中山元のレビュー一覧

  • 純粋理性批判 4

    Posted by ブクログ

     「批判」の内容からすれば、人間の客観認識を構成するメカニズムを詳解する「超越論的感性論」から「原則論」までが前半とするなら、理性の限界を論ずる本第4分冊の「超越論的弁証論」以降が後半ということになるだろう。しかし実際の章立ては大きく「Ⅰ. 超越論的原理論」と「Ⅱ. 先験的方法論」の2部構成であり、全体の8割が前者に含まれている。こういう章立ての奇妙さも「批判」を近寄り難いものにしている要因だと思う。

     本分冊で焦点が当てられるのは「理性」。純粋理性概念、即ち〈理念〉を利用して知性の働きに統一を与えながら、事象の原因を際限なく遡上し〈無条件的なもの〉の探究に邁進するという本性を持つ。この理念

    0
    2021年07月11日
  • 純粋理性批判 1

    Posted by ブクログ

     まさかこの年でカントを読み始めるとは思ってもみなかったが、最近読む本読む本にやたらカントへの言及があり、そんなら一度読んでみようと決めた次第。訳書の中では最も平易だという触れ込みのこの光文社古典新訳文庫を選んだが、それでも僕には超難解。本文は全体の約半分しかなく、残りは訳者による頗る丁寧な解説が占めているという相当に親切な作りだが、それでも1回読んだだけでは殆ど理解できず。予め簡素な入門本を読んだ上、本書の本文と解説を何度も何度も行き来しつつ自分なりの読書ノートを作ってもまだよくわからず、最後に詳細な解説本を読んでようやく何となく、といったところ。通常の4、5倍は時間をかけ文字通り四苦八苦し

    0
    2021年07月12日
  • 道徳の系譜学

    Posted by ブクログ

    ニーチェは、今の日本人こそ読むべきだと思う。言葉の一つ一つが自分に向けられているかのように刺さってくる。
    中二の頃、岩波文庫で読んでいたときと違って、訳が新しいとニーチェでもものすごく読みやすくなっている。これは論文というよりむしろ詩と言った方がいいかもしれない。

    0
    2021年06月29日
  • 責任と判断

    Posted by ブクログ

    責任と判断
    (和書)2012年03月07日 19:48
    2007 筑摩書房 ハンナ・アレント, ジェローム・コーン, 中山 元


    あまり期待していなかったけど、読んでみるととびきり良い本だった。なんだか今までの自分自身を問い直すことができるように感じた。

    ・・・十分な数の人々が「無責任に」行動して、支持を拒んだならば、積極的な抵抗や叛乱なしでも、こうした統治形態にどのようなことが起こりうるかを、一瞬でも想像してみれば、この〈武器〉がどれほど効果的であるか、お分かりいただけるはずです。・・・

    自分自身と矛盾することができない。

    0
    2020年09月27日
  • 純粋理性批判 2

    Posted by ブクログ

    先に入門書を読み過ぎたか、、、

    大凡で色々理解しちゃったあと、こっちを読むと、入門書ではぼんやりしてたところがクッキリして気持ちいい!というのはあるのだけど、どうしても超越論的とか、アプリオリとかにだんだんと辟易してきて、あーもー鬱陶しい!という気持ちになってくるというか、そして眠くなってくるというか、、、

    理論の厳密さは入門書では得難いけども、なんとなくつかんじゃうと、この延々との厳密さについていけなくなりました、、、

    こうなるのでは、と、予想してましたよ、自分のことなんでね、、、

    入門書を3冊も読んだせいで、書いてあることの衝撃的な発見はあまりなく、論理の厳密さはとうぜん、こちらの

    0
    2020年08月04日
  • 善悪の彼岸

    Posted by ブクログ

    永劫回帰、超人、ルサンチマンなどの概念を生み出したことでも知られるニーチェだが、
    なぜニーチェが、どうゆう理由で、それらの概念、価値を創り出したのか? それを良しとしたのか?
    この本ではそれらのワードはまだ出てきてはいないが、その結論に至るまでの思考の変遷をニーチェと共に追体験することが可能な本だ。

    結論が正しいかどうかの議論とは別に、
    その結論に至るまでの道筋に対峙していくことができる。時代を超えて。
    それが古典の醍醐味である。

    善悪の彼岸というタイトルのこの著書は、
    過去から作り上げられてきた良し悪しという価値基準をぶち壊しにかかるニーチェの精神の奮闘を共に味わうだけでなく、参加するこ

    0
    2020年04月26日
  • ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの

    Posted by ブクログ

    古典なれど最新。
    フロイトの理論は、フロイトの物語として読んでいく視点も必要なのだろうと思われた。しかしそれでいて学ぶことは多い。
    3人の女性のイメージは非常に興味深い。

    0
    2019年11月26日
  • 社会契約論/ジュネーヴ草稿

    Posted by ブクログ

    1762年ルソー50歳の時に出版。
    2019年の現在から約250年前に刊行された本だ。

    当時、フランスは王政による封建制度だったが、人民に主権があるとしてこの『社会契約論』を打ち出した。


    が、
    即刻発禁処分となりルソーも迫害を受けて国外逃亡する。
    そして、ルソーは祖国の地を踏むことなく没する。

    1778年のことだ。
    それから11年後の1789年にフランスで革命が起こる。

    ルイ16世はギロチン処刑、マリーアントワネットも車で引き回しの後処刑される。



    そして、
    1794年革命政府により
    祖国フランスへ墓地が移されて、
    ヴォルテールの墓地の横で眠る。


    その革命の思想のルーツとなっ

    0
    2019年03月26日
  • 人間不平等起源論

    Posted by ブクログ

    ルソー著『人間不平等起源論』
    1755年に刊行され、7年後に刊行される『社会契約論』の元になる思想のエッセンスといえる書。

    1789年から始まりルイ16世が処刑され99年に終結したフランス革命の思想の元となったといえるルソーの書。

    ルソーは、教育学や恋愛小説や自伝など様々なタイプの書を世に出しているが、このルソーの政治哲学の刮目すべき点は、

    それまでの政治哲学のホッブズやロックなどが提唱した人間の自然状態への考察を、それは現代を生きる人間による枠組みから見た状態であり、結局は原始状態に遡って見極めることは誰もできなかったと喝破し、さらに遡って人間の自然状態から論考を進めて、その上で人間の

    0
    2019年02月12日
  • 道徳形而上学の基礎づけ

    Posted by ブクログ

    事物・言動の良し悪しの判断に、
    普遍性となりうるかどうかと問うことが道徳性を備えたものであるかどうかの判断となる。

    客観的かつ長期的かつ本質的な視点をもつ重要性を、気の遠くなるようなロジカルで組み立て、この原理の正当性と有効性を論じている。

    難解な書と言われるカントの著書だが、
    岩波文庫の『永遠平和のために』と比しても少し読みやすくはあった。

    カントの超がつくほどの規則正しい生活感と、このロジカルな思考の組み立て方に、カントという人間の特質を感じて仕方がない。

    0
    2019年01月17日
  • 人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス

    Posted by ブクログ

    フロイトとアインシュタインの手紙のやりとり。
    フロイトからの返答。
    戦争はなくならせることはできないのか?
    という疑問に対して。


    利害が対立した際に話し合いをして解決する動物というのはちょっと想像できない。
    人間の場合には、動物の本性としてある暴力が、知性によって優劣が決められるように取って代わっていく。

    暴力から知性の時代へ。

    0
    2019年01月13日
  • 道徳形而上学の基礎づけ

    Posted by ブクログ

    毎度のことながらカントの几帳面な議論の進め方に感動しつつも、厳密さにこだわるあまり、一見同じような内容の議論が延々と繰り返される、半ば宗教書のような展開には、集中力がきれそうになる。が、読み通せました。訳者による150頁以上にわたる解説も大変参考になりました。内容的には、ソクラテスやプラトンが訴えていた「善く生きる」ということを、ガチガチに理屈で固めて主張しているような感じです。

    0
    2018年09月19日
  • フーコー入門

    Posted by ブクログ

    基礎的なワードを丁寧に説明してくれ、入門書としてとても良かった。
    また、初期から後期への思想の変遷と、その中で一環した目的など、よくこんだけ綺麗にまとめたな、、という本。

    生権力に対して、抗うことは可能なのか。
    「真理のゲーム」を続けなければいけない。

    0
    2018年06月24日
  • 責任と判断

    Posted by ブクログ

    アレント後期の未刊行論文集。講演やスピーチとして聴衆に語る形式になっているので、いくぶん分かりやすい。なかで「独裁体制のもとでの個人の責任」は全体の要約ともいえるもので、国家の命令で犯罪に手を染めた個人の責任を問いかける。人間の責任の意味と判断の能力について考察する。判断の基準を喪失した現代こそ、アレントがもっと認められてもいいと思う。

    0
    2018年04月13日
  • 純粋理性批判 1

    Posted by ブクログ

    経験なしで認識ってできるんだろうか?
    先験的な認識ってどうやって可能なのか?
    神秘主義や聖書の啓示とどうやって付き合っていくべきか。
    改めて問いかけられてみるとむむむ。

    0
    2018年03月09日
  • 人間不平等起源論

    Posted by ブクログ

    面白すぎる。解説は繰り返しが多く蛇足な感じ。本編は本当に面白かった。考えたり想像したりする読書の中でかなり面白い部類の本。こういう本がきっと愛読書になるんだろうなって感じがした。また読んでみたいなと思う。楽しい時間が過ごせる。

    0
    2017年12月18日
  • 道徳の系譜学

    Posted by ブクログ

    第一論文は語源的に、良いと悪い、善と悪の系譜をたどっていく。これまでのニーチェの直感的、詩的な記述に比べ、論理的な記述が明晰である。

    第3論文まで読んで、人間の底無しの深淵を覗き込んだような気がした。すごい筆力だった。

    ヨーロッパとキリスト教、そして学問体系に挑み、瓦解させ、それでも、さらに生きよと言う。恐ろしい本だ。

    0
    2017年10月11日
  • フーコー入門

    Posted by ブクログ

    最近、ジュディス・バトラーの「ジェンダートラブル」と「自分自身を説明すること」を読んで、すごくフーコーの影響を感じた。

    フェミニズム系の論者の間では、フーコーはあまり人気がないと思っていたので、個人的にはなんとなく意外であった。

    というのは、私の個人的な偏見かもしれないが、アメリカの大学で政治哲学を学んだ2人の教授が、ともにフェミニズム系の女性で、一人は、「フーコーは女性のためになる哲学か?」みたいなエッセイを書いていたりしたことを思い出したりもするからだ。

    さて、そのフーコーだが、その知識と権力に関する緻密な分析は、圧倒的なのだが、読んでいて、なんだか元気がでないんですよね。

    0
    2019年01月25日
  • アレント入門

    Posted by ブクログ

    "昨年の後半からハンナ・アーレントを集中的に読んでいる。

    もともと気になる思想家だったんだけど、今、なぜアーレントかというと、世の中が全体主義的なものにむかっているのではないかという感覚的な怖れがあるのだと思う。

    そして、人間の多様性と異なる人との対話とか、自分の内面の一貫性(インテグリティ)とか、人間の心の強さ(美しさ)と弱さ(悪をなす心)とか、わたしが、個人的にいろいろ悩んでいたり、考えている主題にとても関連性が高い思想家で、自分の思考に刺激を与えてくれそうな人だからかな。

    わたしは、ある思想家を学ぶときに、最初に入門書は読まずに、分かろうが、分かるまいが、まず、本人の書い

    0
    2017年04月30日
  • 道徳の系譜学

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    人は欲望を満たすために社会を形成したが、その社会によって人は欲望を抑制されることとなった。社会における善は、自己肯定から辛抱強さへとその価値観を奴隷により逆転された。良心は自分の自由な本能を外ではなく内に向けざるを得なくなり、疚しい良心、として成長した。その良心は、禁欲的な生に高い価値があると解釈し体現する司牧者によって点検される。学問もまた価値を生み出す権力を必要とし、自らは価値を創造することが出来ないため、禁欲的な理想を求めるものである。禁欲的な理想の果実たる、真理の価値を問い直そう、というのがニーチェの主張だ。
    神に罪を被せたギリシアと神に罰を背負わせたキリスト教との対比が興味深かった。

    0
    2016年11月08日