井上靖のレビュー一覧

  • 蒼き狼
    20130901 チンギスハンの一生を淡々と綴った。静かなようで激しい。今の人にはこの文体での長編は書けないのではないだろうか。
  • 氷壁
    ミステリーなんだけど、人間ドラマ。

    ナイロンザイルが切れたのは事件なのか自殺なのか…

    山に関して無知なので、冬山登山に関する描写は「へぇ〜」と思う事が多く面白かった。

    時代背景は古い。
  • 本覚坊遺文
    千利休が太閤から賜った死に、抗いもせずに従ったのはなぜなのか?
    千利休の弟子・本覚坊の日記からという設定にて、利休死後の隠遁生活中の出会いの折々に触れられる師・利休の在りし日の想いや評価を通じて、本覚坊が「その時」の内面から利休とその侘茶の真の精神を半生をかけて悟るという物語。
    物語の各章はかなりの...続きを読む
  • 蒼き狼
    「蒼き狼」のタイトルの通り、モンゴル帝国チンギスカンの話です。広大な土地を支配したチンギスカンはどうしてそこまで領土を広げたのか、また広げることが出来たのか。

    彼にとって、おそらくもっとも大事であった民族というアイデンティティーに疑問を持たなければならなかったこと。そして、自分は「蒼き狼」である...続きを読む
  • 楊貴妃伝
    井上靖作品を読むのは「額田女王」以来2作目ですが、時の権力者に愛された女性を描いた作品という点では同様でありながら、この楊貴妃伝はかなり趣の違う作品だと感じました。解説でも触れられていますが、心理描写が少なく、淡白すぎるくらいに淡々と話が進められていきます。一見欠点のようですが、これがフィクションで...続きを読む
  • 氷壁
    ナイロンザイル事件、松濤明の遭難など複数のモチーフがある小説。ナイロンザイル事件のことは知らなかったが、20年近くも危険性が黙殺され続けた上に今のPL法成立につながったこと、小説からそれほど間を開けず公開された映画のメガホンを取ったのが故・新藤兼人監督だったということに感じるものがあった。
    山の話は...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    勘助の生涯を描いた本。
    メインテーマは、勘助が信玄だけでなく由布姫や勝頼のために行動し、それが最終的には川中島での決定的な合戦で命を落とすことにいかにつながるかというもの。
    多分にフィクションの要素を含むと思うが、とても丁寧に心情などが描写されており、入り込みやすい。
  • 後白河院
    周囲の人間の話により、浮かび上がっていく後白河院の人物像…というのが面白かった。後白河院って、謎が多くて調べれば調べるほどもっと知りたくなる人物。
    ちょっと難しいので読み進めるペースが遅くなった。
  • 夏草冬濤(上)
    30数年前に読んだ。今回再読。ほとんど内容を覚えてなかった。
    淡々としていて山場もないけれど、瑞々しい。人物描写も味がある。
    久々の文学作品。後編も読みたいけれど、いつになるかな・・・
  • 風林火山(新潮文庫)
    本当は五つ星だが、井上靖の不運がある。『甲陽軍鑑』という江戸時代の軍記物などを参考にしたため、間違いがある。

    間違い1.登場人物の戦死する順番

    『風林火山』と『甲陽軍鑑』

    甘利虎泰と横田高松が戦死→板垣信方が戦死。

    史実及び2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』

    甘利虎泰と板垣信方が戦死...続きを読む
  • わが母の記 花の下・月の光・雪の面
    とにかく切ない。家族の老いと死について、考えずにはいられなくなる。
    老いていく母親を見つめる作者もすでにこの世の人ではないんだと思うと、不思議な感慨があります。
  • 氷壁
    山岳小説としてとても面白かった。穂高岳の地図を片手に読んでしまった。是非訪れてみたい。
    ストーリーは冬山登攀と、その冬山登攀で起こった事件、その山男たちのを取り巻く人間模様。
    グイグイと引き込まれていったが、登場人物の心理などとても昭和感じがした。昭和30年代?が舞台なんだから当たり前だが、少し理解...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    半世紀前の作品にも関わらず、淡々とした語り口に引き込まれあっという間に読めてしまう。これぞ名作と言った感じ。

    自然に関する描写が多く、甲信地方には一時住んでいたけれどもあの高低差の激しい山間でよくぞ戦をしていたなぁと感心しました。
  • わが母の記
    枯葉ほどの軽さの肉体、毀れた頭。歩んできた長い人生を端から少しずつ消しゴムで消して行く母--老耄の母の姿を愛惜をこめて静謐な語り口で綴り、昭和の文豪の家庭人としての一面をも映し出す珠玉の三部作。モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞ほか、世界を感動に包んだ傑作映画の原作。
  • 風濤
    さすがと言うべき御大の大作。被征服国家の悲哀と一言では表せない歴史。誰が主人公なんだろう、とちょっとぼやけているという点で星4つ。
  • 氷壁
    おもしろい。すぐに引き込まれて、すいすい読めた。本を読んで寝不足になるのも久しぶり。もっと井上作品を読みたくなった。
  • 孔子
    正直言って、話が次から次へと進む小説ではない。「では最後に・・・」などと言いながら、その後にもズルズルと話が変わって続いていくこともしばしば。その点で快適な読み心地とは言えないのかも知れない。しかし、小説全体を通して流れているゆったりとした雰囲気は心地よく、またどこか背筋を伸ばさずにはいられないよう...続きを読む
  • 夏草冬濤(下)
    時代背景の違いをはっきり感じさせられるが、明治の学校生活や田舎と都会の雰囲気を味わうことができる。柔道の青春小説でもある。
  • 額田女王
    額田女王を挟んで描かれる、
    中大兄皇子と大海人皇子の兄弟が大変魅力的で、
    二人に非常に興味を持ちました。

    中大兄皇子は、一番の権力者で、ときに大胆な振る舞いもしますが、
    一方で孤独で、己を抑制していて冷静です。
    とくに終盤、大海人皇子に対する感情を、
    理性でなんとか抑えているように取れる場面があっ...続きを読む
  • おろしや国酔夢譚
    日本海で漂流し、ロシア領へ流れ着いた光太夫ら仲間たち。
    ロシア語を学び、女帝エカテリーナへの謁見。江戸へ帰れる日は来るのか。