井上靖のレビュー一覧

  • あすなろ物語
    自伝的な小説。あすなろは檜になろうとする少年。
    親戚を心中で亡くしてしまう。女性たちが何人も出てくるが、そういう人浮きあうこともなく全然知らぬ人と結婚する。妻と子を疎開させてある少女と出会い仲良くなる。
    くまさんの妻。春さんが故郷に帰るそして、死。 色々あって生きてきた。
    信子と加藤の妹ともそれか...続きを読む
  • 蒼き狼
    チンギスカンの物語。一代にして南は、金、西夏、西はカスピ海に至る大帝国を築く。凄まじい征服欲、そして何より運が備わっていたからだろう。物語には無いが、チンギスカン没後もなお、版図が拡大していくのも興味深い。2016.8.27
  • わが母の記
    最後の年表で名前は変えられているんだなと知る。よって、ノンフィクションのカテゴリではないかな。親が死んで自分と死との距離が近くなる。親が死から自分をかばっていてくれたんだなという文豪ならではのセンスが光る。
  • 風濤
    朝鮮半島の悲惨な歴史の一幕を見たような。地理的な状況もあり、常に大陸の巨大な権力に怯えざるを得なかったのであろう。それに比べると日本は島国というだけで呑気なものなのであろう。それぞれの国には地理的な状況に基づいての歴史が必然となってあるものである。歴史はくり返すというのもあながち真っ赤な嘘ではない。
  • ヤマケイ文庫 穂高の月
    2016/7/18 喜久屋書店北神戸店にて購入。
    2018/2/20〜2/26

     「氷壁」の執筆の裏側や、氏と穂高との関わりなど、新聞・雑誌などへ発表したエッセイをまとめたもの。執筆時にはほとんど山の経験が無かったとは驚きであった。徳沢から横尾への梓川の美しさについては完全同意。
  • わが母の記
    映画を見た時、作中に使われる詩が好きで
    原作の方にも手を出したが、家族構成も違って詩も出てこなくて、映画はけっこう脚色されていたのだとわかった。

    では、映画でうたわれたあの詩はどこから来たのだろう。


    〝おかあさんと 渡る 海峡〟
  • 後白河院
    時代は平安末期から鎌倉幕府の始まるくらいまで、公家の衰退が進む中、公家のトップとして武家の勃興と渡り合う後白河院の生涯を四人の語り手が読み解く。日本史でも、あるいは時代劇時代小説でも影の薄い時代かなと思うが、藤原摂関家、平清盛、木曽義仲、源義経、源頼朝など顔ぶれは豪華。もっと掘り下げたい欲求と、南北...続きを読む
  • 楼蘭
    人間の智慧と言うものは何と言っても浅いもので…己が身を亡ぼす地獄の門へ向かって一歩一歩足を運んでいたのであります。文章とはこういう事なのか。直接的でないのが好きだけど。
  • 風林火山(新潮文庫)
     戦国時代ものとして読むと肩透かしを食らう。武田信玄の軍師、山本勘助を主人公にしてお話しはすすむ、山本勘助の軍師としての凄さは伝わるのだが、他はすべてに中途半端な感じがする。信玄も謙信もそのた周辺の武将についても本書では深く知ることはできない。表題の「風林火山」にしても説明なし、『孔子』本といい井上...続きを読む
  • 孔子
     曾根博義氏の解説を読むと、本書は『論語』の成立過程を結果から推測し、名句の紹介と解説を中心とした教訓書的な小説であると述べられている。『論語』について知りたければ本屋に良書がたくさんある。こちらを手にする意味は薄い。
  • 後白河院
    平信範、建春門院中納言、吉田経房、九条兼実の4人の人物の目から見られた、後白河法王の人物を描いた歴史小説です。

    平清盛をさんざんにてこずらせるほどの政治力を発揮し、今様に熱中し『梁塵秘抄』をものした文化人でもある後白河法王ですが、本作は4つの視点から後白河法王の姿が語られているとはいえ、彼のさまざ...続きを読む
  • あすなろ物語
    主人公の梶鮎太に託して、著者の少年時代から壮年になるまでの半生を描いた、自伝的作品のです。

    まずは、13歳の鮎太と、彼の曽祖父の妾になるりょうの暮らす土蔵に、りょうの姪で19歳になる冴子という少女がやってくる場面から、物語が始まります。冴子と、彼女が想いを寄せていた大学生の加島との関係は、同じ自伝...続きを読む
  • 敦煌
    史実かと思っていたのに、行徳も朱王礼も架空の人物とは…。驚いた。三国志もかじった程度だが、地名などが多少わかるだけでだいぶん読みやすかった。
    歴史物を読むと、今に至るまでの時代の連なりを感じ、今に遺産を遺してくれた人々に感謝したくなる。
  • 孔子
    自分の中で孔明と孔子が淡く混じっていたことに気が付いた本。論語を読もうと思いつつも、なんだかとっつきにくいから、そんな理由で読んでみた。小説として読み易く少し余韻が残る。
  • しろばんば
    和風トムソーヤ。少年の精神的な成長をいろんな側面からいろんな描写方法で描いている。肉親の死の捉え方はリアルだった。子どもの視点を克明に表現していると感じた。衰弱していくさき姉や腰が曲がっていくとともに丸くなっていくおぬい婆の様子が洪作との対比も巧い。ただ、若干冗長。
  • あすなろ物語
    全体的に暗いというか・・終始「あすなろ」の物語。


    そういう「いつかは・・・してやろう」という気持ちって若者特有のものだと思っていて、
    年齢を重ねるごとに落ちついていくものだろうかと思っていたけど、
    きっとそうではなくて、その人の性格によるんだな・・と思った。


    あすなろの人間はいつ幸せを感じら...続きを読む
  • あすなろ物語
    新潮文庫100冊2015から。読み終えた第一の感想としては、時代背景が興味深い。本当にその時代を生きてきた作者ならではの、戦前戦後の空気というか風習がごくごく自然に描かれている。これこそが物語の持つ力なのか。

    主人公が俺TUEEE系でも超人でもなく、ハーレムラノベの主人公のような平凡さとも違い、ま...続きを読む
  • 淀どの日記
    偉そうなことを書くと「淀殿のイメージ、基本を押さえた本」という感じを受けました。
    気が強くて誇り高い、けれど時の流れに乗れなかった、みたいな。
    残っている書状などみると優しい女性の面もあったようですしそういうところも書いてほしかった。むしろそんな淀殿の本がないか探したいです。
  • 北の海(上)
    文豪、井上靖が書いた自伝的小説三部作の最終章にあたる長編小説。実際に読んだのは単行本版。詳しいレビューは下巻のほうで。
  • わが母の記
    自分の母親の晩年を、死を、この様に言葉という形で表現できる作家という生業を羨ましく、また尊敬の念を抱かずにはいられない。

    認知症の祖母を想う。今祖母は、どのような世界を生きているのだろう。
    祖母と過ごした時間が愛おしく、また両親を思慕させられる一冊だった。