井上靖のレビュー一覧
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これは作家井上靖氏の昭和30年代中心の短篇小説集です。標題に代表されるように西域に主題をとった作品群が多く、この地域に関心の深い私には前から読みたかった作品です。小説というよりは史書のような趣きで、どこまでが創作でどこからが史実かとかわからなくなりそうなくらい、引き込まれます。日本の説話にまつわる作品も集録されており、磐梯山の爆発の事件に主題をとった小磐梯という作品も味わい深いです。ま、核となる作品は間違いなく楼蘭です。実際にあった楼蘭という小国の過酷な運命が描かれており、それと興味尽きない謎の湖、ロプノールの変遷も興味津々です。読後、シンセサイザー奏者の喜多郎の作品を聞きながら床に入ると一層
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Posted by ブクログ
終わった〜!10代で挑戦し挫折した井上靖の自伝的三部作を読破。この下巻でも会話がイキイキしてて、特に洪作が宇田に台湾行きに関して一札とられる場面は面白すぎてニヤけてしまった。全作通し、なんて靖氏は昔をよく覚えておられるのだろう!と感嘆しながら読み終えたら、本作の解説を読んで、ガ〜ン・・・「『坊ちゃん』を漱石の自伝小説と思うのは、よほど単純な人間観と文学感を持った読者だろうが、井上氏の三部作、ことに『北の海』を作者の自伝と思い込むのも同様のことである。」(by山本健吉氏)
言い訳をすると、洪作が実在したことを願いたくなるような思いが「井上氏=洪作」という錯覚を起こしたのでしょう・・・素直にモノを -
Posted by ブクログ
・猟銃
ある男の13年に渡る不倫の恋を3人からの手紙という視点で描いている。自分と相思相愛だと思っていた不倫相手が実は元旦那の不貞を忘れたくて自分との不貞行為を行ってたというのは現代でもよく聞く気がする。愛される、愛するどちらを選ぶかという選択は愛される幸せを望む人がほとんどだがホントの幸福は愛する方にあるのでは、と死んでいく不倫相手が悲しかった。やっぱりちゃんと一人の人を愛する、というのが幸福なんだろうな。
・闘牛
社運をかけた闘牛大会に奔走する新聞記者の話。戦後すぐもう金持ちたちは動き始めて成功していたんだなあ、天候によって人生が左右される様子がハラハラした。
・比良のシャクナゲ
周り -
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淡々とした描写が大陸の歴史の壮大さをかえって引き立たせる。行徳が流れ流れて敦煌にたどり着いたように、大量の経巻も千年の時を越えて現代に届けられる運命にあった。無数の人々が行き交い、悲喜交々の人生があるなかで、何か大きなものの意思によって人間は動かされているのかもしれない。そんな歴史の因果を感じさせる小説だった。
この小説ではフィクションとして経巻が保存された経緯がドラマチックに描かれているが、これが真実でないとしても、千年以上の昔に保存しようとした人がいたことは間違いないわけで、それだけでも尊い行為だ。何とか自分たちの時代の知識を次の世代へ繋ぎたい、存在していたという証を残したいという人間 -
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唐招提寺に行く予定があるので、予習。
昔の歴史小説は硬派ですね。
ドラマチックな場面も淡々と、言い方を変えれば無駄なあおりもなく語られていきます。
今の作家ならもっとエンタメに寄せるんじゃないかなと思います。そうなると、文庫本3-4冊分くらいはいくんじゃないでしょうか。そんな内容がおよそ200ページに収まっています。エンタメ部分は自分の脳内で膨らませながら読みました。また、中国の人物や地理を調べながらの読書になりました。
そういうことで、短い小説ですが、結構読むのに時間がかかりました。
これで唐招提寺参拝を、小説聖地巡礼として行くことができます。 -
Posted by ブクログ
井上靖の作品は、少ししか読んでこなかった。
「しろばんば」が一番最初かな。
歴史ものでは「額田王」と「孔子」。
「孔子」は自分の孔子のイメージの大方を作っている。
それ以来だから、20年近くご無沙汰状態だった。
まず一番印象に残っているのは簡潔な文体。
今の歴史小説を書く作家さんとはどこか違う。
今の作家さんなら、万葉集などの古典籍を引用するにしても、必ず訳を添えたり、人物や語り手に言い換えさせたりと読者に配慮するだろう。
あるいはそもそもそういうものを引用しないとか。
そういう配慮がまるでないというか、読者もある程度そうしたものを読みこなすだろうという期待があるのか。
すがすがしいまでの簡