中山元のレビュー一覧

  • 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス

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    フロイト 欲動論と局所論から「人間はなぜ戦争をするのか」について論じた本。


    人間の自己破壊の欲動と道徳的人間に至る過程を解明している。表題以外は専門的だが、訳者 中山元 氏の解説のおかげで 読めた

    フロイトの人間像、戦争に対する態度、戦争における国家像は いずれも悲観的。まずは 最悪に備えよ というメッセージとして捉えた。人間に希望を残すキーワードとして、文化の発達、他者愛(ナルシズムからの脱却)、超自我を取り上げ、道徳や良心の源泉として論じている


    鬱病に見られる自己破壊欲動(死の欲動)と超自我の対立を見ると、死の欲動の強さを実感する。フロイトの「人間は他者を犠牲にしてでも自分の

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    2016年08月03日
  • フーコー入門

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    網羅的に、一貫性を持って、手堅く、フーコーの著作を解説。最初に読む本として、まさに入門として適切ではないだろうか。

    ・ある種の自由は、直接に制約を加える社会と同一ではないとしても、それに劣らぬ拘束的な効果をもたらす。
    ・カントが試みたのは、人間の理性の限界を明らかにすることだったが、フーコーにとって理性の定めた限界を〈侵犯〉することが重要な課題となる。
    ・精神医学が科学となったから狂気が疾患として認識されたのではなく、狂気が「精神の病」として位置付けられたからこそ、精神医学と心理学が可能になった。
    ・歴史に目的があるという考え方は抑圧的な機能を果たすことがある。「人間の目的」や「正義」に適っ

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    2016年04月13日
  • 幻想の未来/文化への不満

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    ネタバレ

    昔の作品なはずなのに
    現在読むと衝撃を受ける作品です。
    うん、彼は生まれるのも早すぎたように思えます。
    ですが、このような警鐘を昔にしてきたからこそ
    今の状態をよく眺めることができるように思えます。

    科学技術が進歩した今、
    宗教はある種の転換を迎えているのかもしれませんね。
    結局のところマイナスの方向にしか
    動けなくなっているのですから。

    トラウマのところが結構薄ら寒いです。
    これは日本でもありえないことではないので
    要注意です。

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    2016年04月12日
  • フロイト入門

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    フロイトの思想をていねいに解説している本です。

    筑摩書房からは他に、妙木浩之の同じタイトルの本が刊行されていますが、そちらはフロイトの思想の現代的な意義を取り出すという内容になっていたのに対し、本書はフロイト自身の思索の過程をていねいに追いかけて解説しています。

    精神分析という営みそのものに懐疑的な読者にとっても、フロイトの思想それ自体を知ることのできる、優れた入門書ではないかと思います。

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    2016年04月12日
  • 人間不平等起源論

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    ネタバレ

    社会契約論よりは読みやすい部類に入るでしょう。
    ただし、解説なしで読むのはかなりつらいので
    面倒くさくても、解説はきちんと読みましょう。

    そもそも私たちが人間としての
    人と協力し合う、という選択肢を選び始めてから
    不平等というものは生まれてしまったのです。
    だけれども、原初に戻る?と聞かれて
    私たちはイエスということはできないことでしょう。
    もう戻るには遅すぎます。

    そして、この本を読んでいて違和感を覚えるでしょう。
    これって、今の状態のままじゃないの。
    結局富めるものは強いまま、
    そうでないものは搾取されるまま。
    自由に生きることさえ、許されないわけで。

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    2016年01月21日
  • 社会契約論/ジュネーヴ草稿

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    ネタバレ

    教科書でもこの書名は出てくるでしょう。
    でも大学等でこれを読み進める機会がない限り
    読む機会もまずないでしょう。

    非常に難解です。
    そう、理想の国家について長々と出てきます。
    ちなみにこの2つは同じものですが
    微妙に違います。

    共通なのはキリスト教のところですね。
    これは当時としては強烈なことを
    いってしまっているので教会を
    確実に敵に回しています。

    この本はフランス革命の
    きっかけになったそうです。
    ある制度にどっぷりつかってしまってましたからね…

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    2016年01月11日
  • 社会契約論/ジュネーヴ草稿

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    『社会契約論』と巻末の解説を読んだ。ルソーの言う「一般意志」というのが、昔からどうもうまくイメージできなくてもやもやとしていたのだが、これを読んでやっとわかった。やはり解説本を何冊も読むより原典(訳本ではあるが)にあたる方が早いなと思った。「一般意志」についてルソーはかなり丁寧に繰り返し書いてます。「一般意志」は立法を行うのであり、執行権に関わるものではない、ということ、また、一般意志とは、自分よりも全体を優先するということではなく、それぞれの成員が他人にも納得できるような自分の都合を出し合う中で形成されるものであるということがわかっただけでも収穫でした。

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    2015年10月15日
  • 社会契約論/ジュネーヴ草稿

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    ネタバレ

    社会契約論のみ読破。訳がわかりやすく珍しくやや理解できた。
    「どうすれば共同の力のすべてをもって、それぞれの成員の人格と財産を守り、保護できる結合の形式をみいだすことができるだろうか。この結合において、各人はすべての人々と結びつきながら、しかも自分にしか服従せず、それ以前と同じように自由であり続けることができなければならない。」という問題の解決策が社会契約論。
    具体的には自らと自らの所有する全権利を共同体の全体に譲渡する。(誰にも同じ条件が適用され人びとは他人の条件に無関心になるとあるがどうだろう。)
    そして自らがさしだしたものと同様の権利を契約によって受け取る。

    全ての人民のとって共通する

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    2014年10月19日
  • 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編

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    ネタバレ

    哲学は、文章が文字化けしてるぜ!
    と感じる人にお勧めの本。

    ただし、結構言い換えている部分も
    あったりするので、
    これらの作品を完全に汲み取りたい場合は
    堅めの訳のを読まないと難しいかも。

    生きていくうえで、
    大命題になるであろう
    「平穏に暮らすには」という命題に
    答えたもの。

    ただし、これは答えを知らないほうが
    ある意味、幸せと言えましょうか。
    そう、そうなった場合を考えると。

    私はいまだに、未成年のままですな。

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    2014年07月26日
  • 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス

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    解説が確かに秀逸。
    先に読んでおいて損はないです。
    それでも、訳の仕方がいいせいなのか
    解説を読まずしてもそんなにつっかかるところは
    少ないですがね。

    人という生き物は、
    本当に不思議で、底知れなくて
    自分という存在すら難しいな、
    と感じます。

    うつ病のそれは、また違った見方ができる、
    という店で、すごく斬新でした。
    それと同時に、ショッキングな部分も
    出てきていましたがね。
    でも、的を射ているな、と感じました。

    私は一番、心的装置のところが
    惹かれるものがありました。

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    2014年06月19日
  • 実践理性批判2

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    道徳的である(この表現は正確さが足りない)ことは予想以上に困難であることが判明。私の考える道徳というものはカントでいうところの適法性の道徳でしかなかった(振る舞いとしては倫理的と言えると思うけど)。
    教会の悪いところは、悪がそこにあるからではなく善の代用品があるからだ、というヴェイユの言葉を思い出す。
    最高善という概念は魅力的であるけれど、逆接的に神はいないと言っているように聞こえる。別にいいんだけど。都合の問題なのかとふと思ったり。

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    2014年05月14日
  • 社会契約論/ジュネーヴ草稿

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    「エミール」「告白」「新エロイーズ」など様々な著作のあるルソーの著書。

    難しい。

    これは購入してじっくり読み込む部類の古書です。

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    2013年12月13日
  • 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編

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    カントの論文『永遠の平和のために』『啓蒙とはなにか』などの論文をまとめた文庫本。

    啓蒙とはなにか、またなぜ啓蒙が必要なのか。

    平和のためになにがなされるべきなのか。

    人類にとって大きなテーマであるこれらの問いに様々な意見を加えてゆく。

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    2013年12月09日
  • 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編

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    深い。
    啓蒙とは自らがまねいた未成年の状態から抜け出ること。

    いったいどの位の人が啓蒙されてることになるのだろう。
    啓蒙も正しいものと正しくないものとあるのではないか。

    永遠平和のために
    常備軍を放棄、と言ってみたり、互いに競わせて連合を作って均衡を保てと言ってみたり矛盾をはらみながらも、第一時対戦も起こる前からこのようなことを論じてるなんて。

    200年以上経って、進歩したところもあれば前より複雑化したこともあるし変わらないこともある。

    永遠平和が実現されるためには、牧歌的生活に戻るしかないのか、それとも相互牽制による表面的なものなのか。

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    2013年10月23日
  • プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

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    すべてのキリスト者にたいして、できる限り多くの利益を獲得するとともに、できる限り節約するよう戒めなければならない。しかしその結果はどうなるかというと、富が蓄積されるということなのだ。

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    2013年09月08日
  • プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

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    「ところで労働はそれ以上のものである。何よりも、神が人間の生活の自己目的として定められたものなのだ。」

    カトリックやピューリタン、そしてプロテスタント等様々なキリスト教派の観点から「労働」を考察した本。
    なぜ、という原因の部分から深い洞察が見受けられる。

    日経BPの本は翻訳が程良く読みやすいが、それでもやはり内容を理解するのは骨が折れる。

    禁欲に生きようと自律してきた当時の人々とは違い、現代では禁欲的に生きなければならない。それが分業による専門性の追求であり、そのためには何かを捨てて生きなければならない。そうすることで、富は増大し、それを他者へ使うことで、神の偉大さをより多くの人に伝える

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    2013年06月10日
  • 正義論の名著

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    正義(デイケー)=公正さの原理

    正義の概念は政治哲学と道徳哲学の交わる場において、結節点のような役割を果たしている。

    【流れ】
    ①古代ギリシャにおいて正義とは、ポリスの秩序を維持し、調和することを目指すことであった。共同体にとっての善、公共善を目指すことが正義だったのである。
    ②ホッブズにはじまる社会契約の思想は、人々は公的な善という外的な要因ではなく、自分自身の利益のために社会を構築すると考える。スピノザ、ロック、ルソー、カントと、この社会契約の思想は脈々と受け継がれ、カントにおいてはついに国家を超えた世界市民の秩序まで構想されるようになった。
    ③ヒュームやスミスのようとともに、契約では

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    2013年06月17日
  • 正義論の名著

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    「正義とは何か」について考えたくて読んでみました。各名著の紹介と歴史的変遷が綴られていて大変参考になりました。
    デリダは、いつか原著を読んでみたいと思います。

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    2013年05月18日
  • ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの

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    いろいろな文学作品を精神分析的に解釈。それぞれの作品の説明もある程度されているけど、読んでないとわかりにくいかも。
    『詩と真実』が気になったのと、「不気味なもの」のタイトルは聞いたことがあったものの未読だったので読んでみた。heimlichとunheimlich、反意語なのに意味のかぶるところがあるってのがちょっと興味深かった。

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    2013年03月17日
  • 職業としての政治 職業としての学問

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    プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神が面白かったので読んでみました。

    マックス・ウェーバーの2つの講演を基にした「政治」と「学問」に関する論考。

    「職業としての政治」より、「国家」とは正当な物理的な「暴力」の行使を独占することを要求し、それに成功している唯一の共同体と定義。いきなりインパクトがある。

    支配と政治家の類型が歴史的に語られ、心情倫理と責任倫理という概念の対比に行き着く。100年近く前の講演であるが普遍性がある。読み継がれる理由が分かる気がする。

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    2013年02月03日