井上靖のレビュー一覧

  • 額田女王

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    今回のバングラデシュの旅に持参した一冊。全くの異世界のベンガルで、日本の古代史を感じるのはなかなか乙であった。
    去年の春節の旅行で白村江にいったことがあったので、想像しながら読めた。もし唐が新羅と一緒に百済を駆逐したタイミングで日本侵攻してきたらどうだったのであろうか。今の日本はないのかも。
    お話は額田の歌を中心に進められる。二人の王子との恋愛模様を描く。壬申の乱のきっかけが額田をめぐってのお話であれば相当面白い。歴史は教科書だけで勉強するものではないのだと、痛感した一冊。おすすめ。

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    2016年02月15日
  • 猟銃・闘牛

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    表紙から売りという意味では、双方芥川賞候補になった「猟銃」VS「闘牛」という並びに味があるのだろうか。「闘牛」で芥川賞を受賞した時、選考委員の意見も多少別れたという。もう一篇、「比良のシャクナゲ」という作品もあるが、これは例外的で、ある意味無難な評価、皆似たような感想を持つと思う。
    「猟銃」は、主人公である語り手(もっと正しい呼び方があるのかもしれない)が、一つの詩を書いたことから始まる。手紙を用い、それぞれの視点を、文章として、そのままに表すというのは、面白い書き方だと思う。そして、物語が、文章が、純粋に面白い。だが、三人目の手紙というのは、蛇足だったように思う。
    「闘牛」は今のビジネス小説

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    2016年02月01日
  • 蒼き狼

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    地図が付いていたので地理的な把握がしやすかった。
    広大な領土を征するに相応しく、戦いに次ぐ戦いの人生が読みやすく、それでいてドラマチックに展開されている。

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    2015年12月20日
  • 北の海(下)

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    文豪、井上靖が書いた自伝的小説三部作の最終章にあたる長編小説。実際に読んだのは単行本版。

    おそらく、日本の純文学史上最古のスポ根小説。本作を一言で言うなら、まずこれ。

    親元から遠く離れた地で暮らす主人公、洪作は、なんとか中学を卒業するも高校には受からず、浪人としての日々を柔道に費やして過ごしている。ある日、中学の道場に柔道の強豪高校からの選手が練習にやってくる。洪作は彼が実践する『練習がものを言う寝技のみの柔道』や、彼の所属する高校柔道部のことを見聞きするうちにその魅力に憑かれはじめ、あこがれを確かめるためにその柔道部の夏季練習に参加する。って感じのお話。
    登場する高校は四高といって、金沢

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    2015年09月29日
  • 楼蘭

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    楼蘭は、移動するロブ湖をめぐる話。叙述詩を読んでるみたい。小磐梯は噴火の前の静けさが物凄く不気味に描かれている。今の時期だから余計にこわく思えるのかもしれない。

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    2015年07月03日
  • 楼蘭

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    中国歴史だけかと思いきや、日本、インドの歴史や童話小説をモチーフにした話もちらほら。
    表題桜蘭は50ページ前後の短い話だが、南インドにまつわる虎の話はちょっとした小話にも最適かと。
    何人かにこの話をしてあげると喜ばれる。
    オチが予想外で。

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    2015年07月15日
  • 孔子

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    まだ論語が出来る前に、ただひとりのこうしの弟子の生き残りとして、こうしとの思い出、言葉などを語るといった、ちょっといままでにはなかったかもしれない作品。
    そして井上靖、最後の小説。80代に書いたという。
    読んでいてダライラマの説法とはこんな感じなのかなと想像。ひとつの事柄について師が語り、周りが質問していく。天命とは、仁とは。

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    2015年07月15日
  • 夏草冬濤(下)

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    なんともまどろっこしい洪作である。今の学生ならLDと認定されるところだが、おおらかな時代であったことよ。

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    2018年10月14日
  • 風林火山(新潮文庫)

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    あまり歴史に詳しくない私でしたが
    面白く最後まで読めました

    勘助の由布姫への想いに
    胸が熱くなりました

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    2015年03月08日
  • 蒼き狼

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    極東からヨーロッパまで、13世紀に世界中に多大な影響を与えたモンゴル帝国のことを知りたくて読んでみた。
    鐙など乗馬技術や騎射、袖を通す洋服などなど、我々がヨーロッパ文化とイメージするものの中にはモンゴル起源がたくさんある。

    この本ではそういった文化論はもちろんなく、あくまでチンギス・ハーンの一生を追ったものだが・・・

    モンゴル帝国、残虐すぎる・・・逆らうものは皆殺し。投降しても皆殺し。

    自分の子供は取り上げるわ、鬼のように自分を律するわ、チンギス・ハーンの一生は幸せだったんだろうか。

    他にもチンギス・ハーン物を読んでみようと思っていたが、ちょっとコレ以上は興味でないな。

    この本は大変

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    2014年10月16日
  • 蒼き狼

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    モンゴルへの旅に携帯。

    以前違う人のチンギスハンの伝記を読んだが、さすがは井上靖。
    段違いに面白かった。

    残すは桜蘭である。

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    2015年07月15日
  • 蒼き狼

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    世界史に果たした役割に対してチンギスハンの史料は極端に少ない。まともな史料は「元朝秘史」と「集史」くらいだろう。そのなかで、これだけチンギスハンの人物像に迫ったことは感嘆に値する。特に忽蘭とジョチに焦点を当てたことが独自色を与えているところであろう。文章表現も素晴らしい。「蒼き狼」の呼称は良質な本書で広まったものである。

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    2014年09月23日
  • 猟銃・闘牛

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    『猟銃』の印象は割と薄かったのだが、『闘牛』はさすがの読後感だった。史実をもとにして淡々と進んでいくストーリーの中に、主人公津上と愛人さき子との先の見えぬ不安感を織り交ぜている。前者は物語を円滑に進める働きを持ち、後者は要所で物語に絡んで、ドラマチックな結末を生む大きな要素となっている。
    闘牛の結果と二人の関係の終わりを重ねた最後の段落、特に最後の一文は凄まじい。

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    2014年09月12日
  • 北の海(下)

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    下巻も四高に入学するところまで行かずに、というか受験勉強すら最後の数ページ迄しないまま終わる。四高のシーンは夏合宿に参加するだけ、と。
    柔道をするためだけに大学に入る。しかも、全国大会とかではなく、関係者以外誰も知らない七帝。アホの極みというか、なんというか。
    宇田先生といい、食堂のお内儀さんといい、主人公の世話に巻き込まれる群像がいい味出し過ぎていて、何とも言えない名作です。

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    2014年08月19日
  • 北の海(上)

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    七帝柔道記が面白かったので高専柔道の古典も読んでみる。戦前の茫洋とした姿が面白い。上巻は四高に入るまでの前段階。

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    2014年08月24日
  • 本覚坊遺文

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    本覚坊を通じて、利休の切腹の真実に迫る作品。最後の最後まで茶人であり、死をもって侘び茶を大成させたその精神を描いている。

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    2014年07月19日
  • 額田女王

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    古代の英雄天智、天武天皇に愛された、万葉随一の才媛額田女王。大化改新後の朝鮮半島出兵、蝦夷征伐、壬申の乱が舞台。本作品の特徴は激動の時代を、万葉集に綴られている有馬皇子、斉明天皇、中大兄皇子、大海人皇子そして額田大王の和歌を通じて、移ろいやすい感情とともに紐解く事。また、和歌を効果的に活用し独自の視点で解釈を加える事で、物語に彩を与える。

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    2014年07月19日
  • 額田女王

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    ネタバレ

    比較的読みやすい歴史小説。資料も限られる中、飛鳥王朝の様子が脳内で想像しやすく描かれていて、井上さんの文才に改めて感服しました。一般的な額田王&大海人というカップリングに決めつけていないところも印象的。

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    2014年05月16日
  • わが母の記

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    井上靖の一作。母の晩年を書いた作品。惚けてしまった母の描写がやはり秀逸。自分の将来を考えてしまう。惚けると理性をなくし、感覚の世界に生きるのか。

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    2014年05月11日
  • 猟銃・闘牛

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    友人に勧められて読んだ…久しぶりに小説らしい小説を読んだ気がした…翻って考えれば、純文学という領域が普遍性を鑑みない狭所に閉塞している現状もあるのだろう…面白かった。惹き込まれ一気に読まされた。

    昭和24年第22回芥川賞受賞作「闘牛」を含む、著者初期作品による短編集…他「猟銃」「比良のシャクナゲ」所収。後に歴史物で名をなした著者であるが、ここに掲載されているのは、すべて現代物…登場人物の造形がしっかりされていて破綻がない。誰にも心情移入することができた。

    たとえば「猟銃」では、不倫関係にある恋を、妻・愛人・愛人の娘の日記によって構成している…愛人は臨終の際にこのように記していたのだ…

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    2014年02月26日