井上靖のレビュー一覧

  • 敦煌
    シルクロードの分岐点であり、重要なオアシス都市である敦煌。
    その敦煌にある莫高窟で20世紀に大量の書物が発掘され、文化人類学上の大発見になるのだが、書物がなぜ莫高窟に保存されていたかは不明。この謎を、史実と創造で描いた歴史作品が本書である。

    敦煌と莫高窟に旅行したので読書感想ではないけどメモ

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  • 風濤
    二度にわたる元寇を日本の目でなく途中経路にある高麗から見る。武力により属国となった高麗では王や首脳が無理難題の要求に何年も苦しみを味わう。世界史的にも島嶼の地域を無理して征服する意味は不可解だが、いわゆる中華思想のなせる技か。2021.3.24
  • 星と祭 上
    本書によって、2つのことを知った。『殯』と『十一面観音』。
    『殯』。本書では、事故で亡くなった娘の死体があがらず、鬼籍に入るまでの期間を指している。あたかも、東日本震災で、死体があがらず行方不明のままになっている状態に似ているといってよいのでしょうか?死んだことを認めることができない状態でしょうか?...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    武田信玄の軍師山本勘助を主人公とした歴史小説でした。井上靖さんは僕にはとても読みやすい作家で、本作も、勘助から見た武田家、特に信玄が生き生きと描かれていたように思います。司馬遼太郎とはまた違った良作でした。
  • 楼蘭
    短編集。

    井上靖に対しては、同じようなテイストの小説を多産する流行作家のようなイメージを持っているが、氏の「西域もの」はその限りではない。
    明らかに他の量産作品群と「西域もの」との間には、クオリティの差が存在している。このテーマに対する著者の没入度の深さが、おそらく異なる。

    本編を離れた話だが、...続きを読む
  • 後白河院
    『しろばんば』『敦煌』『額田女王』『孔子』。
    これまでに読んできた井上靖作品は、これが全て。
    後白河を取り上げたものがあったのか、と驚きもあって手にした。
    ちょうど先日、アンソロジーで『梁塵秘抄』に触れたばかりだったことだし。

    源平争乱のあの時代、白河、後鳥羽、崇徳、後白河あたりの天皇家の確執に、...続きを読む
  • 天平の甍
    井上靖の流れるような文面が非常に魅力的。かつ、その知識の深さには感服する。

    日本史がある程度わかっている人なら、読んでいても疲れないと思うが、知らない人が読むと確実に挫折する。

    私は好きだが…
  • 額田女王
    茜さす紫野行きしめ野行き野守は見ずや君が袖振る
     額田女王。
    紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに恋ひむやも 大海人皇子。
    大海人皇子とのあいだに、十市皇女を出生後、兄である中大兄皇子に求愛された額田女王。
    古代の狂わしい三人の愛の形が、恋歌として古代へと僕らを誘う。
  • あすなろ物語
    井上靖の文体は、一文一文が練られてるから読み飛ばせない。なので速読派の自分でもすごく時間がかかってしまった。
    最後の方の星空にまつわる話が好き。「あすはなろう」の思いをもつ様々な人の生き方や死に方が胸を打った。
  • 楊貴妃伝
    世界3大美女の楊貴妃。
    それ以上の事は知りませんでした。
    どういう人なのか知りたくて読んでみました。

    いろいろな楊貴妃の見方があるみたいですが、井上靖氏の見方として楊貴妃の数奇な生涯として紹介されています。

    傾国の美女の一人として数えられていますが、皇帝玄宗が楊貴妃に夢中になり、政治が疎かになっ...続きを読む
  • 蒼き狼
    中国の歴史はなかなか頭に入ってこないが、昭和の文豪達は、壮大なロマンに魅せられていたのだろう。
    男尊女卑が凄いことは、共通である。
  • 孔子
    孔子と末弟子が、研究会の人たちと語る、孔子の名言集。
    「仁」「天命」など、孔子がどのように考えていたのかを皆で推測している。現代でも変わることのないテーマ。人の生き様の根底、つまりはポリシーとしてそれぞれの心に刻んでおきたい
  • 井上靖全詩集
    『北国』『地中海』『運河』『季節』『遠征路』の五つの詩集と、その後に書かれた著者の詩を収録しています。

    著者の詩は、そのほとんどが散文詩であり、宮崎健三の「解説」にも書かれているように、いくつかの詩は著者の小説作品のなかにかたちを変えて取り入れられています。著者も『北国』の「あとがき」で、「私にと...続きを読む
  • 敦煌
    大陸の広さが目に浮ぶ作品でした。砂漠、ずーっと続く砂漠と、そして街の物語。人間のエネルギー、民族の興亡を感じました。
  • あすなろ物語
    主人公鮎太が幼少期、少年期、青年期、そして記者への就職後から関りがあった6人の女性たち。冴子、雪枝、(佐分利)信子、清香…。特に若い未亡人・信子への憧憬は切実。美人の義妹2人が共にいながら、3人の友人学生たちも同じ思いを抱いていたと思わせる表現が秀逸。「あるよな!」甘酸っぱい記憶に満ちた6つの章。ラ...続きを読む
  • 幼き日のこと・青春放浪
    井上靖の作品で、中学生か高校生の時に読んだものは『額田女王』と『黒い蝶』。それ以来読んでいなかった。歴史的作品を多く書く、品の良い作家というイメージだった。先日、『しろばんば』を読み、イメージが少し変わり、親近感が増して、『しろばんば』の世界をもっと知りたくなって手に取った。

    湯ヶ島での、おかのお...続きを読む
  • 天平の甍
    鑑真の不屈の闘志による渡日をメインに、遣唐使の普照を通して
    淡々と進める井上靖の代表作。
    面白いのは大化改新からさほどたっていない、まだ赤ん坊の日本に対して、中国は唐の玄宗で繁栄を謳歌していたというコントラスト。横の串刺し歴史を感じる作品。
  • 孔子
    二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。
    『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生まれてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的にしていたのか。
    孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子・蔫薑が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。

    孔子サマ...続きを読む
  • 風濤
    「島国根性」なんて言葉がある以上、「半島」にもそれに類する言葉が生成されがちな事情はあるとは思ってたけれど、隣の大国の理不尽さにヒドい目にあい続けたらそりゃ「恨」が醸成されるよな。唐辛子が持ち込まれる前の話。
  • 風林火山(新潮文庫)
    時代小説で山本勘助が主人公となっているが、武田に滅ぼされた諏訪の娘で勝頼の母である由布姫が大きな存在として描かれる。題名は男っぽいが内容は女性っぽい。