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Posted by ブクログ
カントの晩年の著作を集めたもの。
カントの中では、短くてわかりやすい。
抽象化された一言一言は、現代の諸問題、例えばイスラム国とかトランプさんとか、イギリスのEU離脱とか、そういったものも痛烈に批判しているようにも感じる。
学ぶことがなぜ必要か?
戦争はなぜ起きるのか?
反社会的思想はなぜ必要なのか?
道徳だけではなぜ平和にならないのか?
国家とはなにか?
そんな問いに、明確に答えてくれていて、気持ちが良い。
人間は、矛盾した存在だからこそ、進歩してきた。
それをきちんと認めた上で、より高い次元に哲学的に考察することが必要なのではないか。
Posted by ブクログ
イマヌエル・カント(1724~1804年)は、プロイセン王国に生まれ、『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書を発表し、認識論における所謂「コペルニクス的転回」をもたらした。ヘーゲルへと続くドイツ古典主義哲学(ドイツ観念論哲学)の祖とされ、彼による超越論哲学の枠組みは、以後の西洋哲学全体に強い影響を及ぼしている。
本書には、カントの政治哲学、歴史哲学に関連した重要な論考である、「啓蒙とは何か」、「永遠平和にために」のほか、「世界市民という視点からみた普遍史の理念」、「人類の歴史の憶測的な起源」、「万物の終焉」が収められている。
「啓蒙とは何か」のエッセンスは、冒頭の一段落に集約されている。「啓蒙とは何か。それは人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでることだ。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないということである。人間が未成年の状態にあるのは、理性がないからではなく、他人の指示を仰がないと、自分の理性を使う決意も勇気ももてないからなのだ。だから人間はみずからの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる。こうして啓蒙の標語とでもいうものがあるとすれば、それは「知る勇気をもて」だ。すなわち「自分の理性を使う勇気をもて」ということだ。」
本稿が発表されたのは1784年、近世から近代の転換点と言われるフランス革命(1789年)の直前で、「啓蒙」という概念がイギリス、フランスからプロイセンに入ってきて、一般市民にも教育の関心が高まってきた時代で、その時代の要請に応える形で書かれたと言える。しかし、それから2世紀以上を経た現在、我々は「自分の理性を使う勇気」を持ち得たのだろうか? 第二次大戦のファシズムは言うに及ばず、現在世界を席巻するポピュリズムも、「自分の理性を使う勇気」を放棄した結果の現象なのではないだろうか。。。今こそ読み返す価値のある短著である。
また、「永遠平和のために」は1795年に発表された。同年はフランスとプロイセンがバーゼルの和約を締結した年であるが、同和約は将来の戦争を防止するものではなく、戦争の戦果を調整する一時的な講和条約に過ぎず、こうした条約では永遠平和の樹立はできないと考え、カントには永遠平和の実現のための具体的な計画を示す必要があった。
そして本稿では、永遠平和を実現するための予備条項と確定条項が示されている。予備条約では、①将来の戦争の原因を含む平和条約、②継承・交換・売却・贈与等による国家の所有、③常備軍、④国家間の紛争を理由とした国債の発行、➄他国に対する暴力による内政干渉、⑥相互信頼を不可能にするような敵対行為、を禁止するとしている。また、確定条項では、平和の条件として、①各国の政治体制が共和的なものであること、②国際法は自由な国家の連合が基礎となること、③世界市民法は普遍的な歓待の条件に制限されるべきこと、が定められている。
しかし、カントは、永遠平和の実現は容易ではないとし、本書を「公法の状態を実現することは義務であり、同時に根拠のある希望でもある。これが実現されるのが、たとえ無限に遠い将来のことであり、その実現に向けてたえず進んでいくだけとしてもである。だから永遠平和は、これまでは誤って平和条約と呼ばれてきたものの後につづくものではないし(これはたんなる戦争の休止にすぎない)、たんなる空虚な理念でもなく、実現すべき課題である。この課題が次第に実現され、つねにその目標に近づいてゆくこと、そして進歩を実現するために必要な時間がますます短縮されることを期待したい。」と結んでいる。第二次世界大戦の後、(現代しか知らない我々には)未来永劫続くとさえ思われた東西冷戦は20世紀末に終結したが、その後の世界は、文明・宗教間の衝突の渦の中におり、解決は到底不可能なようにも思える。しかし、「永遠平和」は、カントの言うように、義務であり、根拠のある希望であり、実現すべき課題であり、人類として諦めることは許されないのだ。
今こそ、18世紀にカントが希求した啓蒙への夢とヨーロッパ的な共和国(=永遠平和)への夢を、改めて考えるべきときなのだと思う。
(2019年12月了)
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