井上靖のレビュー一覧

  • 風林火山(新潮文庫)
    武田信玄の軍師だったと言われる山本勘助が、武田家に仕えて川中島の合戦において討死するまでがまとめられた作品です。
    信玄、諏訪の姫、勝頼にほとんど恋をして、彼らのために生き続けた勘助。老人ながら奮闘したのに、上杉謙信を倒すまで生きてられなかったのが悔やまれますね。
    最期を悟った勘助が上杉勢との戦いに臨...続きを読む
  • 天平の甍
    留学僧普照が栄叡らと協力して鑒真招聘に奔走する話。鑒真は無事渡航できたが、一番熱意を持っていた栄叡は先に病死し、業行が一生かけて書き写した経典は海に沈み、そういう文字通り一生懸命なのに報われなかった人もいる、っていうことも描かれている。というより、阿倍仲麻呂や玄朗や、思い通りにいかなかった人の方が多...続きを読む
  • 天平の甍

    733年(天平5年)聖武天皇の時代
    第九次遣唐使のお話
    船に関連する人材は元より、訳語者、医師、画師、僧侶ら総勢580名くらいが船四艘で出航する
    当時の目的として、宗教的、文化的なものであり、政治的意図は少なかったよう
    というのもこの時期の日本の大きな目標は、近代国家成立である
    外枠だけができて、...続きを読む
  • 利休の死 戦国時代小説集
    井上靖と言えば敦煌や楼蘭などの砂漠の国の歴史小説かと思いきや『日本のガチガチの歴史小説も書くんだ』と自分の不勉強さが恥ずかしくなりました。

    さて本書は信長を主人公とする桶狭間から始まり,切腹を命じられる利休までが其々短編で描かれている。

    武田勝頼や徳川家康の正妻と長男、浅井長政の三女など意外とと...続きを読む
  • あすなろ物語
    あすは檜になれるだろうか…なりたい?なれる?なれない?近づいたかな?あの人はどうだろう?そんな揺れ動く感情が根底にある中での日々の生活、恋心。幼少期は特殊だが、一般人はまあこんな感じか。
    読んでいると素直な気持ちが持てる。教科書では知る事のできない戦後の生活も興味深い。面白かった。
  • 敦煌
    おもしろかった

    とくに後半に進むにつれてその内容に惹きつけられた

    語学学習が趣味の私ですが、西夏文字に魅了されて故郷を離れ自分の人生を全うした行徳、素敵だなと思うと同時に、言語を身につけることで、普通に生きてるだけは出会えない人々や価値観に出会えるのは、今も昔も変わらないことだと感じた。

    敦煌...続きを読む
  • 天平の甍
    歴史の一部として知る遣唐使
    若い僧達がそれぞれの思いを持って、唐に渡る。
    死と隣り合わせ、命懸けの事業
    遣唐使という三文字が、教科書で習った意味と違って感じられるようになった。
  • しろばんば
    なんかしろばんばって、髪の毛真っ白なお婆ちゃんが出てくる童謡的なイメージだったけど、実は虫だった!
    というのが冒頭でいきなりネタばらしされてて、もうビックリですよ。
    まぁそれなりにお婆ちゃんが活躍するんだけどね。
    そんなこんなで、自分の家の子どもにひたすら甘いお婆ちゃんと子どもの話、ていやあそれだけ...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    何となく手に取り再読。
    説明しずらいんですが、歴史娯楽小説の王道があるなら多分本作はそこのど真ん中にいると言えるかと。当方、井上靖好きということもあるので割引が必要ですが、大きな波の中でゆったりと読書に浸れること保証します。
    唐突に勘助が現れ、ひたすら勘助の心だけを描きつつ、ちょいちょい戦国心もくす...続きを読む
  • 星と祭 下
    架山のエベレスト観月旅行から始まる。いつかテレビで紹介していた「エベレスト街道の旅」を思い出しながら、エベレストの勇姿を描く。2020年以降、海外旅行が思い通りにならない現在であるが、いつかは登山をと考えていたが、数十年前に実現されていたことに感銘を受けてしまった。現在と比べて、どれほど、大変な旅行...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    山本勘助の物語。
    300ページほどの本だったので数日で読めました。

    本書では軍師として描かれています。
    間者より軍師の方がピタッときますね。

    今川家で士官が叶わないところから、武田家で召し抱えられ、軍師となり川中島の戦いで死去するところまでが描かれています。

    物語の導入が上手かったです。
    青木...続きを読む
  • 楼蘭
    12の短編集。多くが古代中国の歴史物語。著者の作品はジャンル幅広く、文章もしっかりして、読んでる最中でもじっくり熟読したくなる、本棚にずっと取っておきたくなる。「浪災記」、「山月記」に似ている。2021.1.22
  • 蒼き狼
    民族に属するという思いは、奥深い。
    日本人である私が、このような思いを抱くことはないので、蒼き狼の血を誇りとするテムジンの思いは非常に興味深かった。

    13世紀のモンゴルの血生臭い戦いの様子をイメージしつつ、学生時代に覚えた知識を思い出しつつ…
    とても面白かった。

    本全体を通して、すらすら文章が入...続きを読む
  • しろばんば
    帰国後隔離期間中の2冊目。
    私も一時期祖母と2人で1年間ほど暮らしたことがあり、その間両親と兄弟とは別々だった。
    大人同士の会話は、当の大人と子どもとではその捉え方が違い、子どもの年齢に応じても違うのだろう。そこは子どもワールドで、大人には想像も及ばない。感受性、人生経験、距離感など色々影響される。...続きを読む
  • 天平の甍
    遣唐使の話。
    登場人物それぞれにドラマがあってページ数は少ないけど読みごたえあった。
    読んで良かった。
  • 天平の甍
    少ない史書の情報から豊かな想像力を駆使して物語が作られていることに感心する。主要登場人物の留学僧はどの人物も実際の近隣にいそうな人間の姿を描写しているが、鬱屈なタイプが多いため話が頁をめくる手が重くなるところを鑑真上人の漢気あるキャラクター造形により緩和されていると思う。 
    歴史が好きな人にはともす...続きを読む
  • しろばんば
    おそらく中学生の時に教科書か何かに一部載っていて、それが面白く購入して読んだのだと思う。

    その時は三部作すべてを読んだ記憶があるが、やはりこの「しろばんば」が1番面白かった。

    そこから30年以上経って久しぶりに読んでみた。

    時代背景が当時感じたよりもより古くなっているのは当たり前であるが、それ...続きを読む
  • 額田女王
    久しぶりに噛み応えのある小説を読んだ感じがする。

    どちらかというと歴史とか、いわゆる社会科の内容は得意ではない。大化の改新も壬申の乱も、ギリギリ試験のための勉強をしたくらいで、とうの昔に大概のことは忘れてしまってる。井上靖さんの作品も『しろばんば』辺りは読んだけど、この作品や『天平の甍』や『敦煌』...続きを読む
  • 額田女王
    巫女として神の声を聞き、神の心を歌う額田女王。大海人皇子との間に十市皇女をもうけてからも、神の声を聞くためにその心は誰にも渡すまいと誓っているが、有間皇子や中大兄皇子への想いは結構人間的だと思う。神の心を歌うとしながら、いつしか中大兄皇子の心を歌うことに喜びを見出していくあたりも、「あなたの心は私だ...続きを読む
  • 天平の甍
    この辺りの時代はあまり読んだことが無かったのだが、この時代に生きた人達も危険に立ち向かい、死の可能性を乗り越えてでも為すべき使命のために行動する人がいる事を知った。