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天明二年(1782)の暮、伊勢を出帆し江戸へ向かった大黒屋光太夫率いる神昌丸は、強風に運ばれアリューシャン列島に漂着した。帰国の途を求めて光太夫はシベリアを横断し、モスクワを経由してぺテルブルグを越え、ついにロシア女帝エカチェリーナ二世の謁見を受ける。風雪十年ののち対日使節とともに故国に帰った光太夫に、幕府は終身幽閉を命じた……。鎖国の時代、運命に操られるままに世界を見た漂民の波瀾と感動の生涯を十八世紀日露交渉史、漂民史等を駆使して描いた哀切の大作。
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Posted by ブクログ
江戸時代末期、漂流してアムチトカ島に流れ着いた大黒屋光太夫らがシベリア、ロシアを旅することになる話。 極寒の地、言葉の通じない異国の地で彷徨います。故郷の日本へ果たして帰れるのか。 これまでに3回読んで、多分これからも、吹雪始めた冬に読み返したくなるであろう一冊。 おろしや国粋夢譚は、歴史小説...続きを読むでもあり、よく考証されています。シベリアの地がロシア帝国によって開拓されてきたことが、光太夫らと旅をしながら感じられます。 私の中では、シベリアを知ることになった最初の一冊でもあります。
大黒屋光太夫を船頭とした17人を乗せた「神昌丸」は駿河沖で時化に会いロシアのアレウト列島(アリューシャン列島)のアムチトカ島に乗り付ける。母国日本へ帰りたい一心でロシアの厳しい生活に耐え、ロシア国内を大移動しながら本国送還を願い続け、10年後許しが出て既に死去した12人とロシア正教に帰依した2人を除...続きを読むいた3人が帰国する。 アリューシャン列島のアムチトカ島からカムチャツカ半島を経てオホーツクへ渡り、陸路ヤクーツク、イルクーツク、モスクワ、ペテルブルクとなんと10,000キロに及ぶ未知の国、風雪の中の流浪の旅は彼らにとってどんなに厳しかったことか。 地図と見比べながら彼らの姿を追えばその辛い旅がより思いやられる。 しかしあれほど帰ることを望んだ日本は、ロシアで艱難辛苦を乗り越えて、あるいはロシア政府やロシア人の助けを享受して生きながらえるうちに、今までの人生では見ることのなかった世界と人々を知った彼らにとって、旧弊な決まりにとらわれて身動きのままならない居心地の悪い他国のようになっていた。 さらに母国に帰ったにもかかわらず彼らは自国内を自由に移動することさえも許される事はなく定められた土地に一生住むことにされた。見聞きしたことは他言無用ということなのか。 人間にとって自分という者の居場所が確定して、自分の存在が周囲にとって有益な存在であるという事は生きていく上で欠くことのできないものであると思う。 彼ら漂流民はそれを求めて10年の長きを耐えたにもかかわらず、彼らが帰ってきた母国はそれらを取り上げてしまった。 帰国する前に「もしかしたらこのままロシアの地に留まった方が良いのかもしれない」と思った彼らにとってその仕打ちはあまりにも残酷だ。
いや何とも面白くそして悲しい史実に基づいた物語だった。江戸時代に、商船が難破してロシアに流れ着いた船員たちが一人欠け、二人欠けしながら10年近くかけてようやく光太夫と磯吉の二人だけが日本に帰り着いたという話。 ところが話はそこでは終わらない。ようやく帰り着いた日本で、二人は故郷の伊勢に戻ることが許さ...続きを読むれず江戸で不自由な後半生を送ったという。日本に帰り着いた際の日本側の対処やその後の二人の半生を知るだに、この国って昔から狭量だったんだなあと思うばかり。ロシア正教に帰依してロシアに残ることになった庄蔵と新蔵のほうがある意味、思い切れて幸せに生きたかもしれない。 もともとは十数人だった船員たち。十人十色でこういう苦境に陥ったとき、どのようにとらえるかでその後が変わっていくものだと思う。うじうじ変えられずにいる人もいれば、あっけらかんと現状を受け入れられる人もいる。
実際にあった出来事の、ロシア革命より更に前の18世紀。 江戸時代の伊勢から漂流した船に乗った人々が ロシアという異国で10年どう生きたかどう感じたかをまとめた歴史小説。 極寒の異国地に漂流し、そこから更に色んな箇所へ移動され 亡くなる人やロシアに帰依する人や、それでも日本に戻る為に最善を尽くす人がい...続きを読むて 当時のロシア女帝エカチェリーナ2世との対面まで行ったのに やっとの思いで、いざ日本に着けばなんかものすごく虚しい。 虚しさというより空虚、何だったのだろうか今までの体験はって思い知らされた。 全く通じない言葉とか身振り手振りだったり、それでも色んな仕事を手伝いたいとか 自分らは漂流したとはいえ、もう立派にロシアに馴染んでいたからこそ 当時の鎖国していた日本が非常に狭く見えたんだと思う しかし終身里にも帰れず、ずっと幽閉の身とは なんとも嘆かわしや。
海流の影響か、昔からロシアには日本の船が流れ着くことが珍しくなく、もちろん日本には帰れずに現地で一生を終える者がほとんどだった。そんな中、和歌山の商人である大黒屋光太夫は知恵とど根性で日本に帰ってくるのだ。帰りの船を出してもらうために当時の女帝エカテリーナに謁見するという歴史的な事実もあって、ロシア...続きを読むでは知られた人のようだ。ロシア人の気質なども垣間見られる貴重な調査記録だ。
キリル・ラックスマンが好きすぎて、思わず手を出してしまった1冊。 両親の実家が三重県鈴鹿市白子なので、その影響もありました。 現代においても海外に行くにはそれなりの準備を要するのに、漂流と形で辿り着いた異国に対する恐怖と驚きが巧みに描写されています。 個人的には、江戸に帰ってきた光太夫と磯吉が、日...続きを読む本の窮屈さに嘆いてロシアを恋しく思うシーンが印象的でした。 広い世界を知ったからこそ感じる、鎖国日本の視界の狭さ。 日本の土を踏んでも自由は与えられず、思わずロシア語で会話する二人には涙しました。 なぜ日本に帰りたかったのか、という光太夫の問い掛けに 「ラックスマンがあまりにも日本の石や植物を見たいと言っていたから」 と答えた磯吉。 純粋に日本に訪れたかったラックスマンの思いを汲み取った一言だと思います。 鎖国の罪深さを表したシーンでした。
読み終わった みなもと太郎「風雲児たち」に大黒屋光太夫の話しがあってから、ずっと読みたかった一冊。異国の地に一人でいるってことがどういうことか。留学中の身には少しばかり彼の境遇が近く感じられる。本当は全然違うんだけどね。
時は江戸、大黒屋光太夫の漂流記。 彼はおろしや国(ロシア)で何を見たのか? 戦後の旧ソ連抑留者を思い起こさずにはいられません。
授業でちらっと勉強しただけの大黒屋光太夫 漂流民として暮らしているときよりも 日本に戻ってからのほうが苛酷
日本海で漂流し、ロシア領へ流れ着いた光太夫ら仲間たち。 ロシア語を学び、女帝エカテリーナへの謁見。江戸へ帰れる日は来るのか。
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