井上靖のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ成績が下がったことへの焦りと
一年上級の魅力ある先輩たちとの交流。
自分とは違うものや世界に憧れる思春期の切なくも懐かしい雰囲気が漂う。
羊羹の切り方や読んでいる本を気にしたり
寺に下宿させられるのが嫌で仕方なかったのに
友達に羨ましがられて気が変わったり
洪作の素朴さが等身大に感じられて面白い。
優等生として生きてきて、きちんと生きなければという思いもあれば
自堕落な生き方に憧れもする、思春期らしい葛藤というほど大袈裟でもないうつろう少年の気持ち。
友人に誤解されるなど、誰しも通る思春期の艱難が、淡々と日常に織り込まれ描かれている。 -
Posted by ブクログ
千利休の死に際を、本覚坊という人間の目を通じ、井上靖が語る、という趣向。
千利休とは?利休の茶とは?いったいなんだったのでしょう?茶を「遊び」でなく、生死をかけた「人生哲学」「美学」に高めた利休の内面を、弟子の本覚坊を中心に、山之上宗二、古田織部、東陽坊、江雪斎、宗旦というもっとも利休に近い人々の「目」を自在に借りながら露わにしていく。
ミステリーっぽいところが読みやすい。
井上靖の「孔子」も同じように、師に寄り添い、師なきあと、仲間から距離をおいた、弟子の目を使って、語っていたな。
つまるところ、井上靖自身が「弟子」その人であるかのように仕立てていて、ノンフィクションのように思えるところが -
Posted by ブクログ
井上さんの作品は、まだ数冊しか読んでいないのですが、これはすごいと思いました。
架空の弟子の口から語られる孔子と孔子を取り囲む弟子たち、揺れ動く国と歴史。
たとえば同じ設定、同じ筋書きで別の人が書いていたら、この作品はなかった。
井上靖という人間の精神の深み、その澄み具合がこの作品を書かせたのだと思います。
物語の展開だけで泣かせるような、安っぽい感動はありません。でも読み終えたあと、激しく泣いてさっぱりしたような、このままでいいのかと訳もなく焦ってしまうような、熱いにかたまりが残ります。
――――――なんて、えらそうに書いてますけど! 私だってちゃんと読み込めてるとは言えないんですけど!
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Posted by ブクログ
先日、行きつけの料理屋のママさんが、「先生にぴったりの言葉を見つけんです。聞いてくださいますか?」と美しいカバーに包まれた小ぶりのノートを大事そうに取り出してこられました。テレビや本で心に響く言葉を見つけた折々に書き記しておかれるのだそうです。「孔子の人柄は、温和であって、しかも厳格であり、威厳を備えながらも、威圧感がなく、礼儀正しく、しかも窮屈を感じさせなかった」「ほう、すごいですね」
「そうでしょう。この言葉を聞いたときに、杉先生そのものだって思ったんです」私自身としては、儒教の創始者であり世界四聖として名高い孔子になぞらえていただくなど、全くとんでもない限りです。いずれにしても、このよう