中山元のレビュー一覧
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ネタバレ人間が「正常である」という思考そのものを侵犯しようと試みること、これがこれからのフーコーの思考のエチカとなる。p36
【レヴィ=ストロースの構造主義】p71
サルトルとメルロ=ポンティにおいては、人間の行為の意味と価値は、歴史の方向性が決定するものであった。しかしレヴィ=ストロースは、意味とは体系における要素の差異で発生することを示したソシュールの言語学に依拠しながら、意味を生み出すのは社会の構造であると指摘した。そして歴史とは、共時的な社会構造が内的な理由から変動することにすぎないと考えたのである。
<一般文法>p94
「思考は単一な操作であるとしても、言表することは継起的な操作である」 -
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ネタバレ近代資本主義の成立を人々の内面から推し進めていった資本主義の精神と禁欲的にピュウリタニズムとの関係を社会学的に追求したもの。
以前に岩波文庫版も読みましたが日経BP版のほうが読みやすいです。ただ岩波文庫版は解説が充実しており、その解説と今回の日経BP版の本文を併せて読むのがよいかと。
主な内容は、、、
近代資本主義は商業に対する倫理的規制がない(営利を追求できる)地域・場所では実は生まれておらず、むしろ営利を敵視するピュウリタンの経済倫理(世俗的禁欲、労働を天職として励むという心情)こそが資本主義の精神として、近代資本主義の成立・成長に大きな貢献をした。
このピュウリタンの経済倫理は長期間 -
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説明不要のルソーの名著「社会契約論」。社会契約論のプレ版ともいうべき「ジュネーブ草稿」も収録。
ジュネーブ草稿にあるように、著作の主題は、統治の原則と市民法の規則について論じている。そこには、当時のルソーが、新たな社会体を創造しようという、意欲が満ちあふれている。
ルソーは、世の中が自然状態から社会状態に移行するための、新たな胎動を「社会契約論」によって創造しようとしたのであろう。
それは、本文中の「自然状態から社会状態社会状態に移行すると、人間のうちにきわめて大きな変化が発生することになる」という一文から察することができる。
では、本書で述べられている本旨は何か。
統治の原則は国民の共 -
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以前岩波文庫の難解な翻訳で挫折したため、日経BP版で再読。
冒頭第一節には、
「カトリックの支配というのは極めて穏やかで形式的な支配であったのだが、プロテスタンティズムの支配は家庭内の私的な支配から、職業的な公的な生のすべての領域にいたるまで、考えられるかぎりで最も広い範囲にわたってしんとの生活のすべてを規制するものであり、限りなく厄介で真剣な規律を伴うものだった」
とある。
宗教改革に対しては、カトリックの専制的な支配からの脱却といった間違ったイメージをもっていたため、この一文については衝撃を受けた。
宗教改革者は、カトリックの市民に対する支配が不十分であるとし、後のピューリタン的圧制に -
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著者の中山元は、光文社古典新訳文庫でカントの「純粋理性批判」やニーチェの「善悪の彼岸」、ルソーの「社会契約論」、フロイトの「人はなぜ戦争をするのか」等々、次々と新しい翻訳を世に出し続ける人物。しかもその新訳がどれも素晴らしいという稀有なそんざい。その意味で、ヘーゲルにおける長谷川宏と双璧をなすでしょう。
その中山元が古今の名著を並べて要約するのが本書。
ホメロス、プラトンから始まり、レヴィナス、デリダまで扱うのは28冊。
ただ、惜しむらくは28冊にも及ぶ古典を要約したために、ひとつひとつに割く紙面が少なくなっていること。これなら、『正義論の名著』と銘打って4冊組くらいにしても良かったので -
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近代国家観の基礎。
ただ、ホッブズ-ロック-ルソーという、
社会契約論の三大古典として並べると、
やはりルソーは、研究者気質の書き方ができない性質の人であることから、
一般意志を始めとして、重要な概念の捉え方に難儀する。
殺人者に対する処刑や、徴兵の記述は、
原理論としてはそうなることも仕方ないと今の立場からは思うが、
本人も気付いて記しているように、著者自身、大変困惑している。
いくつかの注意点を挟みながら、
今と照らし合わせながら読めれば面白く感じるかな、と。
(この中山訳は、読みやすさを考慮してかの意訳が多く、原文や岩波や中公などの別翻訳版と比較して読まれることが望ましい)
不平 -
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この巻は、理性をいかに鍛錬するかとか、「道徳」の構築に向けた思考の動きとか、本書の「応用編」的な部分となっている。つまりカントは既に、次の「実践理性批判」へ向けて、カントは動き出しているのである。
やっと光文社新訳文庫版『純粋理性批判』全7巻を読み終えたわけだが、カントのこの著作とは、結局何だったか。
それまでの経験主義としてくくられる著作家たちを「独断論」として批判し、緻密な思考を展開して見せたこの書物は、18世紀「近代」を切り開いた、やはり革命的だったと思われるし、現在読んでみてもその思想はじゅうぶんに刺激的で、挑発的である。
しかしカントの思考の枠組みが、せいぜい18世紀までの範疇に限定 -
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この巻では「神」について扱われる。
ヨーロッパにおける既存の「神の存在証明」は批判され、カントオリジナルな物として、「道徳的な神学」が提起される。
これは神が最初に存在し、その認識(信仰)から人間的な様々の思考が生まれてくるのではなく、その逆に、道徳的思考の果てに、人間みずからが「神の存在」を「要請」するのである。(P.128-132付近)
この驚愕すべき倒錯により、神学は人間の「理性」に服従するものとなり、ここに西洋的な「近代」が出現するのだ。
これは歴史的にきわめて画期的な飛躍であるが、この新たな神学については、この本ではそれ以上深く追究されない。 -
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難解といわれるカントの文章だけれど、光文社の新訳でとても読みやすくなった一冊。
本書は、カントの政治哲学、歴史哲学に関する著作5編が収められている。それらを通じて語られるのは、人が自立し理性的であることの重要性。そしてそれを実現させるための自由が社会にあることの重要性。人間は本来、平穏で安楽な生活を営みたい本能がある一方で、社会を形成して生きていかざるを得ず、そのため他社との競争が必然的に生まれる。そのことこそが、人間の成長、そして長い目でみると人類の進歩につながる。
これだけでカントの思想の全体像を語ることは到底できないだろうけど、単なる宗教を超え、かつ人類としての運命論的な宿命を超えて、個