井上靖のレビュー一覧

  • 楼蘭

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    これは作家井上靖氏の昭和30年代中心の短篇小説集です。標題に代表されるように西域に主題をとった作品群が多く、この地域に関心の深い私には前から読みたかった作品です。小説というよりは史書のような趣きで、どこまでが創作でどこからが史実かとかわからなくなりそうなくらい、引き込まれます。日本の説話にまつわる作品も集録されており、磐梯山の爆発の事件に主題をとった小磐梯という作品も味わい深いです。ま、核となる作品は間違いなく楼蘭です。実際にあった楼蘭という小国の過酷な運命が描かれており、それと興味尽きない謎の湖、ロプノールの変遷も興味津々です。読後、シンセサイザー奏者の喜多郎の作品を聞きながら床に入ると一層

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    2023年02月24日
  • 北の海(下)

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    終わった〜!10代で挑戦し挫折した井上靖の自伝的三部作を読破。この下巻でも会話がイキイキしてて、特に洪作が宇田に台湾行きに関して一札とられる場面は面白すぎてニヤけてしまった。全作通し、なんて靖氏は昔をよく覚えておられるのだろう!と感嘆しながら読み終えたら、本作の解説を読んで、ガ〜ン・・・「『坊ちゃん』を漱石の自伝小説と思うのは、よほど単純な人間観と文学感を持った読者だろうが、井上氏の三部作、ことに『北の海』を作者の自伝と思い込むのも同様のことである。」(by山本健吉氏)
    言い訳をすると、洪作が実在したことを願いたくなるような思いが「井上氏=洪作」という錯覚を起こしたのでしょう・・・素直にモノを

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    2009年10月04日
  • 夏草冬濤(下)

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    洪作の下巻の“ワル”っぷりは気持ちがいい程です。洪作すなわち作家井上靖氏が文学に興味を抱き始めたきっかけが興味深い。それにしても、詩歌をたしなむ不良学生たち・・・インテリジェント

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    2009年10月04日
  • 夏草冬濤(上)

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    『しろばんば』の続編。ちょうどこの作品の洪作と同じ年頃に、読んだ以来だと思う。複雑な家庭環境で繊細に立ち回っていた湯ヶ島時代の洪作に比べ、思春期を迎えちょっぴり”坊”の道をそれ始めた洪作に、当時はあまり魅力を感じなかった。オトナになり、今回再読して、物語の中の洪作が引き起こすあれこれを、まるで姉のような・・・母のような?・・・広い心持ちで受け止められたことで感慨にフケたのであった。

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    2009年10月04日
  • おろしや国酔夢譚

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    時は江戸、大黒屋光太夫の漂流記。
    彼はおろしや国(ロシア)で何を見たのか?
    戦後の旧ソ連抑留者を思い起こさずにはいられません。

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    2009年10月04日
  • 夏草冬濤(上)

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    井上靖自伝3部作の2番目。中学時代の多感な年頃が舞台。

    女性というこれまで道の生き物への接し方と刺激的な友人との出会いは、主人公を少年時代からぐっと成長させるが、オトナになりきれないココロとのギャップがまた切ない。

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    2009年10月04日
  • わが母の記

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    最後まで健全で長寿を全うした曽祖母とボケて亡くなった祖母を思い出して、本当にそうだなぁと共感しながら読んだ。
    愛想笑いを口辺に漂わせたがすぐ視線をあらぬ方に持って行った。どこかに鬱々としてまないところがあった。
    いつからか知らないけれど、娘だとは思われなくなってしまっているわ。年とった召使ぐらいに思っているらしいの。

    「人間は誰でも年をとれば、持っている荷物を一つずつおろしていく。母もおろしているのだ」
    若いうちはたくさんの記憶や人間関係という「荷物」を抱えて生きていますが、あの世へ旅立つ準備として、母はただ荷物を軽くしているだけなのだという、温かくも切ない諦念が込められている

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    2026年08月23日
  • あすなろ物語

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    大学時代に読んだ本を再読。
    青春のモラトリアム的な物語だった記憶があるけれど、読み返してみると、人生を俯瞰したような内容だった。それもそのはず、井上靖自身の経験をベースにした主人公の物語。

    他人からはうかがい知れない人とのつながりや、その人から受けた影響など、人生の現実が淡々と描かれている。フランス文学を読んだあとのような、もやっとした、解決策のない現実感が残る。

    あらためて読んでみると、今よりも大学時代のほうが、戦争がごく自然にストーリーに入り込んでくる本が多かったことに気づく。現在、戦争が身近ではなくなっている危機感も感じた。

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    2026年08月11日
  • 額田女王

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    国家形成の時代といえる大化の改新から壬申の乱天智、天武天皇兄弟の治世下。二人の皇太子時に愛された主人公。神の声を聞き歌に詠むとはいえ、神秘的より人間的な感情で世と接する。近親間での接触に古代を伺わせるが当時としては特殊なことでなかったことも話としておおらか。2026.8.3

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    2026年08月03日
  • 額田女王

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    歴史の教科書でしか聞いた事のない人物について、著者の解釈にて物語として知っていくのは、歴史の勉強をするよりもずっと面白くて楽しかった。
    歴史上の出来事について理解が深まるだけではなく、こんなことが本当にあったのかもしれないと思うと、ロマンを感じた。

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    2026年07月28日
  • 天平の甍

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    第8回芸術選奨文部科学大臣賞

    鑑真は、6度目の渡航でようやく来日して仏教の発展に貢献した唐の僧、という知識しかなかった。
    鑑真が日本へ渡ることは唐王朝から許可されておらず役人の目を忍んでの出航だったことや、普照をはじめたくさんの留学僧が関わっていることを知らなかったのでとても興味深く読むことができた。
    日本へ仏教を伝えるために何年もかけて写経をしたり、渡航が命懸けだったり、当時だからこその苦労がもどかしく胸が痛んだ。
    漢字や古い表現が多いので細かく意味をつかもうとすると難しいけど、ざっくり理解しながらなら読みやすく、薄いので数時間で読めた。

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    2026年07月15日
  • あすなろ物語

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    「あすは檜になろう、あすは檜になろうと一生懸命考えている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだって!それであすなろうと言うのよ」
    『あすなろ物語』の中に出てくるセリフだ。
    あすなろは漢字で『翌檜』と書く。
    檜と似ているけれど、檜ほど大きくならないため「明日は檜のように大きくなろう」という意味が込められているらしい。
    著者はこのあすなろの説話の持つ哀しみや美しさを表現したかったということだ。
    物語はひとりの人間の少年期から壮年期までが描かれている。
    淡々と描かれている人生譚だが、その中に多くの哀しみや憤り、葛藤、そしてそんな中にもかすかな希望を感じられるような物語だった。
    井上靖作品をもっと読んで

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    2026年06月21日
  • しろばんば

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    著者の幼少期の体験に基づいたと思われる回想記的小説。昭和以前と思われる時代の片田舎で育った少年。ひょんなことから曽祖父の愛妾(今はすっかりお婆さん)に預けられ、本宅の隣地の土蔵で育てられる。古き時代の価値観や振る舞いが随所に描かれていて、田舎育ちの身としても体験したわけではないが十分に想像でき感情移入できる。悪く言えば下品で粗野で乱暴でモラルも常識もない。平気で近所の家に上がり飯を食い風呂を覗き女子を揶揄い時には手を出す。良く言えば情が厚く助け合い精神に溢れ信心深く平和なコミュニティ。主人公は、お婆さんとの二人の世界から、本宅の家族、近所の悪ガキや友人、学校の先生、都会で暮らす親戚などの交流を

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    2026年06月19日
  • わが母の記

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    文章が上手いわ。感情的になりかねないテーマであるのに、至極客観的視点で捉えて書かれており、とはいえ冷たい印象は全くない。兄弟の対応についても同様で家族間のいさかいなるものは老婆のお世話にあたり全く無かったようにも見受けられる。文体も非常に読みやすく、とはいえ硬さもあり、硬すぎずなのでセンスよく品良く、自然とキレる頭が良い人の印象。他の作品も読んでみたいと思った。

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    2026年05月06日
  • 天平の甍

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    奈良飛鳥〜平安時代に興味があるのと、井上靖って読んだことないなというチョイスで以前からリストに入れていた本作を読んだ。

    鑑真和上が日本に渡来した出来事を、唐への日本留学僧の視点から描いている。


    主人公の普照は秀才と呼ばれる僧だが、自分ではそう呼ばれるのを嫌い、そう評されるのはただ自分がほぼ机から離れないだけだからだ、と弁えている。そんな彼が留学僧に選ばれ、それなりに不安を覚えながら唐に渡る。
    そこで唐に留学に来て幾ら勉強しても自分は大したことはなかった、ならば経典をひたすら写し日本に持ち帰ることをおのれの使命とするという日本人僧の業行に出会ったり、一緒に留学に来たものの唐で還俗してしまっ

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    2026年04月27日
  • 敦煌

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    9世紀の中国西域を舞台に、趙行徳の人生を辿りながら描かれる歴史浪漫小説。

    『蒼き狼』さながら、歴史がずんずんと栄枯盛衰していくような文章が非常に気持ち良かった。

    敦煌という中国北西部の仏教都市名が本書のタイトルになっているが、敦煌(=大にして盛ん)の意味の通り、その時代から時を超えて受け継がれ、現代において大成を成した仏教に対する感動を書き表した一冊なのかなと感じた。

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    2026年03月29日
  • 蒼き狼

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    チンギスハンの一生。意外と周囲に恵まれていたこその覇権だったという感想。彼の青春時代に描かれる万能感と、年老いてからの孤独や不安との対比がとてもよく描かれていると感じた。

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    2026年03月29日
  • 天平の甍

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    鑑真まじですごい。ここまで昔の話だとあんまり記録になくてもおかしくないと思うが、そんなに多くない記録をうまく拾って小説に仕立てたのはさすがの一言。個人的には阿倍仲麻呂がこんなにすごいやつだと思っておらず、ちょっとびっくりした。

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    2026年03月29日
  • あすなろ物語

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    初めて井上靖作品を読みました。
    梶鮎太の少年期から壮年期までを淡々と描いていて、それぞれ独特な背景ながらも情景が目に浮かぶような描写が生き生きとしていて、清廉さや哀愁を感じました。
    登場人物もいずれも特徴的で、爽やかでいてとても切ないようななんとも言えない読後感でした。

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    2026年02月18日
  • 氷壁

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    登山はきつそうでしないが、少しはまる気持ちがわかった気がした。落ち着いた貴婦人と純粋な若い子の対比もいい

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    2026年01月11日