井上靖のレビュー一覧

  • おろしや国酔夢譚
    日本海で漂流し、ロシア領へ流れ着いた光太夫ら仲間たち。
    ロシア語を学び、女帝エカテリーナへの謁見。江戸へ帰れる日は来るのか。
  • わが母の記
    時代背景など、難しい点もいくつもあったが、心がジーンとする小説だった。
    家族をこんな風に見つめ続けられたら、見つめられ続けたら、なんというか幸せだと思う。
    映画は見なかったけど、小説だけで十分楽しめた。
  • わが母の記
    老いにひとつの形容詞しかつけられないような人にはなりたくないと思った。家族がいまよりも家族だったころ、良い意味でも悪い意味でも縛り縛られてたころの、ひとりの尊敬する文豪の、実話。
  • わが母の記
    母の頭を毀れたレコード盤が回っているだけの場所のように考えていたが、そのほかに何か小さな扇風機のようなものでも回っていて、それが母にこの人生から不必要な夾雑物を次々に払い落させているかもしれないのである。(82p)

    映画を見て興味を覚えたので、20年ぶりぐらいに井上靖を読んだ。小説のようなエッセイ...続きを読む
  • 額田女王
    「野守は見ずや 君が袖振る」の相聞歌から、額田という女性は、もっとビッチなイメージがあったけど(失礼w)、井上靖が、歴史に翻弄されながら、その中で、当時珍しいであろう「自己」を持ち続けている女性として描いているところが面白い。大海人皇子の子を宿しても「神の子を宿しました」と言って大海人へなびかぬ姿、...続きを読む
  • 星と祭 上
    滋賀県に旅行するにあたり、何か滋賀県が題材になっている本を読んでおきたくて、それで知った本。

    琵琶湖からヒマラヤまで飛んで、途中では全く別の本かと思ってしまった。

    色んな書評で言われているけど、確かに心理描写が卓越。

    それにしても井上靖さんの本で、言葉がすっきりしている。余計な言葉ない。

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  • 夏草冬濤(上)
    読んでいると「礼も言わない」「挨拶もしない」といった
    ことが原因の批判非難中傷がずいぶんたくさん出てくる。

    人のうわさ話ばかりで物語が進んでいっているようで
    本作は「しろばんば」ほど愛着を感じはしないのだが
    それでもサクサク読み進められるのは
    なんだかんだいいながら日本人の原点的な感覚に
    馴れた心...続きを読む
  • 風林火山(新潮文庫)
    架空の人物とも言われる武田家の軍師、山本勘助が主人公の話。比較的短い物語ですが、武田晴信の側室・由布姫の悲哀も絡めつつ、戦国の空気感を十分に伝えてくれています。
  • 額田女王
    額田女王は、万葉集の歌人であり巫女でもあり、そして中大兄皇子と大海人皇子に愛された女性です。
    有名な「茜さす~」がどんな背景でうたわれたのかが知りたいな、という気持ちで読み始めたのですが、額田を中心に置きながら、この頃の頻繁な遷都の意味や、戦までの流れが分かるように書かれており、期待以上に収穫の多...続きを読む
  • 後白河院
    後白河院を、後白河院を知る4人の人物が語るという手法で書かれた小説。私のスタンスで、歴史(時代)小説からは入らない、というのがあるので、これも何冊か事前に本読んでから手にとったのですが、さすがは井上靖…という言葉しか出てこない良作だと思ってます。個人的にこの本の崇徳さまの描写がたまらない(笑)
  • わが母の記 花の下・月の光・雪の面
    少しずつ衰えていく93歳の母の世話をしています。今までは 同じ事を聞く母にいらだっていましたが、この本を読んで 優しく接することができるようになった自分を感じています。老いて死んでいくって こういう過程を経るのが 幸せかも・・・と思うようになりました。
  • 後白河院
    後白河上皇の一生を4人の側近が語る。
    後白河院は、保元の乱、平治の乱など藤原家摂関政治から平家、源氏の武士の時代へのパワーシフトの転換期にあって政治の中心であり続けた人物。

    その他登場人物として気になる存在は信西入道。当時の摂関政治という旧弊に立ち向かった、という意味では彼もまた時代を動かした中心...続きを読む
  • 額田女王
    古代に関する歴史小説が珍しく購入。教科書では知る事のできない、当時の国際情勢の中で苦悩する男達と才女額田女王との愛。情景が目に浮かぶよう。面白かった。
  • 蒼き狼
    仕事でモンゴル人と話す機会があり、そして同席した先輩がモンゴルに詳しい人で、色々話している中で教えて頂いて、急にモンゴルが気になり読んだ本。
    ジンギスカンの一生がまとまっていて、初心者には分かりやすい本では?少し戦闘シーンが長い所などは飽きる所もあったが、全編を通して、ジンギスカンの心模様の移り変わ...続きを読む
  • おろしや国酔夢譚
    果てしない異国の地にいても故郷への思いはこんなにも強いのか‥人間にとって生まれ故郷は、こころの支えや拠り所となる場所なんだなと強く感じました。 その他にも、光太夫のリーダー性、船員それぞれがみせる適応力など学ぶべき人間の姿があります。
    また、作中では日本が江戸時代で鎖国中の頃、ロシアではどんな様子...続きを読む
  • わが母の記 花の下・月の光・雪の面
    2012年、初読みですw 今春、映画が公開されるので、原作をと思って読んでみました。本題の三部作は澄明な私小説ですが、ほかに収録されていた短編「墓地とえび芋」が、なかなかよかったです。今までに読んだことあったかな・・・?「氷壁」は読んだかも。今年は、現代小説でないものも、読めるといいなぁ。
  • 蒼き狼
    ユーラシアを横断するバックパックの旅で、別のパッカーからもらった一冊。ユーラシアを横断するすべての旅人に読んでほしい。「必ず旅人に引き継いでください」と別のパッカーにあげたけど、20年以上たった今でも世界のどこかで旅人の手にあったらうれしい。
  • 猟銃・闘牛
    井上靖の初期3作品「猟銃」「闘牛」「比良のシャクナゲ」を収載。自分的には少し距離感のある作品群のように感じられたが、それぞれ、ストーリー構成が良いのと、3作品とも違った趣の文体であるので、それぞれの形で楽しめたと思う。
    「猟銃」は妻と愛人と愛人の娘から送られた手紙を読むことで、全体の想いが詳らかにな...続きを読む
  • おろしや国酔夢譚
    次々と仲間が倒れる悲惨な話。実話の強力さによっているのだろう。それにしてもロシア人っていい奴ばかりだ。
  • 北の海(下)
    四高柔道部の仲間と過ごす金沢での時間が、とてもいいな、と思いました。

    酒も、煙草も、女も、勉強も(!)なく、ひたすら柔道をして過ごす、四高柔道部のメンバー。
    練習量がすべてを決定する柔道。
    練習と、研究。
    人生のある時期を、そんな風に何かに打ち込んで過ごすというのは、とてもぜいたくで、幸せな生き方...続きを読む