井上靖のレビュー一覧
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ネタバレ楼蘭の1つの国の趨勢、異域の人の班超の生涯、宦者中行説の匈奴で得た夢、何れも真に迫っていて、そこに西域や匈奴の風土を感じるかの様でした。班超が歿する前、故国に西域との繋がりを見、彼が「胡人」と呼ばれた描写には、彼の一生の軌跡が表れている様に思います。
狼へと変わった陸沈康とカレ族の女が出る狼災記、羅刹の棲む島を書いた羅刹女国では、言い伝えや伝承を基にした不可思議な出来事が現実味を帯びて書かれていて惹かれました。狼災記で狼となった2人が、獣の掟に従い獣として生きる様が、人の姿を喪い人で無くなった彼等が、既に人としての生き方が出来ないのだと訴えかけて来ている様に思われました。 -
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武田信玄の天才軍師、山本勘助が主人公
勘助が信玄に仕える場面〜川中島の合戦の途中(途中な理由は読めばわかります)までの歴史物語
勘助の成りは異形が理由で今川義元に召し抱えようとされなかったほど…
色黒で背が低く眼はすがめでちんば、指も1本ない
知恵だけが彼の人生を支えた
永く浪人だったがその知恵を活かし、武田晴信(信玄)の仕官となる
晴信はそんな異形の勘助を気に入る
常に孤独で人から疎まれてきた勘助
勘助自身も人を人とも思わない非人情な男だった
しかし自分を召し抱えてくれた晴信だけはこの世で唯一好感を持った
いつしか晴信のためなれ命も惜しくないと思うように…
晴信もまた、勘助に信頼を寄せ、周 -
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井上靖初読、映画は過去、樹木希林氏ご逝去の直後に観ていた。
著者の母が老い、主に認知症を進行させていく様を長男の立場でありながら極めて客観的に描く。
耄碌していく母は少女性を復活させ、我儘な振舞いを見せる。
人は歳を取る毎、ある一定の年齢を経ると子供へ還っていくと言うが、彼女の場合は無垢と狡猾がせめぎ合っている様だった。
淡々とした文章は、殆ど悲哀を介在させぬ。
靖自身はあくまで物書きとして実母を観察・取材していたのだ、と思う。
「全身小説家」と自称した井上光晴のみならず、近代の作家にはこう言ったタイプが多く見られる。
樹木氏は映画の見所を訊かれる事に辟易としていたが(没後展覧会の映像より -
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733年(天平5年)聖武天皇の時代
第九次遣唐使のお話
船に関連する人材は元より、訳語者、医師、画師、僧侶ら総勢580名くらいが船四艘で出航する
当時の目的として、宗教的、文化的なものであり、政治的意図は少なかったよう
というのもこの時期の日本の大きな目標は、近代国家成立である
外枠だけができて、中身は混沌としていたため、先進国唐から吸収しなければならないものが多くあった
また、課役を免れるために百姓は争って出家、かつ僧尼の行儀も堕落(乱れているなぁ…)
仏教に帰入した者の守るべき師範は定まっていなかった
そのため唐よりすぐれた戒師を迎えて、正式な授戒制度を布きたい
伝戒の師を請して日本は戒 -
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ネタバレ架山のエベレスト観月旅行から始まる。いつかテレビで紹介していた「エベレスト街道の旅」を思い出しながら、エベレストの勇姿を描く。2020年以降、海外旅行が思い通りにならない現在であるが、いつかは登山をと考えていたが、数十年前に実現されていたことに感銘を受けてしまった。現在と比べて、どれほど、大変な旅行だったのだろうか。それゆえ、どれほどの「永劫」とか「宿命」といったものを感じることができたのでしょうか?東北の海に、夜空に私たちが感じる「永劫」とか「宿命」といったものと比べて。
そして、春の満月の下、琵琶湖に船を浮かべて二人の供養をする架山は、『殯』を終わらせてお墓にまつる。十一面観音と月と湖に、 -
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ネタバレ山本勘助の物語。
300ページほどの本だったので数日で読めました。
本書では軍師として描かれています。
間者より軍師の方がピタッときますね。
今川家で士官が叶わないところから、武田家で召し抱えられ、軍師となり川中島の戦いで死去するところまでが描かれています。
物語の導入が上手かったです。
青木大膳という浪人者を最初描いておいて、少ししてから勘助を登場させるところが上手く話に引き込まれました。
信玄との関係性の他に由布姫(諏訪御料人)と勝頼に忠誠を誓うところも話の柱となっていますね。
信玄は於琴姫も妾としたので、勘助は一度於琴姫の命を奪おうとしたりもします。
軍師としての活躍も十分描か