井上靖のレビュー一覧
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本作は発表当時も、またその後の読者にとっても、極めて読み辛く、評価が困難な作品であったと思われる。
文学賞こそ受賞しているが、同時代の評価としては ぐらいである。
理由としては簡単で小説の結構をとっていない。漢文の書き下し文が現代語訳なしで、そのまま挿入される。200箇所弱に及ぶ編注がつくほど、説明なしに当時のモンゴル語、高麗語の言葉が使用される。これはいったいどういうことか?
元寇に至るまでを高麗の立場で描く。朝鮮半島の人々に課せられた元による様々な苛斂誅求を辛くもくぐり抜けるが、言うまでもなく2回に及ぶ日本征討は失敗に帰し、高麗の全土は荒野と成り果てる。ここには何も希望も幸 -
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「自伝三部作」の第一弾。著者をモデルとした伊上洪作の小学校時代をえがいた作品です。
洪作は、両親のもとを離れて、曽祖父の妾だったおぬい婆さんのもとに預けられています。おぬい婆さんは、洪作の母である七重や、彼女の実家の「上の家」の人々に疎んじられており、彼女の愛情は洪作ひとりに注がれます。そのおぬい婆さんも、洪作が六年生のときにこの世を去ります。洪作は中学校への進学を間近にひかえており、彼の少年時代の終わりが訪れるところまでの成長が、洪作自身の視点からたどられています。
叔母のさき子の結婚と病死、親戚の「かみき」のわがままいっぱいにそだった姉妹に出会ったときの驚き、一つ年上の御料局のあき子と -
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飛鳥時代の万葉歌人、2人の天皇から愛された上になんか挑戦的な歌を詠んだすごい美人、というイメージの額田王。でもこの小説では、それだけではない額田王の姿を描いている。
2人の男性に翻弄されたり、翻弄したりする恋多き女というイメージ、あるいは、高貴な人に求められたら拒むことのできない身分制度の中の女性の悲哀、というのでもない。もちろん、拒むことができず、奪われ、譲られ、扱われ方に自己を通すことができない悲しみはあるけれど、巫女として絶対に譲れないところを通し続ける凛とした強さが美しかった。
王朝ロマン文学らしく美しい文体でするする読ませてとても楽しかった。