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熊野補陀落寺の代々の住職には、61歳の11月に観音浄土をめざし生きながら海に出て往生を願う渡海上人の慣わしがあった。周囲から追い詰められ、逃れられない。時を俟つ老いた住職金光坊の、死に向う恐怖と葛藤を記す表題作のほか「小磐梯」「グウドル氏の手套」「姨捨」「道」など、旺盛で多彩な創作活動を続けた著者が常に核としていた散文詩に隣接する人生の不可思議さ、奥深さを描く9篇。
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Posted by ブクログ
補陀落渡海記を読みたくて手に取った。 何だろう。 何となく自分の運命が規定されていく感じ。 誰かが強く主張したわけでもなく、明確なルールがあるわけでもない。それなのに死を強要され、受け入れるしかない。ふんわりとした地獄。何だろう。この感じは。塀のない刑務所のような。 言語化が難しいが、現実で見かける...続きを読む風景だ。
補陀落渡海記が心に滲みる。補陀落寺の住職として、生きながら船に乗って観音浄土を目指す金光坊の心情を描写している。淡々とした描写がリアルだ。十分な悟りをひらいたわけではないのに、こんな状況に追い詰められるのが怖い。井上靖ならではの傑作。
井上靖は日本文学の代表とひとりごちた。 渡海上人の様々なパターンが金光坊を通して綴られ、各人の表情が、シャープに読者の心を抉る。 個人的には、小磐梯が心に残る。吉村昭に通じているドキュメンタリーながら、民俗的な風景と慕情が、読後の印象を最も強めている。
人生と死に向き合う作品9編。掲題は、既に海に流され死ぬ運命を認めながら、恐怖と葛藤にもがく僧の話。著者の筆力の凄さを感じる。2018.1.13
表題作を読みたくて購入。表題作以外は1作を除いて現代小説でしかも全く面白くない。 表題作はまずまず。最も終わり方をもう少し工夫出来ないものか。それともこれは史実なのか。 もう一つの歴史小説は磐梯山の噴火。凄まじい出来事のようだが、小説は今ひとつ。
補陀落寺に代々伝わる、渡海上人の慣わし。それは、生きながら海に出て往生を願うというものだった。表題作ほか9編。 決して悪い短編集ではなかったし、井上靖らしい淡々とした清らかさがよく出ていたと思う。しかし、読み終わって日数が経った今になってその内容を思い返そうとすると、どうにも印象が薄いのである。 ...続きを読むというわけで、感想を書こうと思っても言葉が出てこない・・・やはり感想を書くのは読んだ直後に限る、と反省したい。
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補陀落渡海記 井上靖短篇名作集
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