井上靖のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昭和33年(1958)の作品です。
司馬遼太郎の「梟の城」が翌年発表ですが、それ以前の、むしろ昭和初期に活躍した山手樹一郎(桃太郎侍の原作者)の世界に近い様に思います。そもそも疾風之介(はやてのすけ)などという命名にも一寸時代を感じさせます。もっとも眠狂四郎もほぼ同時期ですから、まだそういったチャンバラ小説の雰囲気が十分残っていた時代だったのでしょう。そう言えば疾風之介のニヒルさは狂四郎に通じる物がありますし、おりょうは梟の城のこさるに似ているようにも思います。
古さは感じさせますが、それなりの面白さはあります。罪の無いエンターテインメント小説、そんな感じのする本でした。
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Posted by ブクログ
最初は16人いた一行のうち、最後まで生き残ったのが4人。うち2人はキリスト教に帰依し、10年の後日本に帰国したのは2人。18世紀のシベリアの過酷な自然環境や華麗なロシア文明を描いた作品です。
小説と史書の中間、どちらかと言えば丹念に調べた史実を忠実に再現しようとしています。主人公の感情とかの描写は少なく、事実が淡々と述べられていく。作家は皆さん古くなるとこうゆう傾向になるのでしょうか?司馬遼太郎も吉村昭も方向の違いはあれ、そんな感じがします。この作品についていえば吉村昭の最近の作品に近いように思います。もちろん井上靖の方が大先輩ですので、本当は井上さんに吉村さんが近いと言うべきでしょうが。