中山元のレビュー一覧
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個々の人間がいかにして国際的な連帯を築くことが可能なのか。この本に治められた一連の著作を通じて、カントの政治哲学と歴史哲学を一望することができる。「啓蒙」の持つ可能性に絶対的信頼を寄せているあたりに時代の雰囲気も感じるのだが、カントが決して楽観的に「永遠平和」を唱えているのではなく、人間性がかかえる「非社交的な社交性」を冷徹に見つめ、それを与えた「自然」によって人間達が国際的な連帯へと導かれていくと考えるロジックが面白かった。中山元の解説にも大いに助けられ、カント入門には良い一冊。カントってとても真摯に人間の限界と可能性を見つめ、現実に向き合い、その改良を目指した思想家なのだと好感を持った。
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ちくま新書には、他にもカントやデカルト、ハイデガー等の哲学者や思想家の入門本があるので、それを読んでみたいと思った。自分は本来そういった分かった気になるようなものを読むのは好きでないのだが、思想の流れのようなものを大まかに掴んでみたいし、一人ひとり丁寧に作品を読んでいったのではかなりの時間がかかり疲れる。
以上の理由から本書を読んでみた。以前にバタイユ入門を読んだが、それよりも非常に分かりやすく、内容も自分にとって興味深かった。フーコーの造語であるエスピテーメー、エノンセ等の概念が理解しづらかったがそれ以外は問題なかった。以下に、自分が考えさせられたところを箇条書きで記す。
「人間学の罠 -
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[ 内容 ]
「真理」「ヒューマニズム」「セクシュアリティ」といった様々の知の「権力」の鎖を解きはなち、「別の仕方」で考えることの可能性を提起した哲学者、フーコー。
われわれの思考を規定する諸思想の枠組みを掘り起こす「考古学」においても、われわれという主体の根拠と条件を問う「系譜学」においても、フーコーが一貫して追求したのは「思考のエチカ」であった。
変容しつつ持続するその歩みを明快に描きだす、新鮮な人門書。
[ 目次 ]
序 現在の診断
第1章 人間学の「罠」
第2章 狂気の逆説
第3章 知の考古学の方法
第4章 真理への意志
第5章 生を与える権力
第6章 近代国家と司牧者権力
第7章 -
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やっと読めました。1755年!?本当に革命以前で貴族がいた時代とは思えない思想。神様です。現代に甦ってほしい本当に。今なお古さを感じない思想です。本当に素晴らしい。
関係無いですが翻訳本に星をつけるのはとても難しいです。特にこういう既に翻訳されている本の再訳。私はフランス語はできないのでもちろんこの本を原文で読むことはできないからルソーの書いた文章そのものを評価することはできないし、翻訳されると翻訳家の技術を通してこの本を読むことになるので果たしてこの評価はルソー自身についてなのか翻訳家を通じてなのか自分でも分からなくなります。少なくともこの翻訳では真っ直ぐにルソーの文章を受け取った感じはしな -
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1巻と違い、こちらはざっと読み飛ばした。自分の浅い理解であるものの、本書では純粋知性概念について述べている。つまり、アプリオリな知性は何かということ。
その際、カントが拠り所としたのは、論理学の判断表。例えば、量に関しては単称判断(このAはBである)、性質に関しては肯定判断(AはBである)など。
これらの判断表は、人間がアポステリオリに作ったわけではなく、人間のアプリオリに備わる知性であるとカントは考えた。
その正しさについて、ひたすら論じているものの、別にその正しさに関心はないため割愛。
アプリオリな知性は何か?という問いに対して、論理学から判断形式を持ち出し、これこそがカテゴリーで -
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「主権者とは、例外状態について決定を下す者のことである。」
非常に印象的な一文から本書は始まる。「例外状況とは、現行の法律では規定されていない状況であり、極端な緊急状況とか、国家の存立が危ぶまれる状況などとして示すことができるだけであ」る(14頁)として、正にそのような例外状況に国家の本質が示されるとして、以下、主権の問題について、これまでの主要学説を紹介しながら論じていく。
ケルゼンくらいは主要著作を何冊か読んだことはあるのだが、ケルゼンのほか、クラッベ、ヴォルツェンドルフ、カウフマン、メルクルなどの説とそれに対する著者の考えが説かれている第二章「法の形式および決定の問題としての主 -
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◯ 宗教改革のもたらしたもの、とくにルターの業績のうちで後世に最大の影響をもたらしたものの一つが、世俗の職業生活にこのような道徳的な性格をあたえたことである(150p)
◯ 神から目に見える形で祝福を与えられているという意識をもって、営利活動に従事することができたし、そうすべきだったのである。(480p)
◯ かつては修道院の小さな房のうちで行われていた禁欲が、現世の職業生活のうちに持ち込まれ、世俗内的な倫理を支配するようになった。(492p)
★各所で名著として紹介されている本書だが、私には難しすぎた。カルヴァン派、敬虔派、ルター派など、キリスト教の宗派に関する知識が必要だし、文章も難 -
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過去に何度か挫折したが、今回やっと全てを読み通すことができた。資本主義社会を知るために、『資本論』と並行して本書を読み進めたが、高校世界史、倫理に記載されないキリスト教の宗派が次々と登場し、途中で投げ出したくなったが、そこは耐え忍んだ。とはいえ最後まで読み通せたものの、全体的に理解できたかいうと正直自信はない。ただし、自分にはあまり馴染みのない「宗教」という概念が、他国では社会全体、個人を根本的に変化させるほどの力があることが伝わってきた。キリスト教圏と日本で、仕事、職業の向き合い方が根本的に異なることがわかってきた。今後もおそらく読み返すだろうが、次に読むときには、キリスト教の歴史を詳細に