井上靖のレビュー一覧
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ネタバレ久しぶりに噛み応えのある小説を読んだ感じがする。
どちらかというと歴史とか、いわゆる社会科の内容は得意ではない。大化の改新も壬申の乱も、ギリギリ試験のための勉強をしたくらいで、とうの昔に大概のことは忘れてしまってる。井上靖さんの作品も『しろばんば』辺りは読んだけど、この作品や『天平の甍』や『敦煌』は歴史への苦手意識があって読んでなかった。『敦煌』は西田敏行さんが出た映画は見たけど・・。
そういえば、この作品も読んでいて、『敦煌』で描かれてたような壮大な景色を連想した。映画を見ているような、鮮やかに場面が展開される感じがした。
万葉集は好きな(興味のある)部分とか関連本を読んだりしてるんで、その部分の人物関係くらいは頭に入ってるけど、その人たちがどういう風にその時代を構成していたかは、実はそこまで気にしていなかった。まあ、詩歌の鑑賞なんて、背景を無視して純粋にその歌に向かい合って味わうこともできるから。
それが今回、額田王、大海人皇子だけではなく、別個に鑑賞していた有間皇子についても、さまざまに入り乱れる人間模様を加味するとこんな風に読めるんだと、正直、今まで読まなかったことをちょっと後悔した。
ちなみに、今回はなるべく丁寧に読んだ。何しろ、人物名だけでも振り仮名が外れると読めなくなる人が多いんで、メモ用紙を傍において、人物名や時代、地名等、気になったことは書きとめた。なじみのない言葉は、すぐに辞書を引き、確認した。現代ではあまり使われなくて、辞書にはちゃんと載っている言葉がこんなにあるかと驚いた。
そうやって言葉の一つ一つを紐解いたことも、今回、じっくり楽しめた要因にもなったかもしれない。
いや、でも今だから、ここまでじっくり読み込めた部分もあるんじゃないかという気もしている。
去年から、私の苦手分野だった政治について自分なりに目を向けるようになってきて、ある時は憤り、ある時は胸を熱くし、そして最近は胸を痛めたりも・・。
そういう気持ちをいろいろ味わってきたおかげで、この小説に描かれている、遠い1300年も昔のお話に、より感情移入できたこともあるんじゃないかと。もしかしたら、こういうところから逆に学べることもあるんじゃないかとも思った。
そういう意味で、もっともっと今の人に読まれていい本だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ巫女として神の声を聞き、神の心を歌う額田女王。大海人皇子との間に十市皇女をもうけてからも、神の声を聞くためにその心は誰にも渡すまいと誓っているが、有間皇子や中大兄皇子への想いは結構人間的だと思う。神の心を歌うとしながら、いつしか中大兄皇子の心を歌うことに喜びを見出していくあたりも、「あなたの心は私だけが知っている」「あなただけは私の言おうとしていることわかるでしょ」的な気持ち、それを喜ぶ気持ちも、結局中大兄皇子に恋する人間の女性の気持ちに他ならない。神の嫁としての巫女的性格は、人に恋する以前の、男と関係を持つ前の乙女にこそふさわしい。そんな巫女のあり方は折口を彷彿とさせる。しかし、ある意味こじらせた?女心の書き方うまい。
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舞台は大河ドラマ「真田丸」の時代の一歩手前、 武田信玄に仕えた軍師、山本勘助の働きを軸にして、武田勝頼の誕生、武田家、命運尽きるを予感させる。
猛々しく荒々しい戦国絵巻というには、井上靖の真骨頂。芒が原に飄々とすさぶ風の印象が濃く、 むなしさがにじみ出るストーリー展開。
しかし、こうしていろいろの歴史的人物・事項など小説にしたものを読み継いでいくと、いままで頭に入ってこなかった歴史が、俯瞰図をのぞくごとくわかるようになるからおもしろい。
それにしても日本の年号はこうくるくる変わるのだろう
この小説でも、天文22年、弘治3年、永禄元年と変わっていく。 たとえ西暦に直したとしても、印象が濃くはならない。
仕方がない
日本の歴史を俯瞰するには複雑な思考がいるのだ。 -
Posted by ブクログ
大正時代に伊豆湯ヶ島という所で小学生時代を過ごした主人公、洪作の物語です。
学校や村で起こる小さな事件、そして狭い世界ながらも色々な人々との関わりを通じて、少しずつ成長していく様子が主に洪作の目線で描かれています。
作者の自伝的作品ということもあってか、心の動きの描写が生き生きとしていて素晴らしいです。時々自分の小学生の息子と重ねてしまい、ああ息子もこんな風に感じてるのかもなあと思いました。
いつの時代も、少年の心の動きは変わらないのですね。小説を楽しむ一方で、男児の育児書のようにも思えた一冊でした。
現在、続編の「夏草冬濤」を楽しく読んでいます。
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成吉思汗(チンギス・カン)の一代記です。
しかし成吉思汗、改めて凄まじいですね。日本では百姓からの天下取りをした秀吉が有名ですが、成吉思汗も一介の人(この本では部族に見捨てられた一家族)からユーラシア全体を覆うほどのとてつもない大帝国を一代で築き上げたのですから。
全ては成吉思汗の視点で描かれます。彼を取り巻く女性、母ホエルン、妻ボルテ、寵姫・忽蘭は心情を吐露する場面がありますが、何故か男性陣については発言や行動のみ記され、その心情は成吉思汗の推察でしかありません。そのせいでしょうか、どこか伝記のような雰囲気があります。
出自の疑念を自ら払拭するため、そして貧しい部族を裕福にするため、近隣諸国を征服し領土を拡大していく。そこでひたすら繰り返される侵略、殲滅、殺戮、略奪。おそらく文治の手腕もあったのでしょうが、そこはほとんど描かれません。そして最後の方で、裕福になったモンゴルの人々を見ながら、それが正しかったのか自問するシーンが印象に残ります。
(今は去ること40数年前;苦笑)学生時代に大好きだった井上靖さんの西域もの「敦煌」「楼蘭」「風濤」「蒼き狼」。久しぶりに読んでみようかと、今回チョイスしたのが血沸き肉躍る作品という印象があったこの「蒼き狼」でした。確かに面白いし、読み応えがあるし、一気読みに近い状態で読み終えました。でも、余りのモンゴル軍の殺戮の凄さにちょっと引き気味になったのも確かです。年なんでしょうね。