井上靖のレビュー一覧

  • 楼蘭

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    匈奴などの西狄の話は歴史でもなかなか出てこないので面白かったが、後半の日本の話はいらなかったな…。もっと騎馬民族や砂漠の民の歴史が読みたいなぁ。

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    2022年12月01日
  • 天平の甍

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    業行が印象的だった。怖いほどの執念が年々滲み出て、でも結局彼の意志が成し遂げられなかったのが、足元が崩れていくようで怖かった。
    普照は渡唐に際して確固たる目的がないように見えたけど、その時その時にとるべき最善を尽くして、結局最後は運も味方して元々の任務だった戒律師を日本に連れ帰ることを果たしたし、日本に帰ってからのモノの感じ方考え方がいいなと思った

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    2022年11月23日
  • 夏草冬濤(下)

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    ★3.5かな、でもおまけなし。あまりに半端な感じで終わってしまってるからなぁ。続きはあるんかな?
    それはともかく要するに育ちが良いんでしょうな、洪作は(つまりは井上靖が、ということになるのかもしれませんけれども)。例えばフランス料理と寿司のくだりとか、こちらがイライラするくらいの天然ぶり。これくらい伸び伸びとしている方が良いんでしょうが、最早絶滅危惧種的な育てられ方なのかも知れず。

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    2022年09月28日
  • 風と雲と砦

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    武田家の滅亡の話がこの作家には余程響くものあったんでしょうな。登場キャラ全部が消滅していくんだろうなと何となく思いながら読みました。
    まぁ時代を感じなくはない、現在の作家のテーストでは明らかにない。この感覚を良しとするかは微妙なところ、つまりそれほどこの作品が成功しているようにはちょっと思えなかったかな。まぁ普通でした、って大変偉そうではございますが。

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    2022年09月18日
  • 敦煌

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    中国西域でのちょうど1000年前の空想物語。都から遠くかつ広いゆえに宋時代の中国が統治しきれない西域、群小民族の覇権争い。現代のウイグル自治区の様相を思い浮かべてしまう、のと同時に、映画やTVシルクロードドキュメンタリーの映像記憶があるから、やすやすと思い浮かべるイメージが、なお空想を馳せさせて面白く且つ意義深く読んだ。

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    2022年09月07日
  • 後白河院

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    いつかの大河ドラマの清盛と、今やってる鎌倉殿の13人を必死で思い出しながら読んでる。難しい、観ててよかった。
    権威権力は持っているけれど実力(軍事力)を持たない朝廷=後白河法皇が、
    軍事力を持つ者らとどのように戦ったか。その時の大勢力に対し、対抗勢力に力をもたせ戦わせることで牽制し、戦わせてやがて滅びていくのを見ている。不気味で冷静で、軍事力はないが権威あるものの戦い方。
    後白河法皇、第一部〜第三部、言うことバラバラやん!って思ってたけど、第四部で、実は一目的は貫してるってことがわかった。

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    2022年06月16日
  • 額田女王

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    井上靖の描く額田女王は神秘的で、妖艶で、よく分かんないけどなんだか読んでてどきどきする女性だった。
    人の心を持たないようにしているから、逆に色気が出るのかな。でも、神に仕えるために天皇の死の悲しみさえも無いことにしないといけないのはすごくつらいことだよ。
    最後に「大津京に長く身につけたものを置いてきた」表現がすごく良かった。結局、額田はどっちのが幸せだったんだろう。

    歴史小説だけど、何回も同じこと繰り返し書いてくれるから分かりやすかった!靖ありがとう!

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    2022年05月23日
  • あすなろ物語

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    今年は、新潮文庫ロングセラーのTOP20作品を読破する!というのを私の中で目標にしていて、そのうちの一冊です。(あと六冊!)

    井上靖さんの「あすなろ物語」、タイトルは聞き覚えがあるけど、内容は全然知らなかった。
    血の繋がらない祖母と、土蔵で二人暮らしをしていた梶鮎太という少年が、多感な青春時代を経て新聞記者となり、終戦を迎えるまでの成長の記録が、6つの物語として描かれる。
    あすなろ(翌檜)、とは「明日は檜になろう」と願いつつ、願うだけで永遠に檜にはなれない常緑針葉樹のことなんだそう。作中で重要なキーワードとして繰り返し登場する。
    その説話の通り、鮎太自身が劣等感を抱えていたり、恋がうまくいか

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    2022年04月30日
  • わが母の記

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    耄碌していく母
    井上先生の生活が伺える本でした。
    旭川記念館へ行った記念で購入致しました。
    ご冥福をお祈りいたします。

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    2022年04月07日
  • わが母の記

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    大作家が老いとともに生きる自分の母について書いたもの。母への思いを綴るというよりは、「花の下」「月の光」「雪の面」という3編で足かけ10年を追っていく。作家ならではというべきか、明治の男らしいちいうべきか、感情はあまり出さずに、いまでいう認知症の症状がだんだんと濃くなっていく母について書いている。
    書かれているのはおそらく昭和30~40年代頃のことなんけど、周囲の人たちの認知症の人への対し方がいまとちょっと違うなと思った。いまほど研究が進んだり人々の意識のなかでも「普通のこと」「誰でもなること」というものではなかったであろう頃。それゆえの忌避感やこういう接し方しちゃダメじゃんみたいなこともある

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    2021年10月23日
  • 利休の死 戦国時代小説集

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    戦国乱世を短編で描く。
    現代の研究成果からは遅れた描写が多いが、人生の終焉を迎えようとする武将たちの滅び。

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    2021年09月28日
  • しろばんば

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    前半がほんとにほんとに退屈で、何が名作なのかぜんぜんわからなかった。
    出てくる人みんな意地悪いし、仲も悪いし、冗談も言わないし。

    でも中〜終盤、特に死にまつわる話がよかった。

    さき子姉ちゃんの面影や、狂ってしまった犬飼先生や、もうろくしていくおぬいばあさんの姿。
    体験したことのない日常が描かれていて、素朴で情感が強かった。
    映画のなかった時代の映画のように思った。
    何十年も経ってから、記憶を頼りにこれだけのことが書けたのだとしたらものすごいことだと思う。

    ただとりとめがないので、「子供に読ませる名作」としては全然魅力的に思わない。

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    2021年09月08日
  • 孔子

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    孔子の伝記ではなく、架空の人物が孔子との生活を振り返りながら、天命とか仁とかのテーマに対して考察をしていくという内容。
    私は、儒教というのは徳だとか天命だとかによって、規則なり秩序なりがガチガチに決められているような印象を持っている。しかしこの本では、天はどう決めるか分からないが自分たちは一生懸命がんばる、仁は死んでも通す信念という意味もあるが相手を思うことというのもある、など実生活のシンプルな考え方を提示していた。これは老荘にも連なるのかな。

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    2021年09月05日
  • 敦煌

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    Eテレの「深読み読書会」で話してたので、
    興味を持ち読み始めました。
    本屋さんで見かけてもお買い上げしないかもと思う難しい内容でした。

    理解できるまでには達していないですが
    中国の歴史

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    2021年08月21日
  • 敦煌

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    シルクロードの分岐点であり、重要なオアシス都市である敦煌。
    その敦煌にある莫高窟で20世紀に大量の書物が発掘され、文化人類学上の大発見になるのだが、書物がなぜ莫高窟に保存されていたかは不明。この謎を、史実と創造で描いた歴史作品が本書である。

    敦煌と莫高窟に旅行したので読書感想ではないけどメモ

    莫高窟は1000年に渡り岩をくり抜き、中に壁画や仏像を構築しているのだが、1000年という長い歳月がかかっている為、窟によって文様などの様式が異なる。政治の強さにもよりチベット式、インド式など様々変わるのだが、これを長きに渡り掘り続ける事ができる財力を持った土地が敦煌であり、シルクロードのもたらした富

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    2021年05月03日
  • 風濤

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    二度にわたる元寇を日本の目でなく途中経路にある高麗から見る。武力により属国となった高麗では王や首脳が無理難題の要求に何年も苦しみを味わう。世界史的にも島嶼の地域を無理して征服する意味は不可解だが、いわゆる中華思想のなせる技か。2021.3.24

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    2021年03月24日
  • 星と祭 上

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    ネタバレ

    本書によって、2つのことを知った。『殯』と『十一面観音』。
    『殯』。本書では、事故で亡くなった娘の死体があがらず、鬼籍に入るまでの期間を指している。あたかも、東日本震災で、死体があがらず行方不明のままになっている状態に似ているといってよいのでしょうか?死んだことを認めることができない状態でしょうか?
    事故から7年、事故現場を避け、湖を避けてきたが、琵琶湖を訪ねることとなり、湖畔の秘仏・十一面観音巡りを始めてゆく。
    渡岸寺、石道寺、福林寺、赤後寺(人間の苦しみを自分の体一つで引き受けて下さっていたので、あの仏さまはあのような姿になってしまったんだ)、盛安寺、宗正寺と。順番にWebサイトでお寺と十

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    2021年03月16日
  • 風林火山(新潮文庫)

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    武田信玄の軍師山本勘助を主人公とした歴史小説でした。井上靖さんは僕にはとても読みやすい作家で、本作も、勘助から見た武田家、特に信玄が生き生きと描かれていたように思います。司馬遼太郎とはまた違った良作でした。

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    2021年02月03日
  • 楼蘭

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    短編集。

    井上靖に対しては、同じようなテイストの小説を多産する流行作家のようなイメージを持っているが、氏の「西域もの」はその限りではない。
    明らかに他の量産作品群と「西域もの」との間には、クオリティの差が存在している。このテーマに対する著者の没入度の深さが、おそらく異なる。

    本編を離れた話だが、山本健吉が解説で次のように書いている。

    「人間の行為の意義、無意義を分つものは、人間の意志を超えている。人間の歴史は、結局人間行為の無数の捨石の上に築かれているのだから」。

    井上靖の「西域もの」の解説として、これ以上のものはないのではないかと思える。

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    2021年01月22日
  • 後白河院

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    『しろばんば』『敦煌』『額田女王』『孔子』。
    これまでに読んできた井上靖作品は、これが全て。
    後白河を取り上げたものがあったのか、と驚きもあって手にした。
    ちょうど先日、アンソロジーで『梁塵秘抄』に触れたばかりだったことだし。

    源平争乱のあの時代、白河、後鳥羽、崇徳、後白河あたりの天皇家の確執に、摂関家、武家の覇権争いが重なる。
    その構図の複雑さに、どうしてもこの時代を扱ったものを避けて通りたくなる。
    だから、四つの章の語り手が、平信範、建礼門院中納言(健御前)、吉田経房、九条兼実と移り変わっていくこの小説はの結構は、表現効果の見事さはわかっても、少しつらい。

    近づいて来る者たちに心を許さ

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    2020年11月15日