井上靖のレビュー一覧

  • しろばんば
    伊豆湯ヶ島の豊かな自然の中で暮らす少年が、人との出会いや別れを通して成長していく物語。
    淡々とした文章で当時の田舎の日常が綴られていて、派手さはないけれど、じんわりとあたたかな気持ちになれる。
    子どもから大人へと成長していく過程で洪作が感じる様々な思いは、時代は違っても多くの人が共感できるのではない...続きを読む
  • しろばんば
    好きな本として挙げる人が多いので、手に取ってみた。あらすじによると、ひと昔前の地味目なお話のようで、どうして人気があるのか不思議だったけれど、読み終えてみると、やっぱり良かった。包容力のある時代とそこに生きる人々へのノスタルジーだろうか… 色々なハプニングはあるが、全体に静かな語り口で、読みながら、...続きを読む
  • しろばんば
    少年時代の自伝的小説。小学生の少年洪作が曽祖父の妾であったおぬい婆さんと共に過ごす中で様々な出来事を経験して成長していく過程を描いている。

    多感な少年期の感じ方を本当に上手に表現しており、読んでいてこんな気持ちだったな、という箇所が多数あった。また、変に感動させるという意図も感じさせないところもま...続きを読む
  • しろばんば
    好きな本を聞かれたら答える作品です。
    この本を少しずつ読むと、その間は心の半分が伊豆湯ヶ島の風景の中ににいます。
  • しろばんば
    クレマチスの丘にある井上靖文学館で観た10分ほどの映画がしろばんばと井上靖との出会いであった。600ページ弱の長編だがあっという間に読み終えた。作家の少年時代を読みやすく描いている。曾祖父の妾であるおぬい婆さんとの生活、村の子供達との触れ合い、両親や親せきの人達との関わりを通して洪作の成長していく姿...続きを読む
  • しろばんば
    再読
    『伊豆の踊子』と同じころの天城での少年時代における自身の情感を
    大人の言葉で巧みに描いた傑作
    場面選びも抑制の利いた文章も素晴らしいが
    いつの時代の誰もが共感できる小学生からみた世界の広がりの表現が秀逸
    何度でも読み返したい名作
    内容には関係ないが
    馬車で湯ヶ島から大仁まで4時間(前編三章)な...続きを読む
  • 幼き日のこと・青春放浪
    随筆調の自伝
    まったくの私的な見解だが
    伊豆地方民は地元愛がすこぶるうすい気がする
    井上靖ほどの作家はもちろん
    修善寺も韮山も先も後も北条氏に対するおらが感がまったくない
    といって江川家をみるに江戸時代の人心統治が優れていたとも思えない
    というふうに風土をこじつけるような話が随所にみられるが
    昭和も...続きを読む
  • 後白河院
    平安末期から鎌倉初期、つまり院政期から武士の台頭、保元・平治の乱、平家全盛と没落から鎌倉幕府の時代、年代で言えば12世紀の日本の中央権力の有様を復習できる、またある程度わかっていないと読んでもなんのことかわからない。
    院政の始まりの部分はいまいちわからない―中公文庫の「日本の歴史 6:武士の誕生」で...続きを読む
  • 天平の甍
    言わずと知れた井上靖の代表作。
    唐招提寺のお土産屋にも置いてありましたf^_^;(さすが)
    そんなわけで
    この寺に纏わる小説だってことだけは知っていたのですが
    イコール、もっと鑑真和上寄りの話だとばかり思ってました。
    主人公は「普照(ふしょう)」と「栄叡(ようえい)」という日本人留学僧2人です。
    ...続きを読む
  • 額田女王
    井上靖さん作品初読
    中大兄皇子、大海人皇子ふたりの兄弟天皇に愛された万葉随一の才媛、美しき歌人である額田女王
    三人を中心に、古代国家形成の動乱の世を描いた歴史小説


    好きな者と一緒になることができなくても、皇子に愛せられること、皇子の妃になることで
    皇子の愛人として、妃として生きていく覚悟をきめ、...続きを読む
  • 孔子
     井上靖の最晩年の長編小説である。この名作には既に多くの評価がなされているから私の愚考を重ねても無意味である。
     架空の孔子の弟子の語りが中心となるこの作品は紛れもなく作者自身の孔子に対する思いを述べたものである。孔子という人物の事績が弟子の記録によって言語化されていることを考えるならば、この作品は...続きを読む
  • 敦煌
    敦煌に行くということで読む。
    宋の時代の西夏の話。そこから敦煌につながっていく展開がとてもすばらしい。
  • 額田女王
    江戸時代や戦国時代を舞台とした時代ものを読むと、現代の日本と 陸続きだなぁと感じる部分もあるが、この小説の舞台になっている600年代とかになると、 全くどのような生活をしていたのか想像もできない。

    でも作者の井上靖は素晴らしい。あたかもこの時代を生きてきたかのように書いている。素晴らしい作品です。
  • あすなろ物語
    井上靖の本は学生時代によく読んだけど久しぶりに、未読のこの本を読んでみた。手持ちの本が掃けて読む本がなかったので息子の本棚にあったこれを手にした。

    もっと子供っぽい内容かと思ったけど、全然そんな本ではなかった。あすなろ、がそういう意味とも知らなかった。

    この時代を生きた男の幼少期から壮年期までを...続きを読む
  • しろばんば
    主人公洪作とおぬい婆さんとの生活を描いた作品。大正時代。伊豆の田舎で日々起こる小事件を通じ、噂が瞬時に行き渡る様や人々のつばぜり合いなどを非常にコミカルに綴っている。
    妾という立場で親族の中で懸命に生き抜くおぬい婆さん、時代の発展やそれに取り残される人々、大切な人たちとの別れなどの色々な出来事が、多...続きを読む
  • あすなろ物語
    明日は檜になろうとする意志の象徴「あすなろ」
    秀才肌の少年は、高校でやや落ちこぼれ、長じては平凡な新聞記者に。といっても、放蕩息子にはならない。
    彼を取り巻く男女の「あすなろ」たちとの交流。未亡人にときめき、大胆な女たちに翻弄されそうにもなるが、決して危うい愛は渡らず、妻帯し、戦地も生き抜く。
    面白...続きを読む
  • 敦煌
    世界史を勉強していた時にたまたま読んだ本。薄い本だがストーリーは重厚で歴史ロマンを感じられる。男の生き様としても何かしら憧れる所もある。いつか行ってみたい敦煌
  • しろばんば
    2017.05 イタリア旅行(ジェノバとチンクエテッレ)に持参し、9年ぶり再読。

    長編の名作、前半と後半の流れも主人公の成長がエピソードを通してとてもうまく表現されている。こどもに読ませたい一冊。
  • あすなろ物語
    様々な生き方をしていく友人、女性に触れながら青年へ成長していく著者の自伝的小説。人々と接する主人公の心の機微が表現されており、自分の感情に強い印象を与えた。
  • 猟銃・闘牛
    《猟銃》
    妻・愛人・愛人の娘、その三通からの手紙から
    浮き彫りにされる、恋愛をとりまく
    さまざまな心もよう。

    一つの事実に対して、その人の感情により、
    立場により、こんなにも想いが
    異なるという事実。
    愛すること、愛されることの意味、
    そして、そのことによって変わる人生の重み。

    短編ではありなが...続きを読む