井上靖のレビュー一覧
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(*01)
虚言やハッタリが出世の初期設定になっている点で、加瀬あつし氏の漫画『カメレオン』の風貌がまず、勘助像として結ばれた。やぶにらみのせいもあるだろう、そのためか爬虫類を想起させ、「地を這う者」というイメージも抱いた。第1章の登場の場面の暗さ、他を殺めるときの醜さ、終盤で海野の戦場からの徒歩帰還(*02)などに粘着質でいてテカっているような、また陰険で執拗な感覚を勘助から得た。孤独という性質からきた印象なのかもしれない。
(*02)
彼、勘助は移動する人である。駿府での停滞では想像ばかりが飛躍していたのであろうが、信玄の下で機動力となって働き、足で稼いだ。小柄であること、目や脚や指にス -
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著者の初期作品から、『猟銃』『闘牛』『比良のシャクナゲ』の三編を収録しています。
『猟銃』は、三杉穣介という猟人から著者のもとに送られてきた手紙による、書簡体小説です。著者はある日、「白い川床」を歩くように、「ゆっくりと、静かに、冷たく」山のなかを歩んでいた三杉のすがたを目にし、その記憶に基づいて一つの散文詩を発表します。ところが、彼の詩を目にした三杉から送られてきた手紙には、彼の不倫とそれが引き起こした結末が語られていました。愛人の彩子、妻のみどり、そして彩子の娘の薔子の三人の手紙によって三杉の愛人関係がえがき出されています。
『闘牛』は、大阪の新聞社で編集局長を務める津上という男のもと -
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表紙から売りという意味では、双方芥川賞候補になった「猟銃」VS「闘牛」という並びに味があるのだろうか。「闘牛」で芥川賞を受賞した時、選考委員の意見も多少別れたという。もう一篇、「比良のシャクナゲ」という作品もあるが、これは例外的で、ある意味無難な評価、皆似たような感想を持つと思う。
「猟銃」は、主人公である語り手(もっと正しい呼び方があるのかもしれない)が、一つの詩を書いたことから始まる。手紙を用い、それぞれの視点を、文章として、そのままに表すというのは、面白い書き方だと思う。そして、物語が、文章が、純粋に面白い。だが、三人目の手紙というのは、蛇足だったように思う。
「闘牛」は今のビジネス小説 -
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文豪、井上靖が書いた自伝的小説三部作の最終章にあたる長編小説。実際に読んだのは単行本版。
おそらく、日本の純文学史上最古のスポ根小説。本作を一言で言うなら、まずこれ。
親元から遠く離れた地で暮らす主人公、洪作は、なんとか中学を卒業するも高校には受からず、浪人としての日々を柔道に費やして過ごしている。ある日、中学の道場に柔道の強豪高校からの選手が練習にやってくる。洪作は彼が実践する『練習がものを言う寝技のみの柔道』や、彼の所属する高校柔道部のことを見聞きするうちにその魅力に憑かれはじめ、あこがれを確かめるためにその柔道部の夏季練習に参加する。って感じのお話。
登場する高校は四高といって、金沢