井上靖のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
千利休の死に際を、本覚坊という人間の目を通じ、井上靖が語る、という趣向。
千利休とは?利休の茶とは?いったいなんだったのでしょう?茶を「遊び」でなく、生死をかけた「人生哲学」「美学」に高めた利休の内面を、弟子の本覚坊を中心に、山之上宗二、古田織部、東陽坊、江雪斎、宗旦というもっとも利休に近い人々の「目」を自在に借りながら露わにしていく。
ミステリーっぽいところが読みやすい。
井上靖の「孔子」も同じように、師に寄り添い、師なきあと、仲間から距離をおいた、弟子の目を使って、語っていたな。
つまるところ、井上靖自身が「弟子」その人であるかのように仕立てていて、ノンフィクションのように思えるところがさすが。 -
Posted by ブクログ
井上さんの作品は、まだ数冊しか読んでいないのですが、これはすごいと思いました。
架空の弟子の口から語られる孔子と孔子を取り囲む弟子たち、揺れ動く国と歴史。
たとえば同じ設定、同じ筋書きで別の人が書いていたら、この作品はなかった。
井上靖という人間の精神の深み、その澄み具合がこの作品を書かせたのだと思います。
物語の展開だけで泣かせるような、安っぽい感動はありません。でも読み終えたあと、激しく泣いてさっぱりしたような、このままでいいのかと訳もなく焦ってしまうような、熱いにかたまりが残ります。
――――――なんて、えらそうに書いてますけど! 私だってちゃんと読み込めてるとは言えないんですけど!
でもすごいなあ。この人でないと書けなかっただろう小説。そんなものを書けた人がいるんだなあ。
個性とか、そんなものを飛び越えて、そのさらに奥にまで到達している気がする。 -
Posted by ブクログ
先日、行きつけの料理屋のママさんが、「先生にぴったりの言葉を見つけんです。聞いてくださいますか?」と美しいカバーに包まれた小ぶりのノートを大事そうに取り出してこられました。テレビや本で心に響く言葉を見つけた折々に書き記しておかれるのだそうです。「孔子の人柄は、温和であって、しかも厳格であり、威厳を備えながらも、威圧感がなく、礼儀正しく、しかも窮屈を感じさせなかった」「ほう、すごいですね」
「そうでしょう。この言葉を聞いたときに、杉先生そのものだって思ったんです」私自身としては、儒教の創始者であり世界四聖として名高い孔子になぞらえていただくなど、全くとんでもない限りです。いずれにしても、このような人間像を最終的な私の目標として心の片隅に定めておきたいと思います。そういえば、と家に帰って井上靖の「孔子」を開いてみました。特別装丁の立派な本です。裏表紙の書き込みを見ますと、1991年6月、かつて、ある大学の学長を務めておられたH先生の
脳梗塞後の精神的リハビリに毎週通っていた、その帰りに買い入れたと覚書がありました。