井上靖のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表紙から売りという意味では、双方芥川賞候補になった「猟銃」VS「闘牛」という並びに味があるのだろうか。「闘牛」で芥川賞を受賞した時、選考委員の意見も多少別れたという。もう一篇、「比良のシャクナゲ」という作品もあるが、これは例外的で、ある意味無難な評価、皆似たような感想を持つと思う。
「猟銃」は、主人公である語り手(もっと正しい呼び方があるのかもしれない)が、一つの詩を書いたことから始まる。手紙を用い、それぞれの視点を、文章として、そのままに表すというのは、面白い書き方だと思う。そして、物語が、文章が、純粋に面白い。だが、三人目の手紙というのは、蛇足だったように思う。
「闘牛」は今のビジネス小説 -
Posted by ブクログ
文豪、井上靖が書いた自伝的小説三部作の最終章にあたる長編小説。実際に読んだのは単行本版。
おそらく、日本の純文学史上最古のスポ根小説。本作を一言で言うなら、まずこれ。
親元から遠く離れた地で暮らす主人公、洪作は、なんとか中学を卒業するも高校には受からず、浪人としての日々を柔道に費やして過ごしている。ある日、中学の道場に柔道の強豪高校からの選手が練習にやってくる。洪作は彼が実践する『練習がものを言う寝技のみの柔道』や、彼の所属する高校柔道部のことを見聞きするうちにその魅力に憑かれはじめ、あこがれを確かめるためにその柔道部の夏季練習に参加する。って感じのお話。
登場する高校は四高といって、金沢 -
Posted by ブクログ
極東からヨーロッパまで、13世紀に世界中に多大な影響を与えたモンゴル帝国のことを知りたくて読んでみた。
鐙など乗馬技術や騎射、袖を通す洋服などなど、我々がヨーロッパ文化とイメージするものの中にはモンゴル起源がたくさんある。
この本ではそういった文化論はもちろんなく、あくまでチンギス・ハーンの一生を追ったものだが・・・
モンゴル帝国、残虐すぎる・・・逆らうものは皆殺し。投降しても皆殺し。
自分の子供は取り上げるわ、鬼のように自分を律するわ、チンギス・ハーンの一生は幸せだったんだろうか。
他にもチンギス・ハーン物を読んでみようと思っていたが、ちょっとコレ以上は興味でないな。
この本は大変 -
Posted by ブクログ
友人に勧められて読んだ…久しぶりに小説らしい小説を読んだ気がした…翻って考えれば、純文学という領域が普遍性を鑑みない狭所に閉塞している現状もあるのだろう…面白かった。惹き込まれ一気に読まされた。
昭和24年第22回芥川賞受賞作「闘牛」を含む、著者初期作品による短編集…他「猟銃」「比良のシャクナゲ」所収。後に歴史物で名をなした著者であるが、ここに掲載されているのは、すべて現代物…登場人物の造形がしっかりされていて破綻がない。誰にも心情移入することができた。
たとえば「猟銃」では、不倫関係にある恋を、妻・愛人・愛人の娘の日記によって構成している…愛人は臨終の際にこのように記していたのだ…
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