最後で一皮むけるwannabe。わ -
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ロシア文学って“誤解を受けやすい”と思う。その思潮や言動が必ずしも日本人が美徳と考えているものと一致せず、この本は特に、他の露人文豪の作品を並べて見ても、日本人からすると不可解なものが多いように思える。
したがって、自分の感性に合う・合わないだけでこの作品群を評価してしまうのは早合点であり、もっと人間本来の真性に照らして“深く”読むべき。
そうなると分量としては少ないこの短編集の作品を読み終えるのは私にとって意外と時間がかかった。有り体に言うと「この作品、何が言いたいの?」と感じて終わる作品もいくつかあり、1つ読み終えました、ハイ次、とは中々ならず、熟考のためしばらく本を置くというのも1回や -
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大学のゼミでこの本からとった「いたずら」の一編を読んだ時からすごく気になっていた。そして思ったとおりはまった。
訳者による気合いのはいった解説(もはや「ロシア文学講義」である)が短編ごとに挿入されるのは、ちょっと野暮ったくはある。けどそのおかげで童話「おおきなかぶ」の謎の「一本足」くん(とても笑える)にも出会えたし、リルケの「トスカ」という言葉をめぐる切実な手紙も素敵だし、なによりチェーホフの逸話はどれも面白いので良しとする。
なかでも自分的に大ヒットは「牡蠣」だ。絶賛。大拍手。
解説にもあるけれど、ピュアな想像力を前に「わ!うれしい!」となっちゃうこと請け合いなのだ。
あと女の人にまつわる -
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訳者の表現が偏りすぎな部分もあるが(とくに他のロシア文学も読んだことのある自分はナッちゃんで興ざめ)、作品ごとに解説があり、全体的に講義をうけているような雰囲気で、自分のようなチェーホフ初心者にはありがたい一冊だった。
解説は、近くて遠い国ロシアのわかりづらい文化などにも及んでいて、これをきっかけにロシア文化を知ってみようと思った。
もったいない。
いままでの人生でチェーホフを知らなかったなんて。
急に詩的な羅列が入る部分など秀逸で、その言葉の選び方のセンスまで憎たらしいほど素敵である。
訳者がチェーホフを「七分の死に至る絶望と三分のユートピア希求の夢」というふうに表現しているのだが、この分 -
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「新訳でよみがえる」ということであるが、実はチェーホフを読むのはこれが初めてである。
翻訳物でしかも古い時代の戯曲の場合、まずその言葉遣いからして馴染めない事が多いが、本書は、現代の俳優に向けての新訳であるということで、非常にセリフが現代的であった。思わず何箇所か声に出して読んでしまった。大変刺激的で演劇的興奮をもたらすセリフばかりである。
演劇界や文学界の事情に疎いため、この作品が「悲劇」として捉えられているということを知らなかった。「かもめ」についてレクチャーしてくれた人も、この作品の喜劇性について言及していたため、最初からそういった目で読んでしまったということもあるがが、しかし読後の感 -
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ソラリス は単なる未知との遭遇を描いたSFではなく、人間の自己中心性や科学万能主義の限界を浮き彫りにする作品だった。
人類は宇宙進出の過程で未知の知性と出会うことを確信していた。しかしその知性は、「人間に似た存在」であり、意思疎通可能であるという前提がどこかにあった。
その考えを根底から覆すのがソラリスの海である。海は何を考え、何を目的に活動しているのか全く分からない。人類は詳細な研究の末に「ソラリス学」という学問まで築き上げるが、そこで提示される理論はどれも決定打にならず、調べれば調べるほど理解から遠ざかっていくような皮肉がある。
さらに印象的だったのは、海が研究員たちの抑圧された無意 -
Posted by ブクログ
意思を持った地球外生命体を「海」にしてしまうという大胆な設定が目を引くが、物語の中で繰り広げられるのは古典的なラブストーリーであり、ある種の幽霊譚であり、作中作『ソラリス研究の十年』における細かすぎるSF設定であったりと、読みどころは多い。
しかしオールタイム・ベストにも挙げられる本作に対して物申すのは気が引けるのだが、展開される様々なテーマ一つ一つが重厚すぎて、恐らく本書の最重要テーマであろう「理解を超えた知性とのコンタクト」の部分が霞んでしまった印象を受けた。かつて映画化された際は、ロマンスの部分をピックアップした作品になったようだけど、そりゃ原作者にしてみたら本意じゃないよなあと思う。