言わずと知れた井上靖の代表作。
唐招提寺のお土産屋にも置いてありましたf^_^;(さすが)
そんなわけで
この寺に纏わる小説だってことだけは知っていたのですが
イコール、もっと鑑真和上寄りの話だとばかり思ってました。
主人公は「普照(ふしょう)」と「栄叡(ようえい)」という日本人留学僧2人です。
名
...続きを読む前だけは、唐招提寺HPの「唐招提寺とは」から「鑑真大和上」を辿って鑑真和上の紹介文の中にチラッと出ています。
結局この本を一言だけで表せ、というなら、
この2人の冒険物語と言い切ってもいい。
と言っても、2人を前面に押し出したワケでもなく
視点は常に曠然たる中国の大地。そこに聳える大伽藍。
留学僧たちの…というより、人間たちの、なんと小さい…
しかしその一滴から始まる歴史の波があっちへこっちへぶつかって
ついに2つの国の歴史を揺さぶっていく様は
わずか200ページの小説でありながら、まさに「大河」と呼ぶに値します。
表紙を開けると
この小説に関わる地図が折り込まれています。
現代の感覚では何のことはない、飛行機で数時間程度の距離ですが
1250年前では
数日、数週間、数ヶ月…場合によっては、死に至る距離だったワケです。
「冒険ロマン」と呼ぶにはあまりに重く、過酷を極めた距離を
よくぞ渡ってくれたと思います。
静かな口調の奥底に、深い情熱を感じる1冊。