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Posted by ブクログ
"昨年の後半からハンナ・アーレントを集中的に読んでいる。
もともと気になる思想家だったんだけど、今、なぜアーレントかというと、世の中が全体主義的なものにむかっているのではないかという感覚的な怖れがあるのだと思う。
そして、人間の多様性と異なる人との対話とか、自分の内面の一貫性(インテグリティ)とか、人間の心の強さ(美しさ)と弱さ(悪をなす心)とか、わたしが、個人的にいろいろ悩んでいたり、考えている主題にとても関連性が高い思想家で、自分の思考に刺激を与えてくれそうな人だからかな。
わたしは、ある思想家を学ぶときに、最初に入門書は読まずに、分かろうが、分かるまいが、まず、本人の書いた本を読んでみる。できれば、2冊以上、読んだところで、入門書を読むことにしている。まずは、なんとなく「自分で読んだ感じ」というのを大切にしたうえで、他の人がどう理解したのかというのを知りたいと思う。
自分が読んだ感覚を大事にするということと同時に、ちょっとクイズみたいなところもあって、自分のここの読みはやっぱそうだったんだよな、と思ったり、分からなかったところがなるほどと思ったり、いろいろ発見がある。
さて、中山元さんの「アレント入門」は、わたしの関心にとって、ど直球な本であった。取り扱っているのは、「全体主義の起源」「人間の条件」「イェルサレムのアイヒマン」「道徳哲学のいくつかの問題」で、「全体主義はどうして起きてしまったのか」「どうして人はかんたんに巨大な悪に加担してしまったのか」「それを防ぐための方法はあるのか」みたいな問いを中心にアーレントの思想をかなり明確に説明してくれる。
あらためて、アーレントのメイン・テーマが確認できたし、それがだんだん発展していくプロセスが腑に落ちた感じ。とくに、「イェルサレムのアイヒマン」の思想的重要性が明確にされていて、ここは驚きだった。「アイヒマン」は、もともと雑誌に投稿されたルポで、他の入門書では、それが巻き起こした騒ぎを中心に紹介されることが多いのだが、この「入門」では、アーレントの思想の一つの到達点として扱われている。自分が、なんとなく読み飛ばしてしまったところに大事な論点があったんだな、と目から鱗がたくさんおちた。
あらためて、この「入門」を読むと、アーレントという人は、自分にとって本当に切実な問いを本気で考え続けた人だったんだなと思う。
彼女の本を読んでいると、難解なんだけど、「な〜んだ、そんな当たり前のことをそんなに難しく考えていたんだ」と思ったり、「ちょっと、そこ論理の飛躍があるんじゃない」とか、「最初になんとなくの答えがあって、それを正当化するロジックを古典からもってきてない」みたいに思うことがある。
ある意味、そうやって揚げ足をとりたくなるのは、彼女が、論理的な一貫性や体系性を求めていないからだと思う。彼女は、自分にとって切実な問いを徹底的に考えて、自分なりに納得できたことだけを書いているのだと思う。
わたしは、その彼女の思考プロセスと結論にかなり共感を感じるのだが、そこに波長があわない人にはきっと穴だらけの議論なんだろうと思ったりする。
彼女は、哲学、思想、古典の教養の分厚さは普通ではないのだけど、ある意味、アマチュアの哲学者なんだろうと思う。
反論しようと思えば、いろいろできるだろう。
が、アーレントの魅力は、自分の意見だけが正しい訳ではないという前提があって、そういう反論に対して、オープンなところかな。
「入門」という位置づけだけど、1冊目に読むには、やや難しいかもしれない。入門書のなかでは、矢野さんの「ハンナ・アーレント」が一番分かりやすいかな?"
Posted by ブクログ
アーレントの思想の全体像をわかりやすく解説している入門書です。
『全体主義の起源』や『人間の条件』で論じられている公共性の問題にまつわるアーレントの議論を明快にときほぐし、そこでの議論にもとづいて『イェルサレムのアイヒマン』でアーレントが何を問題にしているのかということに切り込んでいきます。その上で、アーレントがソクラテスの道徳性やカントの共通感覚などの思想からなにを学び、全体主義や公共性の喪失といった現代的な状況のなかでどのような倫理の可能性を見いだそうとしていたのかが論じられます。
アーレントという思想家には、どことなく魅力を感じつつも、ポストモダン思想の軽やかさに一度は魅了された者としては、「公共性」という問題設定に窮屈さを感じていたのですが、本書を読んでその思想の根幹にあったものと、自分自身がどの点に引っかかりをおぼえていたのかが明確になったように思います。
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