井上靖のレビュー一覧

  • おろしや国酔夢譚
    いや何とも面白くそして悲しい史実に基づいた物語だった。江戸時代に、商船が難破してロシアに流れ着いた船員たちが一人欠け、二人欠けしながら10年近くかけてようやく光太夫と磯吉の二人だけが日本に帰り着いたという話。
    ところが話はそこでは終わらない。ようやく帰り着いた日本で、二人は故郷の伊勢に戻ることが許さ...続きを読む
  • 蒼き狼
    #875「蒼き狼」
     横山光輝の漫画を先に読んでしまつたが、アレはやはり漫画だけあつて成吉思汗をヒーロー的に描いてゐました。内容は同じながら、井上靖の筆致はもつとハードボイルドで突き放した感じがしました。

     著者は元元蒙古民族の興隆を書くつもりだつたのが、成吉思汗といふ一個人にスポットを当てたのは...続きを読む
  • おろしや国酔夢譚
    実際にあった出来事の、ロシア革命より更に前の18世紀。
    江戸時代の伊勢から漂流した船に乗った人々が
    ロシアという異国で10年どう生きたかどう感じたかをまとめた歴史小説。
    極寒の異国地に漂流し、そこから更に色んな箇所へ移動され
    亡くなる人やロシアに帰依する人や、それでも日本に戻る為に最善を尽くす人がい...続きを読む
  • 敦煌
    とっても好きな本。
    主人公が好き勝手世界史を放浪する。妻子を持たずにいることが推しポイント。
    夢に向かってひたすら突き進むことができて楽しそう。
    所属や見た目にどうしても囚われてしまう女にとって、こういう自由な生き方に憧れるし羨ましく思う。
  • 天平の甍
    高僧を日本に連れてくる使命を受け、遣唐船に乗って普照ら若い僧4人は荒れる海を渡り、唐に留学した。無事に帰国できるか、何者かになれるかもわからない。4人僧の、そして写経に没頭する貧相な中年の日本人僧の運命は…

    史実の詳細が物語のスケールの大きさを感じさせてくれます。仏教の用語や唐の時代の中国の地名が...続きを読む
  • しろばんば
    日常がたんたんと綴られている

    洪作とおぬい婆のやりとりが、昔の日本の日常 という感じで心地よい
    強気な婆さんも、亡くなる数年前には人格が丸くなっていく
    人間とは という感じで読んでいて凄く心地が良かった

    昔から長く愛され続ける本って、言葉が分かりやすくて変なトリックがなくて人間味が溢れている
    ...続きを読む
  • 晩夏 少年短篇集
    作中には、伊豆の景色や子どもたちの遊びなど、共通点のある光景が多く登場する。
    小学生時代を伊豆で過ごしていた作者の記憶が、元になっているのだろうなと思った。
    どの作品も視線が優しく、懐かしい感じがした。
    田舎に住む少年の感情の動きが瑞々しく、私にとっては眩しさのようなものも感じた。

    好きな作品ばか...続きを読む
  • 晩夏 少年短篇集
    自身が経験した夏ではないのに懐かしいと感じるのはなぜだろう。少年時代の感覚が鮮やかに蘇る。ノスタルジア溢れる名作。
  • 敦煌
    壮大なスケール。この作品の主役は悠久なる時間と歴史、季節のように移り変わる民族の栄枯盛衰。
    素晴らしいの一言。
  • あすなろ物語
    鮎太が出会う人々みんなが鮎太という人をつくっていく。一人一人の存在が愛しく感じました。
    あすは檜になろうと願うがなれない…。何がとは上手く言えないけどこの大きなテーマがやっぱり節々に見えて、切なく、優しい気持ちになりました。

    この物語の登場人物たちはみんな何者かになろうとしていますが、鮎太が所々で...続きを読む
  • しろばんば
    教科書で読んだ名作。

    文豪の時点的作品。幼少時代、軍医の父の赴任先でなく一人父の故郷、伊豆は下田街道沿いの湯ヶ島で曽祖父の妾のおぬい婆さんと土蔵で暮らす。

    題名のしろばんばという白い虫を追いかける風景を始め、筆者の原風景と少年の成長が伊豆の景色景色と合わせて描かれる。

    おぬい婆さんの死、少年は...続きを読む
  • しろばんば
    井上さんの幼少期を描いたとして非常に有名な作品です。

    大正時代の日常生活の様子が非常によくわかり、人と人との付き合い方が、主人公の洪作の目線、感情を通して描かれている部分が非常に興味深かったです。日常の一コマ一コマが描かれているのですが、洪作とおぬい婆さんの生活、やり取りが読み手を大正時代に引き込...続きを読む
  • 氷壁
    63年も前の本。イギリスのボーイソプラノ合唱団Liberaが歌う「彼方の光」という美しい曲を今度演奏することになり、2006年のNHKドラマ「氷壁」の主題歌として作られた曲ということで、ドラマは観たことが無かったのでその原作はどんなだろうと興味を持って読んでみた。

    山を愛する魚津と小坂という2人の...続きを読む
  • 天平の甍
    それぞれの信じた道を進んだ結果が人生だが、その結果は自然や時の流れといった抗いようのないことに大きく影響される。はるか昔に起こった出来事だが、海を隔てて命がけで行き来した遣唐使という特殊な環境だからこそ浮かび上がる人生の真相がある。鑑真という人物に興味をもちながら今まで手にしてこなかった天平の甍であ...続きを読む
  • 蒼き狼
    自分がテムジンになったような感覚で惹きつけられながら入り込んで読めた。いつかチンギスが馬で走り回った草原の風を感じたいと思いました。
  • わが母の記
     米子市の「アジア博物館・井上靖記念館」を訪れた折、購入した本の内の一冊が「わが母の記」だった。「母」という存在は年齢を重ねれば重ねるほど大きく、そして、感謝の度合いも深まってくるものだ。その恩の最たる存在である「母」を井上靖はどんなふうに書き記しているのだろう、という思いから読み始めた。最初の方に...続きを読む
  • 天平の甍
    鑑真来日に尽力した留学僧や同時に唐へやって来た僧侶たちの小説
    漢字だらけな割に読みやすい
    人生色々、皆違って皆いいと感じました
  • 蒼き狼
    どれほど大きな戦果を挙げていようと、
    どれだけ数多の財宝・女・家畜を得てようとも、
    それにキリはなく。
    その果てしない行為の代償によって、
    死ぬ間際には、
    最愛の人全てが故人となっていた。

    死ぬ時まで戦のことを考え、
    死んでいく。
    事切れる瞬間まで。

    幸せな人生とは何なのだろうか。


    最期まで...続きを読む
  • 風林火山

    そうだったのか

    大河ドラマでは山本勘助が武田信玄に仕えるまで長々とエピソードがあったけどドラマオリジナルだったというのが分かりました。
  • 猟銃・闘牛
    井上靖は本当に凄い。短編の鋭い切れ味に、恐れ入るしかない。
    日本語の美しさ、その文字から伝わる日本の美しさ、そこに映し出されるあの時代の日本人の男女の孤独感。今も変わらぬ各人の自己中心的な悲哀が、井上靖によって際立つ。