井上靖のレビュー一覧

  • 天平の甍
    井上靖(1907~91年)氏は、北海道旭川町(現・旭川市)生まれ、京都帝大文学部哲学科卒の、戦後日本を代表する作家。1950年に『闘牛』で芥川賞を受賞し、社会小説から歴史小説、自伝的小説、風刺小説、心理小説・私小説など、幅広い作品を執筆した。日本芸術院賞、野間文芸賞、菊池寛賞、朝日賞等を受賞。文化勲...続きを読む
  • 蒼き狼

    いきなりだが、ここでワタクシめの「モンゴル」の知識をお披露目しよう

    遊牧民、相撲、元寇、チンギス・ハーン、フビライ・ハーン…
    以上である(ひどい)

    そしてモンゴルのイメージ(失礼を重々承知で…)
    粗野で野蛮な遊牧民…(モンゴルの方、並びに関係者の方、本当にごめんなさい)

    ところが知れ...続きを読む
  • 額田女王
    大海人皇子押しの自分にとって、額田女王を横取り?した中大兄皇子は強欲そのものに写ってしまいますね
    他にも嫌いな理由はありますけど…
    ただ、この作品での三角関係は、何故か三人ともいじらしく感じられていいかな
  • 幼き日のこと・青春放浪
    「幼き日のこと」は自伝的小説「しろばんば」と対をなすかのうようなエッセイである。事実をもとにしたフィクションがいくつか小説に散りばめられていることがわかり面白い。「青春放浪」も自伝的小説「夏草冬濤」と「北の海」の基になった日々を語っている。著者が幼少期に暮らす年月の少なかった父母との思い出を、その場...続きを読む
  • 北の海(下)
    40年前に読んだものを読み返した。四高柔道部の猛練習のことだけが記憶に残っていたが、今回は、日本海、金沢、犀川、四高生と太平洋、沼津、狩野川、沼中生の対比が味わい深かった。著者の自伝的小説とされているが、洪作の野放図な性格は誇張された創作だろう。それでも楽しく一気に読めた。れい子の心情が切ない。
  • 夏草冬濤(下)
    伊豆湯ヶ島、浜松を経て三島の親戚宅から旧制沼津中学に通った時期の作者の自伝的小説。奔放で魅力的な友人達との出会いによって、行動範囲と視野が広がってゆく様子が瑞々しく描かれている。当時の中学生が将来を嘱望されたエリートであったことが、日常生活の描写から間接的に伝わってくることも興味深い。続編「北の海」...続きを読む
  • 天平の甍
    なんとなく歴史の授業で習った鑑真
    教科書ではさらっとしか習わないのだが、唐から日本へ来るのはやっぱり大変なんだなあ。
    仏教の知識がないので、半分はよくわからなかった。仏教の知識を増やしてから再読したい。
    あと注釈がすごく読みごたえがあります。
  • 楼蘭
    目次
    ・楼蘭
    ・洪水
    ・異域の人
    ・狼災記(ろうさいき)
    ・羅刹女国(らせつにょこく)
    ・僧伽羅国縁起(そうからこくえんぎ)
    ・宦者中行説(かんじゃちゅうこうえつ)
    ・褒姒(ほうじ)の笑い
    ・幽鬼
    ・補陀落(ほだらく)渡海記
    ・小磐梯(こばんだい)
    ・北の駅路

    表題作を読みたいと、ずっと思っていた...続きを読む
  • 敦煌
    科挙受験中に居眠りをしてしまった趙行徳は全裸で売りに出されている女を救った。対価として女から貰ったボロ布には見たことのない文字が書かれていた。その文字で書かれていることを知ろうと西夏に向かうが途中で遭遇した軍隊に捕まり軍兵の一人とされてしまう。文字の読み書きができることで西夏の武将朱王礼に重用され始...続きを読む
  • 天平の甍
    受戒は資格のある僧が行う必要がある。そのために奈良時代の日本は唐から鑑真を招いた。鑑真は苦労に苦労を重ねて日本に辿り着いた。日本への渡航の許可が下りなかったため、無許可で日本に行こうとしたが、計画が漏れて失敗する。出港しても船が遭難することを繰り返した。
  • 風林火山(新潮文庫)
    戦国の名武将の影に天才軍師の存在あり。大河を見ていなかったので存在は知ってはいたが読むのは初めて。
    その策略センスは、やはり持って生まれたものなのでしょうと言う事が、信玄の信頼を寄せる様子からよくわかる。各登場人物の感情表現巧みでそれぞれの個性が良く表れていた。由布姫の感情の激しさやそこに惹かれる勘...続きを読む
  • 天平の甍
    第9次遣唐使に同行する留学僧として渡唐し仏典を学び、日本に戒律を広めるために鑑真大和上と共に何度も難破の苦難を乗り越え、渡日(帰国)を果たした僧普照を主人公とした物語。日本のために反省をささげ、天平時代の幕開けに大きな役割を果たした留学僧たちの苦労の記録。
  • 楼蘭
     楼蘭の1つの国の趨勢、異域の人の班超の生涯、宦者中行説の匈奴で得た夢、何れも真に迫っていて、そこに西域や匈奴の風土を感じるかの様でした。班超が歿する前、故国に西域との繋がりを見、彼が「胡人」と呼ばれた描写には、彼の一生の軌跡が表れている様に思います。

     狼へと変わった陸沈康とカレ族の女が出る狼災...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    武田信玄の天才軍師、山本勘助が主人公
    勘助が信玄に仕える場面〜川中島の合戦の途中(途中な理由は読めばわかります)までの歴史物語

    勘助の成りは異形が理由で今川義元に召し抱えようとされなかったほど…
    色黒で背が低く眼はすがめでちんば、指も1本ない
    知恵だけが彼の人生を支えた
    永く浪人だったがその知恵を...続きを読む
  • 敦煌
    1900年初め、王円籙という道士が窟の一つからたまたま発見した空洞の中には、経巻類が大量に収められていた。
    学がなく、字が読めなかった王円籙は、地方官に報告するも「適当に処理しておけ」と言われるだけであった。
    しかしその大量の文書群は、唐代以前の非常に貴重な資料で、遺失した書物の復活ができた歴史的な...続きを読む
  • 天平の甍
    井上靖の歴史小説として代表的な作品。
    井上靖は小説家としての自身の想いや情景を描いたもの、自伝的なものと歴史小説の3つに大別される優れた小説を多数書きました。
    歴史小説では、日本を舞台したもの、中国を中心としたものを多く執筆していて、本作は大別するのであれば井上靖の中国歴史モノの代表作であり、氏の作...続きを読む
  • 天平の甍
    物語的な描写も多々あるが、史実がベースの小説。これを読んでから唐招提寺を再訪したら新たな気付きがあった。こういう小説はやっぱり貴重だと思う。
  • あすなろ物語
    『あすは檜になろう』としてなれない翌檜(あすなろう)の木のように生きる主人公とそれをとりまく人々の生きる様が、叙情的で美しい文章で綴られている。
    主人公の幼少期から壮年期まで各年代毎に影響を与えた女性や友人などの人物たちが、それぞれの個性を持って描かれ、主人公が成長していく。
    戦中戦後、人が抱く志や...続きを読む
  • わが母の記
    井上靖初読、映画は過去、樹木希林氏ご逝去の直後に観ていた。
    著者の母が老い、主に認知症を進行させていく様を長男の立場でありながら極めて客観的に描く。

    耄碌していく母は少女性を復活させ、我儘な振舞いを見せる。
    人は歳を取る毎、ある一定の年齢を経ると子供へ還っていくと言うが、彼女の場合は無垢と狡猾がせ...続きを読む
  • あすなろ物語
    「あすは檜になろう、あすは檜になろうと一生懸命かんがえている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだって!それであすなろうというのよ」
    あすなろうは翌檜と書く
    これは大人の童話である