井上靖のレビュー一覧

  • あすなろ物語

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     『あすなろ物語』聞き覚えのあるタイトルだけど、どんな物語が思い出せず手に取った作品。
    タイトルの『あすなろ』を漢字で書くと翌檜、「明日は檜になろう、明日は檜になろう」と願いながらも永遠に檜になれない。
    この木の姿が、いつか何者かになろうと懸命にいきる人間の姿に重ね合わせられており、「なろう係」の物語を想像させられた。

    読み進めると想像を見事に裏切られた。
    主人公の鮎太が「あすなろ」であったのも小学生の頃までだ。その後は親の脛をかじり時間とお金を無駄に消費する自堕落な生活。周囲が檜になろうと努力するなか彼はただ羨んだり卑屈になったりするだけで動かない。極めつけは、憧れの女性・信子からは「貴方

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    2026年02月01日
  • 敦煌

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    11月に井上靖さんの短篇集を読み、いずれは長篇も、と思っていたので、まず、本作「敦煌」を読んでみた。

    20世紀初頭清朝末期に、敦煌の石窟から四万点を超える経典が発見され、漢語、西夏語、ウイグル語、他多言語で書かれていた、という史実(世紀の大発見)から、作者が西域に思いを馳せ、経典が陰徳されるまでの話をフィクションで描いた作品。

    分量的には大作の一歩手前だが、描かれたスケールは空間的にも時間的にもスケールが大きく、喜多郎の「シルクロードのテーマ」をBGMとして耳に入れながら読んだ。

    ウイグルの王族の女が飛び降り自殺する流れは、作者の女性観を反映していて(出版は1960年代)、共感が難しいか

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    2026年01月18日
  • 天平の甍

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    あまりに淡々と「あったこと」の記載が続くので、昔の史実小説ってこういうものなのかな、と思いながら流し読みしていたのですが、終盤以降、主要登場人物たちそれぞれの人生の蓄積が顕になっていく文章にはきちんと重みを感じました。何を成したか、だけでは語ることのできない歴史がいまも昔もあるのだろうと思います。

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    2025年12月29日
  • 額田女王

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    流石井上靖だけあって特に抑揚のないストーリーではあるのに飽きずに読める。

    だけど…額田女王のキャラ設定がどうにも好きになれない。十市皇女について周囲には「大海人ではなく梅の精の子」と頑なに言い張るくせに、侍女にだけ「この子は誰に似てると思う?」と迫って、侍女が畏れをなして黙っていると「気のちいさいひとね」と突き放すくだりは人が悪すぎる。近江に都移りしてからも、鵜野讃良(後の持統帝)に対して「あのお方が?[私より]若くて美しい?」と自信たっぷりに陰口を叩くあたりも、伝わっている歌に垣間見える額田の人柄とは大きく乖離しているようにしか感じられなかった。これなら澤田瞳子の『恋ふらむ鳥は』での額田の

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    2025年12月06日
  • あすなろ物語

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    時代背景になかなかついていけず、四苦八苦して読みました。「男の嫉妬」がたくさん出てくる印象です。

    主人公はそれぞれに関わる女性を中心に、少年から中年へと成長していく過程があります。あまり理想的な幼少期だったとは言えませんが、青年期は成績優秀で友人にも恵まれ充実しています。しかし戦争の招集令状が届き、その後はつらい経験を重ねます。

    主人公は、女性に対して臆病で引っ込み思案です。長年好きだった女性にも対しても、冷静に会う勇気がありません。そんな彼の周りで戦後の時代、懸命に生きようとする人物達が印象的でした。

    強く生き抜いた時代だったんだと、感じさせられます。

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    2025年12月06日
  • 晩夏 少年短篇集

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    教科書で井上靖の文章は読んだことがあるはずで、そこに著者の代表作として「天平の甍」という記述があったのは覚えているのだけど、ちゃんと読んだことがなかったので、まずは手頃そうな短篇集を、と読んだみた。

    伊豆の田舎の山奥の少年時代のことを描いた短篇で、自分とは勿論世代も土地もずいぶん離れているのだけれど、東京人への距離感(遠さ具合)とか、不思議と懐かしい感じがした。

    著者の本領は長編なのだろうと思ったので、次は「敦煌」とか読んでみようかな。

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    2025年11月22日
  • しろばんば

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    後半は少し面白くなるが、良くも悪くも平和な小説というのが感想。鋭さや刺激がない。

    同じく少年の成長をテーマにした小説では、藤沢周平の「蝉しぐれ」のほうがはるかに面白い。

    井上靖をまた読むことは多分ない気がする。

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    2025年11月06日
  • しろばんば

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    牧歌的とはまさにこの事。主人公がすぐ泣いて変な行動するのにちょっとイラッとしたけど生きるってこういうことか、と思った。

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    2025年11月05日
  • 敦煌

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    かなり昔に書かれた本であると思うが、今の時代でもかなり読みやすい気がする。
    中国の歴史小説みたいなものをあまり読んだことがないが、登場人物がやはり漢字ばかりで混乱することがあった。
    ただこれは自分の読書経験不足に由来するものかなと思うので、もっと色々な本を読んで、情景描写とかを理解できるようにしたい。

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    2025年10月31日
  • わが母の記

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    小説のような、随筆のような、母親の惚けていく晩年を淡々と綴ったもの。

    自分の親にも被るところがあり興味深く読んだ。

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    2025年08月15日
  • 天平の甍

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    初めて井上靖さんの小説を読みました。
    また、天平の時代を舞台にした小説を読むのも初めてです。

    会話文や、心情を表す表現が少なく、歴史書を読んでいるかのような印象を受けました。
    用語も難しく、ページ数の割には読むのに時間がかかってしまいました。

    鑑真が度重なる苦難の末、失明しながらも日本にやって来たことは歴史の授業で習いました。
    しかし、その裏で普照のような日本人留学僧の尽力があったことは知りませんでした。

    最も印象に残ったのは、ひたすら写経に没頭する業行さん。自身が書き写した経典に執着する彼に、共感を覚える普照。この2人の関係性が良いなと思いました。
    それだけに、あの結末は切ないものがあ

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    2025年07月07日
  • 氷壁

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    1955年のナイロンザイル切断事件と北鎌尾根での遭難を元に書かれた小説。魚津は登山家は冒険しないと行っていたが、落石の続く中に自ら進んで行き、、、。幸せな結末ではだめだったのか

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    2025年07月03日
  • 天平の甍

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    唐で何年もかけて学んだものを命懸けで船で運び、それも確実に届けられるかわからない中、何とか伝えられた戒律と考えると、仏教の教えは価値のあるものに思える。

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    2025年04月02日
  • 後白河院

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    後白河院の近くにいた同時代人四人が語る当時の「現代史」。
    本書の発表は1972年。
    1995年に発表された辻邦生の「西行花伝」は、本書の形式に倣ったものであることが分かる。

    四人とは平信範、建春門院中納言、吉田経房、九条兼実だ。
    平信範は、平の名前を持つが、武家平氏の清盛と違って貴族。堂上平氏と呼ばれる。鳥羽院、後白河院に仕える。
    建春門院中納言は、後白河院の妃、平滋子。
    清盛の夫人である時子の妹。
    後白河院の間に高倉天皇を産む。
    彼女の存在が、後白河院と清盛の融和を生み出していた。彼女の死によって後白河院と清盛な対立は先鋭化する。
    吉田経房は、平氏政権の実務官僚だったが、源頼朝に認められ、

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    2025年03月14日
  • 北の海(上)

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    七帝柔道記からこの本にたどり着いた。自伝的三部作の第三部にあたる本書の、前二部作であるしろばんばや夏草冬濤は未読のまま読んだ。四高、今の金沢大学の前身、での柔道づけの生活が続くのかと思っていたら、なかなか出てこず、上下巻のうち、四高での柔道描写は思いの外少なめで残念だった。しかし、少ないながら四高柔道部での仲間たちとの生活は生き生きと描かれていて最高だった。全編を通じて、あのノリだったらよかったのに、と思ったが、人生の中の一瞬でしかない青春を描く小説なのであるから、物足りないくらいが良いのかもしれない。

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    2025年02月03日
  • 敦煌

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    本作の主人公、趙行徳にしても、『天平の甍』の普照にしても、人為を超えた何物かに突き動かされて、結果的に何事かをなしている。何事か、とはここでは仏意の伝承ということになる。さすれば、仏意とは遺伝子の如きものであろうか?

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    2024年12月24日
  • 天平の甍

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    ウ~ン。どうなんだろうか? 事実と思われることを積み重ねて書かれているとも言えるが、実際はそうでもない。井上靖の文名を高らしめた作品ではあるが、那辺にその文学的価値があるのだろうか? 普照のどっちつかずのキャラクターはよく描けているとは思えなくもないが、まだ、踏み込みが甘いような気もする。

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    2024年12月22日
  • 風林火山(新潮文庫)

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    単純に面白かった。
    大河ドラマで描かれたであろうように、何ゆえに山本勘助はかくなる人物と成り得たのかが分かるともっとよかった。
    すなわち、勘助の行動の原理は由布姫への執着にあると思うが、なぜ、かくまでに勘助は由布姫に執着してのであろうか?
    また、勘助が武田家の従者となり、抵抗なり、批判なりがあったと思うが、それをいかにして、打開していったのかも気になるところだ。
    軍略についての説明がもう少しあるとなおよかった。

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    2024年12月18日
  • 敦煌

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    映画を確かに見たが、覚えているのはラストのシーンのみ。そこまでの長い物語があったのだ。この物語は事実から逆算して井上が創り出したストーリーなのか。すごい。ただ面白いというほどではないな。

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    2024年10月24日
  • わが母の記

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    井上靖本人の母親の老いに関して
    家族が経験したことを
    本人目線で淡々と綴っている。

    とはいえ、母親の面倒を見たのは
    主に女姉妹家族や妻娘であるため、
    だから、淡々と分析できているのでしょう。

    母親がどんどん子供返りしていくとか、
    家族や周りを困らせているさまは、
    なぜ?と、
    分析せずには居れないのかもしれません。
    別荘があったり、お手伝いの方がいたり、
    家族が助け合えたり、
    恵まれているとはいえ、
    大変な時間をすごされたことでしょう。
    人が亡くなるということは、
    大きなことです。
    そして、全ての人が、行く道なのです。
    状況などは違えども、
    全ての家族が通る道なのです。
    感慨深くよませてもら

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    2024年09月06日