井上靖のレビュー一覧

  • おろしや国酔夢譚

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    ネタバレ

    人ってあっけなく死ぬもんなんだなと思った。光太夫たちが帰りついてからが特に面白く、そこにもっと照明を当ててほしかった。特に光太夫たちの空白のような晩年は気になる。
    司馬さんの『菜の花の沖』を先に読んでおり、本作を読んで話がつながっていく感じが楽しかった。
    靖さんの文章は田んぼの脇の溝を流れている水のようなどこか懐かしい透明感があって好き。

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    2011年06月01日
  • 風濤

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    歴史のなかで主導権をとれず、耐えながらも役割に殉ずる人生に胸がふさがれる。派手さはなく、爽快感も無いがなかなか良い読みおわり。

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    2011年04月24日
  • 夏草冬濤(下)

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    ネタバレ

    成績が下がったことへの焦りと
    一年上級の魅力ある先輩たちとの交流。
    自分とは違うものや世界に憧れる思春期の切なくも懐かしい雰囲気が漂う。
    羊羹の切り方や読んでいる本を気にしたり
    寺に下宿させられるのが嫌で仕方なかったのに
    友達に羨ましがられて気が変わったり
    洪作の素朴さが等身大に感じられて面白い。

    優等生として生きてきて、きちんと生きなければという思いもあれば
    自堕落な生き方に憧れもする、思春期らしい葛藤というほど大袈裟でもないうつろう少年の気持ち。
    友人に誤解されるなど、誰しも通る思春期の艱難が、淡々と日常に織り込まれ描かれている。

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    2011年04月18日
  • 猟銃・闘牛

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    ネタバレ

    あなたは愛される一生を選ぶか、愛する一生を選ぶか。女学生だったヒロインたちの日常生活での一言は、その後の私の人生に大きな影響を与えた。

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    2011年03月07日
  • 孔子

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     孔子の死後、弟子の一人が師匠と同門の高弟たちについて語る。
     人生をかけて学ぶに足る師を見出した弟子たちの姿と、彼らを愛し、導いた師の人間としての大きさが、じわじわと膨らんでくる。
     類似した内容が繰り返される描き方には読みにくさも感じるが、孔子が生涯をかけて、いかに繰り返し同じことを説いたかを考えると、自然に思える。その手法は、弟子が見聞きした師・釈尊の行跡や教えを語り合い、編纂された仏教経典の記述を思わせる。
     孔門の「師弟」の人間的豊かさに感動し、驚かされもしたが、現代では失われつつあり、共感されにくいものでもあると思う。

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    2012年01月18日
  • 本覚坊遺文

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    千利休の死に際を、本覚坊という人間の目を通じ、井上靖が語る、という趣向。
    千利休とは?利休の茶とは?いったいなんだったのでしょう?茶を「遊び」でなく、生死をかけた「人生哲学」「美学」に高めた利休の内面を、弟子の本覚坊を中心に、山之上宗二、古田織部、東陽坊、江雪斎、宗旦というもっとも利休に近い人々の「目」を自在に借りながら露わにしていく。
    ミステリーっぽいところが読みやすい。

    井上靖の「孔子」も同じように、師に寄り添い、師なきあと、仲間から距離をおいた、弟子の目を使って、語っていたな。
    つまるところ、井上靖自身が「弟子」その人であるかのように仕立てていて、ノンフィクションのように思えるところが

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    2010年08月22日
  • 孔子

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    井上さんの作品は、まだ数冊しか読んでいないのですが、これはすごいと思いました。
    架空の弟子の口から語られる孔子と孔子を取り囲む弟子たち、揺れ動く国と歴史。
    たとえば同じ設定、同じ筋書きで別の人が書いていたら、この作品はなかった。
    井上靖という人間の精神の深み、その澄み具合がこの作品を書かせたのだと思います。
    物語の展開だけで泣かせるような、安っぽい感動はありません。でも読み終えたあと、激しく泣いてさっぱりしたような、このままでいいのかと訳もなく焦ってしまうような、熱いにかたまりが残ります。

    ――――――なんて、えらそうに書いてますけど! 私だってちゃんと読み込めてるとは言えないんですけど!

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    2009年10月04日
  • 風濤

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    元の圧政のもと翻弄されつづけた高麗の苦しみがビビッドに感じられ、そのときの歴史にまさに立ち会っている感覚が味わえた。

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    2018年10月14日
  • 孔子

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    人間がこの世に生きていくうえには、「天命」という、すこぶる正体のわからぬ、
    合理的とも不条理ともいえる掟のようなものがあって、どうやら人間というのは
    そこから自由になることはできないようです。
    自分が思う「正しいこと」をしていようと、しまいと、無関係。

    そのうえで人間がどのように生きるべきか。

    大きい天の摂理の中に自分を投げ込み、成敗は天に任せ、その上で己が正しいと信じた道を
    歩まねばなりません。




    ボクが高校生の頃ベストセラーになっていた本。
    30代半ばにして読む。

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    2010年05月21日
  • 夏草冬濤(下)

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    下巻に入り、急に変わってい洪作。魅力的な上級生達。映画『いまを生きる』のような青春。貧しく何も知らない少年だった井上靖の自伝的小説。
    清々しい若き感受性。ラストの伸びやかなかんじがとても好き。彼らがどのように成長していくかをしりたいけど、この瞬間が美しい。ラスト5ページのための800ページだな。

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    2009年10月04日
  • 淀どの日記

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    戦国の時代を強く生き抜いた女性「茶々姫(淀どの)」。
    7歳で父・祖父を亡くし、17歳で母お市の方も自刃。
    20歳で秀吉の側室となり秀頼を産むが、秀吉の死をきっかけに時代の流れは変わり、家康に攻められ秀頼とともに幕を閉じた。悲運の人生を背負いながら、最後まで強くありつづけた淀どのの生涯を描いた作品。
    途中、秀頼が産まれてからの秀吉への過度な固執心には閉口するが・・・

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    2009年10月13日
  • 淀どの日記

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    ”七光り将軍”と名高い京極高次が、何だかイケメン風に描かれている。
    映画も観てみたいが宝塚スター主演とだけあって歌劇調が抜け切れてないとの酷評。
    井上靖の原作だけで終わらせておくのが正解かと思い、手を出せずにいる。

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    2009年10月04日
  • 楊貴妃伝

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    世の中で一番権力を持っているのは、権力者の愛妃、か。自分の腕の中の権力者が、無力に見える楊貴妃。
    そういう女の権力は、日本だと北条政子とか淀の方、が思い浮かびますね。井上靖は女性を主人公にした歴史小説としえて「淀どの日記」というものも書いているそうで、読んでみたいと思います。

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    2010年06月20日
  • 北の海(上)

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    10代で挫折した小説に手をつけられてうれしい。学生同士の会話が、なんだか古くないかんじ、今ここで聞いているような。言葉遣いや思想はもちろん当時のスタイルなんだけれど、とてもいきいきと感じられるのです。

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    2009年10月04日
  • 淀どの日記

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    井上靖は真田軍記と風林火山を読みましたが、淡々と人生を物語っていて、ストーリー全体の起伏は乏しいです。激しく時代や人が動いているけど、何だか静かなのです。淀どの日記もご多分に漏れず淡々と進行していきました。三姉妹の関係の変化、京極高次への気持ちの変化、血筋へのプライドの持ち様の変化が一応山場かな、と。映画もこんな淡々とした雰囲気なのかな・・・気になる。

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    2009年10月04日
  • 氷壁

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    一日が終わって床に着く前の読書は自分に戻れる瞬間。いったん熟睡したにも関らず続きが気になり夢にまで出てきて再び深夜に読書再開した程の内容。時代が変わっても機材が進化しても山の危険は同じですよね。

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    2009年10月04日
  • 孔子

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    孔子のふるさと・山東省の曲阜へ行く前に。
    論語の教えがちりばめられていて分かりやすい。
    孔子一門が雷をじっと座って見ているという場面がすごく印象的。

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    2009年10月07日
  • 楊貴妃伝

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    楊貴妃は色っぽく艶めかしく書かれているのですが、彼女視点で話が進んでいく事もあって結構人間くさくて好感が持てました。

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    2009年10月04日
  • 孔子

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    先日、行きつけの料理屋のママさんが、「先生にぴったりの言葉を見つけんです。聞いてくださいますか?」と美しいカバーに包まれた小ぶりのノートを大事そうに取り出してこられました。テレビや本で心に響く言葉を見つけた折々に書き記しておかれるのだそうです。「孔子の人柄は、温和であって、しかも厳格であり、威厳を備えながらも、威圧感がなく、礼儀正しく、しかも窮屈を感じさせなかった」「ほう、すごいですね」
    「そうでしょう。この言葉を聞いたときに、杉先生そのものだって思ったんです」私自身としては、儒教の創始者であり世界四聖として名高い孔子になぞらえていただくなど、全くとんでもない限りです。いずれにしても、このよう

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    2009年10月04日
  • 北の海(下)

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    上巻の続きです。主人公はなんだか一本気というか、一本調子です。文自体もどことなく素朴で、作文を思い出させられました。そこのところ解説でフォローしてました。本当ですかねぇ。

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    2009年10月04日