井上靖のレビュー一覧
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これは作家井上靖氏の昭和30年代中心の短篇小説集です。標題に代表されるように西域に主題をとった作品群が多く、この地域に関心の深い私には前から読みたかった作品です。小説というよりは史書のような趣きで、どこまでが創作でどこからが史実かとかわからなくなりそうなくらい、引き込まれます。日本の説話にまつわる作品も集録されており、磐梯山の爆発の事件に主題をとった小磐梯という作品も味わい深いです。ま、核となる作品は間違いなく楼蘭です。実際にあった楼蘭という小国の過酷な運命が描かれており、それと興味尽きない謎の湖、ロプノールの変遷も興味津々です。読後、シンセサイザー奏者の喜多郎の作品を聞きながら床に入ると一層
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終わった〜!10代で挑戦し挫折した井上靖の自伝的三部作を読破。この下巻でも会話がイキイキしてて、特に洪作が宇田に台湾行きに関して一札とられる場面は面白すぎてニヤけてしまった。全作通し、なんて靖氏は昔をよく覚えておられるのだろう!と感嘆しながら読み終えたら、本作の解説を読んで、ガ〜ン・・・「『坊ちゃん』を漱石の自伝小説と思うのは、よほど単純な人間観と文学感を持った読者だろうが、井上氏の三部作、ことに『北の海』を作者の自伝と思い込むのも同様のことである。」(by山本健吉氏)
言い訳をすると、洪作が実在したことを願いたくなるような思いが「井上氏=洪作」という錯覚を起こしたのでしょう・・・素直にモノを -
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最後まで健全で長寿を全うした曽祖母とボケて亡くなった祖母を思い出して、本当にそうだなぁと共感しながら読んだ。
愛想笑いを口辺に漂わせたがすぐ視線をあらぬ方に持って行った。どこかに鬱々としてまないところがあった。
いつからか知らないけれど、娘だとは思われなくなってしまっているわ。年とった召使ぐらいに思っているらしいの。
「人間は誰でも年をとれば、持っている荷物を一つずつおろしていく。母もおろしているのだ」
若いうちはたくさんの記憶や人間関係という「荷物」を抱えて生きていますが、あの世へ旅立つ準備として、母はただ荷物を軽くしているだけなのだという、温かくも切ない諦念が込められている -
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第8回芸術選奨文部科学大臣賞
鑑真は、6度目の渡航でようやく来日して仏教の発展に貢献した唐の僧、という知識しかなかった。
鑑真が日本へ渡ることは唐王朝から許可されておらず役人の目を忍んでの出航だったことや、普照をはじめたくさんの留学僧が関わっていることを知らなかったのでとても興味深く読むことができた。
日本へ仏教を伝えるために何年もかけて写経をしたり、渡航が命懸けだったり、当時だからこその苦労がもどかしく胸が痛んだ。
漢字や古い表現が多いので細かく意味をつかもうとすると難しいけど、ざっくり理解しながらなら読みやすく、薄いので数時間で読めた。 -
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「あすは檜になろう、あすは檜になろうと一生懸命考えている木よ。でも、永久に檜にはなれないんだって!それであすなろうと言うのよ」
『あすなろ物語』の中に出てくるセリフだ。
あすなろは漢字で『翌檜』と書く。
檜と似ているけれど、檜ほど大きくならないため「明日は檜のように大きくなろう」という意味が込められているらしい。
著者はこのあすなろの説話の持つ哀しみや美しさを表現したかったということだ。
物語はひとりの人間の少年期から壮年期までが描かれている。
淡々と描かれている人生譚だが、その中に多くの哀しみや憤り、葛藤、そしてそんな中にもかすかな希望を感じられるような物語だった。
井上靖作品をもっと読んで -
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著者の幼少期の体験に基づいたと思われる回想記的小説。昭和以前と思われる時代の片田舎で育った少年。ひょんなことから曽祖父の愛妾(今はすっかりお婆さん)に預けられ、本宅の隣地の土蔵で育てられる。古き時代の価値観や振る舞いが随所に描かれていて、田舎育ちの身としても体験したわけではないが十分に想像でき感情移入できる。悪く言えば下品で粗野で乱暴でモラルも常識もない。平気で近所の家に上がり飯を食い風呂を覗き女子を揶揄い時には手を出す。良く言えば情が厚く助け合い精神に溢れ信心深く平和なコミュニティ。主人公は、お婆さんとの二人の世界から、本宅の家族、近所の悪ガキや友人、学校の先生、都会で暮らす親戚などの交流を
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奈良飛鳥〜平安時代に興味があるのと、井上靖って読んだことないなというチョイスで以前からリストに入れていた本作を読んだ。
鑑真和上が日本に渡来した出来事を、唐への日本留学僧の視点から描いている。
主人公の普照は秀才と呼ばれる僧だが、自分ではそう呼ばれるのを嫌い、そう評されるのはただ自分がほぼ机から離れないだけだからだ、と弁えている。そんな彼が留学僧に選ばれ、それなりに不安を覚えながら唐に渡る。
そこで唐に留学に来て幾ら勉強しても自分は大したことはなかった、ならば経典をひたすら写し日本に持ち帰ることをおのれの使命とするという日本人僧の業行に出会ったり、一緒に留学に来たものの唐で還俗してしまっ