井上靖のレビュー一覧
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流石井上靖だけあって特に抑揚のないストーリーではあるのに飽きずに読める。
だけど…額田女王のキャラ設定がどうにも好きになれない。十市皇女について周囲には「大海人ではなく梅の精の子」と頑なに言い張るくせに、侍女にだけ「この子は誰に似てると思う?」と迫って、侍女が畏れをなして黙っていると「気のちいさいひとね」と突き放すくだりは人が悪すぎる。近江に都移りしてからも、鵜野讃良(後の持統帝)に対して「あのお方が?[私より]若くて美しい?」と自信たっぷりに陰口を叩くあたりも、伝わっている歌に垣間見える額田の人柄とは大きく乖離しているようにしか感じられなかった。これなら澤田瞳子の『恋ふらむ鳥は』での額田の -
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初めて井上靖さんの小説を読みました。
また、天平の時代を舞台にした小説を読むのも初めてです。
会話文や、心情を表す表現が少なく、歴史書を読んでいるかのような印象を受けました。
用語も難しく、ページ数の割には読むのに時間がかかってしまいました。
鑑真が度重なる苦難の末、失明しながらも日本にやって来たことは歴史の授業で習いました。
しかし、その裏で普照のような日本人留学僧の尽力があったことは知りませんでした。
最も印象に残ったのは、ひたすら写経に没頭する業行さん。自身が書き写した経典に執着する彼に、共感を覚える普照。この2人の関係性が良いなと思いました。
それだけに、あの結末は切ないものがあ -
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ネタバレ日本史史上、誰もが知る人物であるのに謎の多い額田王の生涯を描いた著名な一作。生涯を描いたと言っても、激動の飛鳥時代を描いて、その中を生きる額田王を描いたという感じだ。少女期に宮廷に上がり、大海人の寵愛を受けて娘を産み、別れ、中大兄の寵愛を受けたというのは誰しも知るところであるが、著者が男性であるが故か額田王の感情があまりにも淡白だ。天武天皇即位以降については不明な点が多いからか数ページで終わっており、母親として最大の悲哀である十市皇女の薨去の件もほとんど流されている。前半に資料もなしに描き切ったのならば、晩年について描く方が読み応えがあった気がする。
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後白河院の近くにいた同時代人四人が語る当時の「現代史」。
本書の発表は1972年。
1995年に発表された辻邦生の「西行花伝」は、本書の形式に倣ったものであることが分かる。
四人とは平信範、建春門院中納言、吉田経房、九条兼実だ。
平信範は、平の名前を持つが、武家平氏の清盛と違って貴族。堂上平氏と呼ばれる。鳥羽院、後白河院に仕える。
建春門院中納言は、後白河院の妃、平滋子。
清盛の夫人である時子の妹。
後白河院の間に高倉天皇を産む。
彼女の存在が、後白河院と清盛の融和を生み出していた。彼女の死によって後白河院と清盛な対立は先鋭化する。
吉田経房は、平氏政権の実務官僚だったが、源頼朝に認められ、