井上靖のレビュー一覧
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・猟銃
ある男の13年に渡る不倫の恋を3人からの手紙という視点で描いている。自分と相思相愛だと思っていた不倫相手が実は元旦那の不貞を忘れたくて自分との不貞行為を行ってたというのは現代でもよく聞く気がする。愛される、愛するどちらを選ぶかという選択は愛される幸せを望む人がほとんどだがホントの幸福は愛する方にあるのでは、と死んでいく不倫相手が悲しかった。やっぱりちゃんと一人の人を愛する、というのが幸福なんだろうな。
・闘牛
社運をかけた闘牛大会に奔走する新聞記者の話。戦後すぐもう金持ちたちは動き始めて成功していたんだなあ、天候によって人生が左右される様子がハラハラした。
・比良のシャクナゲ
周り -
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淡々とした描写が大陸の歴史の壮大さをかえって引き立たせる。行徳が流れ流れて敦煌にたどり着いたように、大量の経巻も千年の時を越えて現代に届けられる運命にあった。無数の人々が行き交い、悲喜交々の人生があるなかで、何か大きなものの意思によって人間は動かされているのかもしれない。そんな歴史の因果を感じさせる小説だった。
この小説ではフィクションとして経巻が保存された経緯がドラマチックに描かれているが、これが真実でないとしても、千年以上の昔に保存しようとした人がいたことは間違いないわけで、それだけでも尊い行為だ。何とか自分たちの時代の知識を次の世代へ繋ぎたい、存在していたという証を残したいという人間 -
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唐招提寺に行く予定があるので、予習。
昔の歴史小説は硬派ですね。
ドラマチックな場面も淡々と、言い方を変えれば無駄なあおりもなく語られていきます。
今の作家ならもっとエンタメに寄せるんじゃないかなと思います。そうなると、文庫本3-4冊分くらいはいくんじゃないでしょうか。そんな内容がおよそ200ページに収まっています。エンタメ部分は自分の脳内で膨らませながら読みました。また、中国の人物や地理を調べながらの読書になりました。
そういうことで、短い小説ですが、結構読むのに時間がかかりました。
これで唐招提寺参拝を、小説聖地巡礼として行くことができます。 -
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井上靖の作品は、少ししか読んでこなかった。
「しろばんば」が一番最初かな。
歴史ものでは「額田王」と「孔子」。
「孔子」は自分の孔子のイメージの大方を作っている。
それ以来だから、20年近くご無沙汰状態だった。
まず一番印象に残っているのは簡潔な文体。
今の歴史小説を書く作家さんとはどこか違う。
今の作家さんなら、万葉集などの古典籍を引用するにしても、必ず訳を添えたり、人物や語り手に言い換えさせたりと読者に配慮するだろう。
あるいはそもそもそういうものを引用しないとか。
そういう配慮がまるでないというか、読者もある程度そうしたものを読みこなすだろうという期待があるのか。
すがすがしいまでの簡 -
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児童書版では前半までしかおさめられておらず、ぬい婆との関係など、気になりすぎて購入。
ぬい婆とのなんてことない「生活」。
例えば、嵐の夜に握り飯をこさえて、見回りを待つ、みたいなこと。遅いだのなんだの文句を言うけど。
他人を見回る地縁の「他人事じゃない感覚」や「握り飯ひとつたべなされ、と振る舞う様子」に何か温もりを感じる。
村の誰が里帰りするだの、その人は出世しただの落ちぶれただのも他人事じゃない。
主人公とぬい婆が、都会に行くにも帰るにも、筒抜けで、好奇心まんまんで見送り、迎えが来る。それすら他人事ではない。
後半に、主人公がぬい婆にお土産にした羊羹を、ぬい婆が小さく切って、近所に配 -
購入済み
講談社の馬場さん経由
面白いです。
ブン屋崩れの頃の話で、芥川賞貰った闘牛とかと同じ頃の作品、お仕事です。
もちろん色々もっているのですが、もう、盛り盛りと。
その辺りも楽しい。
お好みで。 -
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約1000年前の、フィクションだけど、時を越えてくる物語。こんな壮大な体験が500円せずに味わえるって、本ってつくづく凄いと思う。中国大陸の奥深さ多様さ無常などを感じました。
地球儀で見てみると、主人公趙行徳が移り渡ってきた開封から敦煌は、ちょうど北海道から鹿児島くらい。意外にそんなに長くはない、いや長いかとか思ったり。仏教が中国に伝わってきたルートという意味では敦煌〜開封はぜんぜん一部でしかなく、インド〜敦煌もめちゃくちゃ長いし、インド自体もデカいし。あと、シルクロードという捉え方だとさらに長い。丸い地球儀だと中国から中東が見えない、当たり前だけど。
そんなふうに距離感を確認した上で、改 -
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中国、インド、日本が舞台の物語12編の短編集。
「薬屋のひとりごと」から西域に興味がわき調べてみると、「楼蘭て実際にあった国の名前なのか」「その楼蘭の小説があるのか」ということで買ってみた本。
【楼蘭】
かつてシルクロードの要衝として栄えた楼蘭は、大国や大いなる自然の力に翻弄され滅んでいったまるで蜃気楼のような都市。そこに生きた人々の営み、彼らの想像を超える苦悩と翻弄の歴史、そして悠久の時の流れの中に埋もれていった文明の儚さに深い哀愁とロマンを感じる。
楼蘭は漢の命により紀元前77年に鄯善と名前を変えて場所を移し、紀元5世紀ころまで続いたようだ。当たり前の事ではあるが、鄯善移住後すぐの世代